Q.アンプの音は何で決まるのでしょうか | Analog of Magic もみじとクラフトマンのblog

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Q.アンプの音は何で決まるのでしょうか


私は以下のように思っています。

 

A.設計者の電子回路の理解度(≒特性)と感性

 


今のオーディオアンプ界隈の一部では、○○回路採用で××な音!のような

宣伝をよく目にします。しかし、音や特性は回路の形で決まるわけではありません。

 

たとえば、電流帰還アンプは広帯域にしやすいですが、
誰でも広帯域なアンプがディスクリートで設計できるわけではありません。
適当な設計をすれば当然リンギングは出ますし、ある程度知識のある人が
ディスクリートで設計する場合でも数MHzあたりで切るのが無難でしょう。
このあたりであれば電圧帰還型でも十分設計できてしまいます。


また、このような宣伝では長所ばかり並んでいることが多いですが、
PSRRは?BJT入力型のバイアス電流の多さはどうした?PCBの設計は?
などといった疑問が尽きません。

 

 

同じように二段差動なら音の分離が良くなるわけでもないし、
オペアンプをひとつでも使っていたら音が悪いわけでもありません。
アンバランスとバランスは同じように設計できません。
ディスクリートのトランジスタバッファがついていれば

必ずクリアな音でパワーがあるわけではありません。
こういうのを挙げだしたらキリがありません。


もし何か主張するのであれば、実測値を出して、
実際の特性を確認しないといけないと考えています。
音の分離が良いのだって、リンギングが出ていて音がうるさいだけかもしれませんし。

 

 

測定は、必ずしも高価なオーディオアナライザが必要なわけではありません。

(これを持っていないことを、測定結果を公表しない言い訳にするアンプありますけど…。)
あるほうが良いですが、なくても確認できることは多々あります。
また、高価な測定器があってもそれを活かせる・その結果から十分に

考察できる知識がなければ役には立ちません。
何が・どうなるから・どういう値や波形を見たいのか。まずはそこからだと思っています。


簡単にまとめると、良い増幅器は

 

1.回路(物理現象)を理解する

2.設計して理論値を出す

3.試作して測定し理論値と比較する

4.おかしなところを解決していく

5.測定値に表れない部分を考察

6.1に戻る

 

を繰り返してつくっていくものだと思います。

数字やグラフ、波形で見えるのは一部なので、

見えない・見えにくい部分は理詰めし、音で確認していくしかないでしょう。

機械は良いところをほめても伸びません。悪いところを解決していくしかありません。

 

 

こういったステップを飛ばせば、当然安価には製作できるでしょう。
しかし、そうすると特性は出ませんし、音が良いものもできません。
見よう見まねで作れば、ある程度のところまでは簡単にいく場合もありますけども。

本来、技術は無償で得られるものではありません。他人ができないことには価値があります。

 

 

今はメーカー製の完成品でも入念な設計をしていないがある時代です。
そんな中で、AoMはある程度きっちり設計しつつ、少しだけコストを

抑えた形にしたものをつくりたいと思っています。
突き詰めたものは個人的にやっていたのですが、どうしても高くなってしまうので…;。

 

設計には好みがあるので、結果的に少し珍しい形になることはあるかもしれません。
しかし、理論上も実測でも特性が出ていて、音が良ければ、

そこまでのアプローチは得意な形や好きな形で良いと考えています。

 

 

vier flugelは、キット向けに少し簡略化した部分があります。
それでも基本的な部分はおさえているので、

入念な設計も測定も考察もしていないものよりはるかに良いはずです。
たとえ同じ部品で設計したとしても、同じもの・さらに良いものは簡単にはできないと思います。