開催中の東京国際映画祭(TIFF)に空き時間を利用して行ってきた。
観たい映画はたくさんあったけれども、前売り券でおおかた売り切れ。わずかに残っていた当日券を狙って行ったら、運良くこの映画のチケットは残っていたよ。
韓国映画『アトリエの春』です。
原題は、Late Spring [ 봄 ]。
映画上映後には、監督と主演女優二人のティーチインがあったのですが、チョ・グニョン監督によると、小津安二郎ファンだそうで、原タイトルのレイト・スプリング=晩春は、小津映画の同名作から採られているとか。
ストーリー(あらすじ)はTIFFサイトから引用(色字部分)させていただき、写真は韓国映画データベースのHANCINEMAから転載させていただきますね。
1969年、ベトナム戦争が韓国にも暗い影を落としていた時代。
全身の麻痺が進む難病を抱えた天才的な彫刻家ジュングは、妻ジョンスクの勧めで湖のある美しい村で療養している。
創作を断念し、生きる希望も失った夫を見かねたジョンスクは、モデルを探して夫の創作意欲を回復させようと思い、村で見かけた若いミンギョンを連れてくる。
湖畔のアトリエでミンギョンをモデルに創作を再開したジョンスクは徐々に快復し、ミンギョンもまた生活の辛さから解放されて明るくなり、ふたりは親密になっていくが…。
美術家とモデルの関係を描いた映画は多いが、本作は激動の60年代を舞台に、障害を持つ彫刻家と妻、そしてモデルの女性、それぞれのキャラクターが克明に描かれ、強い印象を残す。
チョ・グニョン監督は映画美術ディレクターとしてキャリアを積んだのち、“26 Years”(13)で監督デビューした人物。
ミラノ国際映画祭で大賞・撮影賞、それにミンギョン役のイ・ユヨンが主演女優賞を受賞した。
(以上、引用終わり)
私、この紹介文を読んだだけでは、最近のフランス映画「ルノワール」みたいに、モデル女性に恋をしちゃう話かと先入観で思っていました。それで三角関係になるといったような映画は昔のフランス映画「美しき諍い女」みたいにたくさんあって、そっち方面の韓国映画版かと。
でも、ぜんぜん違った。
もちろん良い意味で。
チョ・グニョン監督が憧れる小津映画のように、物語はたんたんとした映像で語られるのですが、けっして退屈ではない。
それは、もしかするとモデル女性と何かあるかもという変な期待や、あえて美しい女性をモデルにあてがった(しかも、心根も綺麗で、可哀想な境遇の女性)妻の意図が読めないことなどがあるからでもあり、芸術映画でそして、障害が題材でありながらサスペンスフルな仕掛けがある(ように感じさせる)つくりになっているからなのだと思われます。
上映時間102分はまったく長くなかったし、なにより「40年以上前の韓国の美しい村」を舞台にするということで、とても美しいロケ地が選ばれています。
ここ、何という場所だろう。
そして、主演女優の二人も良かった。
美術監督出身というチョ監督にキャスティングされただけあって、お二人ともナチュラルな美人。
モデルのミンギョン役を務めたイ・ユヨンはこの映画が初出演とのこと。
だから知らなくても無理はないのですが、不勉強にして、妻ジョンスク役を演じたベテランのキム・ソヒョンも私は所見。
ティーチインのときに監督から、「テレビドラマでは怒った激しい役ばかり演じているキム・ソヒョンに、寡黙なおとなしい役をやらせてみたかった」と言われ、大いにウケまくっていたキム・ソヒョンさん。
たしかに、普段はおとなしいとはとても言えない雰囲気ながら、映画の中では、とても古風な三歩下がった韓国女性になりきっていましたよ。
普段はテレビドラマがメインの女優さんなんですね。
興味を持ったので、調べてみたら、キム・ソヒョンさんは、日本では「妻の誘惑」というドラマ(BS朝日で放送)で紹介されています。
同名の子役出身の女の子がたくさん検索でひっかかりますが、このドラマもそうであるように、1973年生まれの大人の妖艶な魅力の女優さんのようです。
右がキム・ソヒョン。
左が主人公のチャン・ソヒ。
ま、この写真からして主人公をいじめ抜く激しい気性の女役だとわかるね。
おっと、脱線しました。いつものことですが。。。
とにかく、予想以上によい映画だったですよ~。
ツイッターを見ていたら、ラストシーンには賛否両論というか批判的意見が多く見られまして、私もそれは同感なんですが、監督いわく「暴力的な映画が多い」韓国映画にあって、独特の個性のある作品であると思います。
ただ、設定上、本作にもわずかながら暴力シーンはありますので、そこだけはご注意を!