3月3日放送のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に会議通訳者の長井鞠子さんが出演されました。プロフェッショナルに通訳者が出演するのは初めてらしいです。歌番組やバラエティー番組などで、通訳者をちょこっと見ることはあっても、一般の方がその舞台裏を見ることは殆どないのではないでしょうか?
私はお名前やご活躍は存じていて、通訳者にとって雲の上の神様のような存在なので憧れていましたが、そのパフォーマンスを目の当たりにして、もう鳥肌が立ちました
もうガーンとハンマーで頭を殴られたような衝撃
70歳で現役どころか、超トップレベルですよ
日本一の同時通訳者
もう既に話題になっていると思いますが、敢えて私自身にカツを入れるためにブログに書き残しておきます
1.「通訳の仕事とは同じ仕事は一度足りともない。」
正に通訳の仕事は、一期一会ですね。失敗は取り返しがつきません。
同じ内容でも、違う人が話したり、同じ人でも違うことをいったり、相手が違うと話し方も違ったりして、言葉は生物ですから。
だから、こんな大ベテランの人でも、毎日あんなに地道に努力をしてらっしゃる
自分が慣れ親しんだ分野の仕事でも、気を抜くことは許されないのです。
通訳は世界でだれも聞いたことがない言葉を一番最初に聞いて、通訳することもあるのですから、常に未知との闘いです。
2.「同時通訳=”格闘技”」
特に会議通訳の時は、私も「通訳=格闘技」だと感じます。リングに上がったら、終わるまで戦い続けるしかない。倒れても、倒れても、すぐ立ち上がって、最後まで言葉と格闘する
同時通訳の場合、15分交代でペアで通訳をします。それが人間の集中力の限界なんです。それを一日中したりすると、もう本当にへろへろになって、頭が真っ白になります。
3.「どんといらっしゃい!」
逐次通訳の場合、話している人とアイコンタクトを取りながら、その場の空気を読んで、出てきた言葉をすべて受け止めて、一瞬で理解し、咀嚼して正確に聞き手に送り届ける。
言葉をただ置き換えているんじゃないんです。それじゃ気持ちがしっかり伝わらないのです。何がいいたいのか、しっかり受け止めて、それをそのままの温度で確実に届けることが大切。言葉を超えて、人と人をつなぐというのは、そういうことですね。
だから、話し手が手振りを使えば、通訳者も手振りを使うし、声の大きさも自然と変わります。言葉で伝えられないものは、どんな手段を使っても伝えてやる!って思っています。
私の限られた経験からいうと、これがいつもうまくいくとは限りません。日本人でも要点がよくわからない人もいるし、内容的に専門的で難しいこともあるし、早口すぎてついていけなかったり、時間的な制限、通訳者の集中力の限界などなど、様々な理由で100%完璧な通訳はできないことがあります。
何が言いたいかというと、そんな状況の中でも、通訳者の頭の中がどんなにパニックになっていても、それをおくびにも出さないで「どんといらっしゃい!」と構える度胸が必要なのです。
それには話し手との絶対的な信頼関係を築くこと。この人なら安心して任せられるという人だからこそ、指名されるのですね。
4.「準備と努力は、裏切らない。」
手書きの単語帳。専門用語だけではなく、キーワードになりそうな言葉は基本的な単語も書き出して、もっとも適切な訳語を考えておく。
実は私も手書きで単語帳を書いています。アナログなやり方ですが、私には一番効率よく単語を暗記できるんですね。発音しにくい単語などは、声に出して読みながら、何度も何度も裏紙などに殴り書きして覚えます。
通訳者はいろんなジャンルの仕事を引き受けるので、その度にその資料を事前に受け取り、資料を読み込んで、内容をネットでリサーチしたり、専門用語を調べて単語帳にまとめたり、まるで受験生のようなことを毎日のようにやっているんです。
インターネットのおかげで、調べ物は楽になったし、現場でもネットで調べたりすることもありますが、どれだけ準備するかで通訳のパフォーマンスの出来は左右されます。
長井さんのような超ベテラン通訳さんでも、こんなに地道な努力を欠かさないというのを知って、頭がさがる思い出でした。
私は単語帳をちゃんとまとめていないので、もう少し整理していこうと思います。
5.「自分は準備出来たかもしれないのに、80%できたからもういいやっていうのは、私は嫌です。」
ごめんなさい 最近の私は、準備のために睡眠不足になるより、睡眠の方が大切だと思っていました。(もちろん睡眠は大切です!)
