<フィクション56>
「ある巫女の物語」のスピンオフ
イーサンの元に弟子入りしていたアサッシーナがおかしい。
霊能者の世界を知らないクロエですら何かおかしい。と感じていた。
少女のように純粋なアサッシーナは、元々そういう傾向があったのかもしれないけれど、安心して自分の心をそのまま素直に表現できる仲間内ではさらにその傾向がストレートに現れるのでクロエもおかしいと感じたのかもしれない。
実際に見えているものと、霊視することで見えてくるものと、妄想により見えてくるものの区別がつかなくなってしまっているようなのだ。
夢見る少女がそのまま霊能者になってしまったような状態。
見えている事実とそうあって欲しいと言う願いとが区別がつかなくなっているのかもしれない。
また尼僧として生きてきているのだから、通常の日常生活において支障をきたすようなおかしな態度に出るわけがないのに、そういう側面もあった。
たかだか普通に時間を決め、約束事をすることに対してもどうも自己本位で、他者との約束事を忘れてしまう傾向がある。
安心しきった結果として気の緩みからそのようになっていたに過ぎなかったのかもしれないけれど、ビジネスの世界でしかものを見てこなかったクロエは、やはり何か歪みを感じていた。
また鍼灸師として開業もし、通常の業務をこなしているカイトからすれば、さらにおかしいと感じていたのだろうけれど、それは口に出さず、彼女を見守りながら何とか調整していこうと努力しているように見えた。
しばらく様子を見ていたイーサンは、強い霊障によるものだと判断し、弟子として引き受けた以上、それを取り除いてやらなければならない。と言う立場から
ひとりで勝手に気を送ることを禁止し、まして施術は絶対に行わない。
修行の過程で指導しながら直していくので自分で勝手な判断をしないように。
と命じた。
そんな状況の中、イーサンはプライエストと共に彼女の夫の施術に加わったり、忙しい日々を送っていたが、何かに邪魔される邪気のようなものを感じていた。
もしかして繊細なアサッシーナの症状が悪化したのも、その何かと連動していたのかもしれない。
プライエストの夫の症状も心配なので、イーサンはプライエストからの連絡は優先して受けるようにしていた。
まさに、その連絡で大変な情報が伝えられた。
先に紹介されていたプライエストの弟子の1人、以前からイーサンに会いたがっていたタロット使いのハルンが、イーサンに呪詛がかけられていると伝えてきたと言う連絡が入ったのだ。
プライエストから、最近何か大きな恨みを買っていることはないかと尋ねられ、イーサンは信頼できる彼女にイッチから提訴されていることを伝えた。
イッチの本名と居住地を聞いたプライエストは、そちらの筋からの邪気に間違いないと判断したようだ。
イッチ本人でなくても、そういう力を持った人間に依頼したのだろう。
プライエストとイーサンが協力して祓い退けた呪詛
人を呪わば穴2つが、穴4つになってしまうんですね。
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