「出たか? 副作用?」  「いいえ。出てません」

翌日も、「どうだ、まだ出ないか?」

「全然、出ません。」というのを繰り返し、

治療を始めてからはや1週間。

 

もう出ないねと思っていた頃。

すこーし、吐き気のような?気のせいかな?

 

その翌日から、なんとなく、体がふわふわしてきたので

とりあえず、歩き回るのをやめてベッドに戻る。

 

と、ベッドに座った途端、

 

急に目の前の世界が大きく崩れ始めた。

 

なに、これ? うわーーーー、 うっそ〜ーー!

 

まるで、宇宙船から投げ出されみたい。落ちていくーー!!

 

「うーーっ」苦しさと恐怖で、思わず、声がでる。

私の急変ぶりに、同室の患者さんがナースコール。

やってきたのが、8月担当になった新しい研修医。

 

「あ、どうしました? 具合悪いです??」

とのんびり声をかけて、ただ立っている。

私はショック状態で口がきけない。

 

それをぼーっと何もせずにしばらく立って見ていて、

何もせず行ってしまう。

 

それを見ていた同室の仲間が呆れてしまったらしい。

 

「何?あれ!」「ちょっとあの先生?大丈夫?・・・」

「信じられない。普通、患者が苦しんでいたら、脈くらいとるでしょ。」

「何もしないで突っ立っていて、いなくなっちゃったよね。」

「信じられない」「あれで、医者になれるのかね」

 

そう、カレンダーが7月から8月に変わった途端、

研修医が変わってしまったのだ。

 

 あの優秀な研修医フリージア先生とは全く真逆な、このお方。

この研修医という存在が予想外の嵐を呼び込んでいくことになる。

 

 まさに天国から地獄へ。入院生活最大の危機が近づいてきていた。