あれは昭和の時代
新幹線はひかり号

真夏の京都に
降り立った女三人。
その時は
まだくちばしの黄色い小娘だった。
昨日まで開放的な
伊勢、賢島の海風を
堪能していた。

京都駅を一歩出れば、
目眩のしそうな大都会。



高校時代の修学旅行を
思い出しながら東山に向かった。
鹿威しの庭を眺めた。

寺を出て
さてどうしようと
腰かけて地図を広げた。

その時
「あーあ そんなところに
座ってしまって、」
と声がした。







飛び跳ねるように
立ち上がりながら見ると、
ネクタイ姿の
タクシードライバーだった。
第一印象は
幼い時に見た
ウルトラセブンのお兄さんにそっくり。




京都の観光するんでしょう。
案内するよと言われた。
京都のことよく知らないでしょ。
この暑さで歩くのは大変だよ。
車で
とびきりいいところに連れてくよ。

これってナンパ?


いったいいつから
私たちのこと見ていたのかしら?

でもほんと
もう暑さに辟易していた。

こうして二日間の
不思議な京都観光が始まった。




ウルトラセブンは
元野球選手だったそう。

ユニホーム姿の写真を見せてくれた。
そして引退後タクシードライバーとなった。
京都の歴史を守る会という会の会員だった。行く先々のお寺のことを、
お寺の職員よりも詳しく知っている。

とても面白く話す彼が
説明を始めると私たちの周りには、
人が集まってくる。

庭の眺め方。
石の意味。
柱の不思議な金具。
掛け軸の意味。
建築の素晴らしさ。
仏像。
円山応挙の幽霊図。

美味しい漬物屋さん。






郊外の涼しい寺では
お抹茶をいただいた。






夜は
大文字焼きの山へ。
けもの道をかき分けて登った。
視界が開ける。
ここで火を燃やすんだよ。
眼下には京の街の夜景がダイナミックに
広がっていた。








明日は非番だからね、

タクシー代はいらないよ。

京都駅に送るよ。


絶対見ておいたほうがいい仏像があるんだ。




およそ一千年前のこと

暗闇の夜明け前
永観上人はひたすら祈っていた。
戦火と疫病、飢餓の繰り返しの京の都。
人はどこへ行くのか。
天下泰平の平安はいつ訪れるのか。

闇の向こうに気配がした。

阿弥陀如来の幻だった。
後ろ姿がはっきり見えた。
夢を見ているのか。
目を凝らすと阿弥陀如来が振り返り

永観おそし
と声をかけた。

永観はその姿を忘れないように
仏像に写した。





その小さな仏像は
すすけた祠の中で
確かに振り返り私たちを見つめていた。










若い君たちには

これからの人生
この言葉を
忘れずに思い出してほしいんだ。












真夏の京都
数えるほどしか訪れていないけど
思い出がたくさんある。








もしもし

京都にいるの。
行きたいところがあるの。
見返り阿弥陀のあるところ。
そこで会えるかしら?


永観堂だね。
オッケー先に行ってるよ。
バスでおいで。




永観堂といったんだね。



こんなに広かったかしら?


覚えているのはほんのわずかだった



時は流れて臥龍階段は立ち入り禁止となり
黒い祠は修復されて金色に輝いていた。




忘れられなかった姿。


やっと会えた。


遅しと振り返りながら導いてくれた時から
気が遠くなる月日が経ってしまった。


阿弥陀様
あれからの私の人生は
どうだったかしら?





いつか
二人で見たかったの





足元を振り返り
人生を振り返り
この先の残りの人生

まっすぐに進んでいきたいから。



阿弥陀様

ありがとう。

また
会えてよかった。















最後まで
お読みくださりありがとうございます😊




注  この物語はフィクションですニコニコ


七不思議のあるこのお寺


金色の生きた亀もいますよ🐢


おススメですラブラブ


今日も元気に


頑張りましょうラブ