umbrella 将のブログ -7ページ目
自分のドラム理論について話そうと思う。
ガキの頃通ってたドラム教室の先生に言われた話がある。
「バンドを家で例えるとどこかそれぞれの楽器だと思う?」と。
要素としては屋根、壁、床、中の人。
ドラムはどこだと思います??

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僕は「床でしょ!」と言ったが師の答えは違った。「ドラムは屋根である」と。
中の人は当然ボーカル、壁はギター、床はベース、ドラムが屋根ということだった。軽い説明もしてくれたけど、当時ガキだった自分には「ドラム屋根」ということが難しくてよくわからなかった。今となってはその意味がよくわかる。

結局どういう事かと言うと「ドラムの音がその音楽全体として聞き手に与える印象を決める」という事だと解釈している。なぜかと言うと、ドラムはバンドで使う楽器の中で音の帯域として一番扱える幅が広いからだ。ローはバスドラ、ミッドはスネア、ハイはシンバルと。
更にドラムの利点は「元々はそれぞれ独立した楽器」というところだ。つまり個別にダイナミクスの調節が行える。
つまり、広い帯域を幅広いダイナミクスで表現できる。これがドラムにあって他に無い要素でしょう。

しかし、ならば何故リズム楽器なのかと考えると、まずはじめに「最大でも同時に4つの音しか鳴らせない、またシームレスな音の移動ができない」というところにある。4つの音というのは手2本と足2本ですね。
そして打楽器としての特性上、叩いた瞬間には大量の音程、ダイナミクス共に様々な周波数帯が発せられ厳密に音程を決めることができない、という所だ。

ベースが同時に鳴らせる音も4つ(4弦の場合)ですが、ベースは打楽器のように大量の周波数帯が発せられるわけでもなく、厳密に音程を出すことができる。また音の移動も指先でコントロールするのでエネルギーが小さく済んでスムーズだ。

ベースのリズム楽器としての側面は、音のルールの一つである「ハイはローに押し出される」というところにあると考えている。更に低音に特化したことでバスドラよりも低い音を出すことができる。この事からギター、ボーカル、ドラムが出すミッド、ハイを支え、押し出す役目を僕は「床」として捉えている。

しかし、ベースがリズム楽器としてドラムに敵わない原因は先も言った「扱える帯域の広さ」と「アタックの強さ」だと考えている。(近代の機材の進化やスラップ奏法の発展により一概には言えないが)
そもそもプレイヤーが楽器に与えるエネルギー量が違う。ドラムは腕の重さ、スティックの遠心力、振り上げた位置からの位置エネルギー等の慣性力を踏まえると、フォルテ以上の音量としてスティックのチップにかかるエネルギーは低く見ても15kg以上と想像できる。(単位がバラバラなので計算できないけど、イメージとして)

ベーシストが楽器自体に与えるエネルギーとしては比較にならないでしょう。ただ、ベースにはプレイヤーが触れる範囲に「電気」という馬鹿みたいなエネルギーを出せる便利なアイテムがある。この辺が「機材の進歩による〜」という所以ですね。(言ってしまえばドラムもマイク通してPAに入ってるから一緒とも言えるけど、ドラムは基本的にプレイヤーが直接電気を触れないのです)

しかし、ベースも同時に出せる音は最大で4つ、アタック音に特化すればベースにあってドラムに無い「音程感」というものを多少なりとも犠牲にする結果になるのは想像できる。
ここまで考えて、役割分担がはっきりする。
僕が出した答えは「リズムの実音感と広帯域においてのダイナミクス表現はドラム、音程としてギターとボーカルを支えるのはベース」であると。

ギターは先まで挙げたドラム、ベースよりも圧倒的に優れている部分がある。それは「同時に出せる音は最大6個(6弦の場合)」ということだ。
たかが2個多いだけ。でもこの2個の差が圧倒的なのだ。人間で言うと腕が2本増えるようなものである。
このことからドラム、ベースに比べてより緻密な表現が可能になる。
更に、ベースに比べて弦が細い。これはつまり弦の持つ剛性がベースよりも低く、サステイン(音の伸び)が良いのと、ベースよりもプレイヤーとして必要なエネルギーは小さくなり、よりスピードに特化できる。
これがギターの特権である。この小回りとサステインを生かし、バンドサウンドに厚みと彩りを与える役目から「壁」だと考えている。
ただ、やはり根本のエネルギーは小さくなるのでドラムのような明確なアタック音、ベースのような全てを支えるローは期待しにくい。
だから、ギターにはドラムとベースが必要だと僕は考えている。

そして壁である以上、分厚くし過ぎては人が居るスペースが狭くなる。その狭くなった先にいるのが冒頭の絵でいうと「中の人」つまりボーカルである。
今まで僕の考えを理屈っぽく説明してきたけど、ボーカルだけは理屈で説明できない。
何故なら単純明解。ボーカルにとって楽器とは体そのものであり「人」そのものであるからです。
だから測れない。無限の可能性がある。バンドという枠組みの中で何とも比べられない唯一無二の存在である。
そして音楽でありながら「言葉」を使うことができる。これは嗜好品である音楽の中で人が共通して生きるために必要なものです。だから、一番わかりやすくて注目されやすく「バンドの顔」となる。

長々書いたけど、バンドというものの役割分担がはっきりしたところで話を戻します。
役割分担を踏まえてドラムというものを改めて考えた時、どう在るべきかというのはシンプルに「骨組み」なんです。
楽曲の骨組みを作ること。床や壁はベース、ギターが作ってくれるから、ちゃんと乗っかれる頑丈な骨組みを作ること。
つまり、冒頭に登場した師は「屋根」と言いましたが僕の今の解釈としては

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この絵の赤で書いた部分なんですよね。
屋根の部分はドラムの独壇場とも言える帯域の広さ、ダイナミクスが表現できると思っています。

ドラムと言えばグルーヴ。グルーヴの話となるとリズムの話になりがちですが、グルーヴにとってこの「屋根」もかなり重要な要素だと考えています。だから僕はドラムの鳴らし方に拘り、鳴らし方に拘るためにモーラー奏法に拘り、超緻密な身体感覚が必要になるモーラー奏法を極めようとしているのです。
モーラーで鳴らした音というのは太鼓でもシンバルでも鳴る帯域が広く、ローがしっかり付いてくるからうるさくならない。
そしてPAも踏まえて考えると、出ていない帯域をPAで出すのは不可能ですが出ていれば削ることができる。つまりその音楽にとって理想なサウンドに作り込みやすくなると考えています。

あとは、ライブという現場において「周りのメンバーへの気遣い」ですね。春さん、柊くん、唯さんがどんな心理状態で演奏しているかはほぼ常にチェックしています。これを意識してから、バンド単位でグルーヴを出しやすくなった。

とまぁプレイヤー個人個人に焦点を当てていけばまだまだ語れる要素はあるのですが、これくらいがざっくりと最近の自分のドラムに対して考えていることです。

まだまだ追求する余地は大量にある。
考えて考えて、死ぬまでドラムを、バンドを、音楽を楽しみますよ。