広島駅ビルの立替えが報道発表されたのは2019年3月のことだったと思います。

一緒に公開された建替え後のイメージ図を見た際には、洗練されたデザインと路面電車が2階に乗り入れるという立体的な作りに大変驚かされました。

ネットの反響も大きく、総じて「大歓迎」であったように記憶しています。

ただ、そのとき私は心から喜べない複雑な気持ちになったのを覚えています。

広島で育ち、大学入学以降、福岡、大阪、東京に住んできた私の眼には、2000年代の広島駅の姿は、地方中枢都市の代表駅としては物足りないものに映っていました。

つまり、北口や南口の再開発に引き続き、駅ビルも近代的なものになることは、喜ぶべきことではあるはずなのです。

 

それでも心に引っかかっていたのは何かというと、広島駅に地下鉄が乗り入れる可能性がほとんど無くなった、ということなのです。

路面電車が地上1階に乗り入れている場合は、いざ地下鉄を通すということになっても、路面電車に関連する施設を撤去するということになっても、長年使い続けたものでもあるので、もったいない、といった考えにはならないと思います。

それを良いことに、これまで広島を離れた場所にいながら、故郷である広島の地下鉄計画を勝手に夢想してきたわけです。

しかし、新駅ビルのイメージは、路面電車が2階に乗り入れる、ということが不可欠のコンセプトとなっており、「地下鉄作るから撤去で」といえる状況には当分ならないことが明らかです。

今の広島では、そもそも広島に地下鉄を建設することについては、もはや現実的ではない、という意見が大勢を占めつつあることは承知しています。

ただ、もう地下鉄ができる可能性はないかもしれない、という喪失感が、これまで私が積み重ねてきた知識を書き残しておきたいという衝動に駆り立てることになったのです。

 

このブログでは、様々な事象について是か非かといった評価を行うつもりはありません。ほぼ私の感想を述べることになると思いますが、温かい目で見守っていただけるとありがたいと考えています。