星名あむこと、パウエルの日記
Amebaでブログを始めよう!
今夜はやけに静かだ。執務室の窓からは赤く点滅するライトが幾つか見えるだけでほかには何も見えない。シンと静まり返った執務室で、一人書類に目を通す男がいた。名は確か村岡 慎二とか言った気がするが周りからは提督や司令官と役職の名前で呼ばれている。
「ふぅ…」
彼はため息をつき時計を確認すると、時計の針は0時30分ちょっと過ぎを指していた。作業を始めたのが10時過ぎだったからと考えた途端、今まで気にならなかった長時間の作業の疲れと眠気がどっと体を襲う。机においてあったすっかり冷めてしまったコーヒーをグイッと一気に飲み干し、またため息をついた。
「もう遅いし、休んだら?明日もあるんだしさ。」
そう声をかけてきたのは得型駆逐艦5番艦 の叢雲であった。空色の綺麗な髪をゆらゆらと揺らしながら窓の外を眺めている。
「いや、あんたが寝ないとあたしも寝られないのよ。…早く寝なさいよね。」
小生意気な娘であるが根は優しい憎めない奴だ。ここに来て初めて出会った艦むすであり、現在は秘書官ではないが時折こうして提督を訪ねてくる。
「…どう?司令官、ここには慣れた?」
唐突に叢雲が話を始めた。窓の外を眺めながら、
「ん?あぁ、まぁ慣れてきてはいるかな。ここにはむさ苦しい男共はいないしな。」
彼が苦笑いしながら答えると彼女のクスッと笑う声が聞こえた。
「ま、安心しなさい。ここにはあたしみたいな美少女ばっかりだから。」
自信満々な声から、彼女の自信満々な顔が想像出来て彼はまたフッと吹き出した。


彼が提督に着任して数日が経った。今だ着任だかなにやらの書類の整理に追われ忙しい日々を送っている。相変わらず資源は足りないが、それでも何とかやっていけてる。保有する艦隊、いわゆる「艦むす」の数もさほど多くもない為、直ぐに名前も覚えられた。眉間にシワを寄せ、無精髭を蓄えたその軍人らしからぬ何と言うか、だらしないアラサーのような風貌からか、まだ幼い(?)駆逐艦達からは少し距離を置かれている気がする。ただ、この鎮守府の雰囲気にはすっかり馴染んだとは思う。