6.和歌を学ぶことで「やまとことば」を極めて、わかりやすい日本語に磨きをかける。言葉には際限がない。
基本的な単語でもぴったりの訳語がなかなかない、ということはよくあります。
長井さんは「ふるさと」という言葉の訳語に悩んでおられました。私だったら単純にhome townと訳してしまいそうなところです。our homesと訳されていましたが、必要以上に付け加えることもなく、話し手の気持ちをミニマムに、でも最大限込められている。話し手の汗と涙の結晶が見事に伝わったと思います。
私ももっと読書量を増やすなど、日本語力を向上する努力を欠かせないといけないと肝に命じました。
7.プロフェッショナルとは、一心にその道に邁進する力を持っている人。でもそれに奢ることなく、常に準備して仕事に臨む人。
こんな当たり前のことですが、長井さんが言うと重みが違います。
最後に、私が長井さんを見て「なんてやさしい真心をもった、情熱的な方だろう!」と思いました。
仙台出身で東日本大震災関連の会議に出られている時の顔の表情。
全身全霊ですべてを捧げていらっしゃる。本当に胸が熱くなりました
会議が終わった時のやさしい笑顔。
和歌を読んでいらっしゃる時や、ビオラを演奏されている時のお顔も素敵です。
人として、素晴らしい人生をおくっていらっしゃる女性だなと尊敬しました。
素敵な大先輩から、たくさんのエンパワーメントをいただきました。ちょうど今、私も転機に差し掛かっていると感じるので、時々この番組の録画をみて、しっかり自分のヴィジョンを見つめて行きたいと思います
長文を読んでいただき、ありがとうございます
長井さんの本、「伝える極意」大ヒット中です。
私はお名前やご活躍は存じていて、通訳者にとって雲の上の神様のような存在なので憧れていましたが、そのパフォーマンスを目の当たりにして、もう鳥肌が立ちました
もうガーンとハンマーで頭を殴られたような衝撃
70歳で現役どころか、超トップレベルですよ
日本一の同時通訳者
もう既に話題になっていると思いますが、敢えて私自身にカツを入れるためにブログに書き残しておきます
1.「通訳の仕事とは同じ仕事は一度足りともない。」
正に通訳の仕事は、一期一会ですね。失敗は取り返しがつきません。
同じ内容でも、違う人が話したり、同じ人でも違うことをいったり、相手が違うと話し方も違ったりして、言葉は生物ですから。
だから、こんな大ベテランの人でも、毎日あんなに地道に努力をしてらっしゃる
自分が慣れ親しんだ分野の仕事でも、気を抜くことは許されないのです。
通訳は世界でだれも聞いたことがない言葉を一番最初に聞いて、通訳することもあるのですから、常に未知との闘いです。
2.「同時通訳=”格闘技”」
特に会議通訳の時は、私も「通訳=格闘技」だと感じます。リングに上がったら、終わるまで戦い続けるしかない。倒れても、倒れても、すぐ立ち上がって、最後まで言葉と格闘する
同時通訳の場合、15分交代でペアで通訳をします。それが人間の集中力の限界なんです。それを一日中したりすると、もう本当にへろへろになって、頭が真っ白になります。
冗談ではなく脳を筋肉のように酷使しているので、何も考えられない状態になっちゃうのです。でも上手く終わった時の充実感も大きいですね
3.「どんといらっしゃい!」
逐次通訳の場合、話している人とアイコンタクトを取りながら、その場の空気を読んで、出てきた言葉をすべて受け止めて、一瞬で理解し、咀嚼して正確に聞き手に送り届ける。
言葉をただ置き換えているんじゃないんです。それじゃ気持ちがしっかり伝わらないのです。何がいいたいのか、しっかり受け止めて、それをそのままの温度で確実に届けることが大切。言葉を超えて、人と人をつなぐというのは、そういうことですね。
