いつものように、ベッドを上げて、おサルさん方式で食事をしていると、向かい側から、

  「ちょっと、危ない!、危ないわよー」

という声がした。

 

 私は、私がベッドから乗り出しているので、落ちないか心配して下さっているのだと思って、(大丈夫。落ちないから〜)

聞き流して、そのまま食事を続ける。

 

 ・・・と、次の瞬間、

   「あ!、落ちる!!!! 落ちるーーーーー」

 

 大声と共に、2人の患者さんがベッドから飛び出し、私のベッドめがけて飛び込んできて、ガバっと私の体を抑えた。

 

 私は、何が起こったのか分からなかった。

 

  え??? 何? どうしたの ???????

 

「ちょっと、動かないでもよ!。そのまま動かないで!」

「動いちゃダメ!!!」

 

「そっち大丈夫?」

「うん、大丈夫。ちゃんと持ってる」

 

「じゃあ行くわよ」 「セイノーー。」

 

「よ・い・しょ〜ー!!」

 

「あっ、ハマった?」

「うん、はまった、はまった。ちゃんと入っている」

 

「ああー!!、良かった、

       もうーー、危なかった!!」

  「あー、ほんとに、危なかったー」

 

 ん・?・な・・・????

      なんの事? ポカンとする私。

 

 実は、ベッドを上げ下げしている時に、掛け布団が

ベッドの脚の間に挟まって、

 私の体が乗り出すたびにベッドが傾いていた。

まさに、窓側に倒れる寸前。

 

 それに気がついた患者さんが、とっさに飛び出して、

身体を張って、ベッドと私を支えてくれたのだった。

 

 つまり、「危ない!落ちる・・・」と言ったのは、

人間の方ではなくて、ベッドの方だったのだ。

 

 知らぬが仏の私。

もし、ベッドが崩れ落ちていたら、移植どころではない。

とんでもないことになっていた。

 

 こうして、またしても、患者さんに助けられた。

 

 これが、もし、個室だったら、

  

 もし、同室の患者さんが元気な方達患でなかったら、

 

 もし、カーテンを開けぱなしにしていなかったら

 

 もし、人間関係の絆が出来上がっていなかったら・・・

   どうなっていたのだろう。

 

 あれから、もうすぐ10年。

  今まで出会った全ての人に感謝して祝福を願う。

 どうぞ、出会った皆さまが今も幸せでありますように。