○シャープ 片山社長

・太陽光は、42兆kcal/秒のエネルギーを地球に入力し、1時間分で、年間の世界エネルギー消費と同等。

・シャープは63年から太陽電池の量産を開始している。灯台2500器に供給。薄膜は80年代から。液晶技術にもつながっている。累計4.3GW。薄膜、結晶、化合物の三本柱。化合物では東大と共同研究しており、効率40%超のものも出てくる。色素増感、量子ドット、有機などもある。量子ドットでは、変換効率が100%を超えるかもしれない(ママ)。

・先週、シチリアでエネル、STマイクロとの合弁で太陽電池工場を作った。

・薄膜では、ファーストソーラーがカドミ系、昭シェルのCIGS、シャープのシリコン系が競合している。薄膜には様々な特長がある。第一に、材料が1/100と少なくて済む。ガスなので作りやすい。結晶系はつくるのが大変。第二に、投入エネルギーが少ない。第三に、温度上昇時の効率が高い。あまり言われていないが、熱帯地域での利用に向いている。初期効率は結晶が高いが、温度が上昇すると低下してしまう。規格化、標準化が杜撰になっている。大学にも奮闘してもらいたい。第四に、接続部分が少なく、信頼性が高い。結晶系ではハンダ付けが多く、その部分が劣化する。薄膜系では、レーザー加工(溶融)をするので信頼性が高いし、低コストで済む。屋根に載せるのに、日本家屋の屋根の寿命は30~50年だから、それ以上の寿命の太陽電池を作っても意味がない。しかし、太陽電池発電所の場合は、30~50年もつというのも大事な点になる。

・普段は言わないことだが、寿命とライフサイクルコストは重要。今は25年出力保証で(資金回収の)コスト計算をしているが、半導体のPN接合は、100年でも1000年でも劣化しない。それとは違う部分の劣化が問題である。25~50年でハンダがダメになる。シャープが供給してきた灯台用太陽電池では、長持ちのハンダを使い、メンテナンスも気を使うので50年はもつが、そうでないものは、モジュール交換が必要となる(ライフサイクルでのコスト増)。メンテナンス技術が長寿命化には大切となる。累積の発電電力量とコストは、当初は結晶系が上回っても、100年を超えると薄膜系の方が上回るようになる。(電力会社の供給価格と等価になる)「グリッドパリティ」は一部の地域では既に達成している。その意味で、これからはグリッドとの接続技術が重要となる。

・タイで、1km×2km、東京ドーム70個分の大規模太陽光発電所を建設している。自然エネルギーを増やすとしても、ダムではリードタイムが10年超。風力でも数か月かかり、場所も限定される。太陽光発電はどこでも直ちに設置できる。

・太陽電池工場のシミュレーションをご紹介したい。1GWで1000億円。20年で20GW生産できる。この太陽電池が25年・1000h/年で稼働すると、500TWhだが、これは770百万バレルに相当する。サウジの埋蔵量が2620億バレルなので、340工場に相当する。パネル寿命が100年なら、100工場と同等。

・太陽電池では、エネルギーの地産地消ができる。エネルギーの輸出国になることもできる。

○日揮 川名社長

・アラブとの付合いは深い。1兆円を中東に投資している。海外ではJGCで通っている。ガソリン製造が原点。プラントでは、10万点の部品で、設計・調達・施工する。当社では、世界のLNGプラントの3~4割のシェア。サウジのガス処理設備で3割のシェア。カタールでも3000億円の受注をしている。スカイツリーの6.5倍の鉄を使う。また、サウジのプロジェクトでは26か国から1万人を動員している。国籍別では、フィリピン29%、パキスタン24%?、インド、23%、バングラ13%など。

・太陽集光熱(CSP)プラントをスペインのコルドバ附近(El Carpio)に建設している。100MW(50×2)。2010年資金集めをクローズし、2012年運転開始予定。アベンゴアと日揮の合弁(日揮25%)。NEXI(日本貿易保険)の地球環境保険を使わせていただいた。スペインでは、FIT(固定価格買取制)があるので、採算がとれる。50MWで1km四方。トラフ型反射鏡+ガラスチューブの方式。

・太陽電池では、現在、リャドから1時間のところで実験中。多結晶、薄膜、ハイブリッド、CIGSなど12種類をテスト。砂嵐対策やメンテなどを検証している。サウジ水電力省とサウジ電力公社とも協力している。サウジでは45℃になる。表面は80℃。挙動変化も見ている。シリコン系は大きい。砂漠地帯では、細かな砂が付くので、メンテの際に、貴重な水を使うか、モップにするか、エアブローか、コートで対応か、砂の汚れによる発電量減少を放置するのか、清掃コストをかけるのかといった点を検証する。

○茂木教授

・世界のエネルギー消費は、118億toe。シェールガス革命があり、天然ガスが上方修正されそう。油田は、5~65%回収できるが、平均30%程度。サウジの人口増を支えるためにも、集光太陽電池45%を使って、エネルギー自給を目指し、他地域にも展開していきたい。

○城山教授

・海外で実証展開する新たな産業政策モデルがあってもよい。サウジとの協力は興味深い。

○阿部教授

・既存グリッドは供給側で調整。スマートグリッドは、需要側で調整を目指すが、リアルタイム料金でも機器制御でもスピード感が遅い。そこで、巨大同期系統に風力・太陽光を入れたときに起こる擾乱に対応するため、細かな「セル」に分割して、インターネットルータのように、アクティブ制御をかける「デジタルグリッド」を提案したい。いわば、電力のインターネット。電気にIPを付けて送るので、いわば色を付けることになる。

○杉山准教授

・入射エネルギーに対して、放射は温度の4乗に比例し、バランスが取れる。再生可能エネルギーは熱バランスを壊さない。赤色光は波長600nmで2eV。水の電気分解は1.25Vなので、熱にせずに直接利用する方がよい。

・貯蔵のためには、亜鉛、マンガンの酸化還元を使うのが有力。亜鉛電池の開発を進める。電極だけ差し替えて使うイメージ。それから合成燃料では、半導体を利用して、水素又は炭化水素を合成する。

○中野教授(先端研所長)

・シャープ、日揮、電発、政投銀のサポートで寄附講座を開設。先端研を含む大学内の新エネ研究を統合している。

・現在、シャープとの共同研究をしており、2009年には、多接合で35.8%、集光で42.1%を達成している。スーパー接合や量子ドットを究めていきたい。サウジとは、MOUを結んで協力していきたい。