だから、話し手が手振りを使えば、通訳者も手振りを使うし、声の大きさも自然と変わります。言葉で伝えられないものは、どんな手段を使っても伝えてやる!って思っています。
私の限られた経験からいうと、これがいつもうまくいくとは限りません。日本人でも要点がよくわからない人もいるし、内容的に専門的で難しいこともあるし、早口すぎてついていけなかったり、時間的な制限、通訳者の集中力の限界などなど、様々な理由で100%完璧な通訳はできないことがあります。
何が言いたいかというと、そんな状況の中でも、通訳者の頭の中がどんなにパニックになっていても、それをおくびにも出さないで「どんといらっしゃい!」と構える度胸が必要なのです。
それには話し手との絶対的な信頼関係を築くこと。この人なら安心して任せられるという人だからこそ、指名されるのですね。
4.「準備と努力は、裏切らない。」
手書きの単語帳。専門用語だけではなく、キーワードになりそうな言葉は基本的な単語も書き出して、もっとも適切な訳語を考えておく。
実は私も手書きで単語帳を書いています。アナログなやり方ですが、私には一番効率よく単語を暗記できるんですね。発音しにくい単語などは、声に出して読みながら、何度も何度も裏紙などに殴り書きして覚えます。
通訳者はいろんなジャンルの仕事を引き受けるので、その度にその資料を事前に受け取り、資料を読み込んで、内容をネットでリサーチしたり、専門用語を調べて単語帳にまとめたり、まるで受験生のようなことを毎日のようにやっているんです。
インターネットのおかげで、調べ物は楽になったし、現場でもネットで調べたりすることもありますが、どれだけ準備するかで通訳のパフォーマンスの出来は左右されます。
長井さんのような超ベテラン通訳さんでも、こんなに地道な努力を欠かさないというのを知って、頭がさがる思い出でした。
私は単語帳をちゃんとまとめていないので、もう少し整理していこうと思います。
5.「自分は準備出来たかもしれないのに、80%できたからもういいやっていうのは、私は嫌です。」
ごめんなさい 最近の私は、準備のために睡眠不足になるより、睡眠の方が大切だと思っていました。(もちろん睡眠は大切です!)
6.和歌を学ぶことで「やまとことば」を極めて、わかりやすい日本語に磨きをかける。言葉には際限がない。
基本的な単語でもぴったりの訳語がなかなかない、ということはよくあります。
長井さんは「ふるさと」という言葉の訳語に悩んでおられました。私だったら単純にhome townと訳してしまいそうなところです。our homesと訳されていましたが、必要以上に付け加えることもなく、話し手の気持ちをミニマムに、でも最大限込められている。話し手の汗と涙の結晶が見事に伝わったと思います。
私ももっと読書量を増やすなど、日本語力を向上する努力を欠かせないといけないと肝に命じました。
7.プロフェッショナルとは、一心にその道に邁進する力を持っている人。でもそれに奢ることなく、常に準備して仕事に臨む人。
こんな当たり前のことですが、長井さんが言うと重みが違います。
最後に、私が長井さんを見て「なんてやさしい真心をもった、情熱的な方だろう!」と思いました。
仙台出身で東日本大震災関連の会議に出られている時の顔の表情。
全身全霊ですべてを捧げていらっしゃる。本当に胸が熱くなりました
会議が終わった時のやさしい笑顔。
和歌を読んでいらっしゃる時や、ビオラを演奏されている時のお顔も素敵です。
人として、素晴らしい人生をおくっていらっしゃる女性だなと尊敬しました。
素敵な大先輩から、たくさんのエンパワーメントをいただきました。ちょうど今、私も転機に差し掛かっていると感じるので、時々この番組の録画をみて、しっかり自分のヴィジョンを見つめて行きたいと思います
長文を読んでいただき、ありがとうございます
長井さんの本、「伝える極意」大ヒット中です。