酒を飲んでいた頃、酔いが回っていい気分になると、決まって誰彼構わず電話をかけていた。
そして翌朝、あるいは数日後、ふと発信履歴に普段見かけない名前が出てるのを目にしては深い絶望に突き落とされるのだ。
「またやった」
薄れかけた記憶の断片が少しずつ蘇り、羞恥心と自分への呆れがふつふつと湧き上がる。
「もう酒なんてやめてしまおうか」と一瞬は頭をよぎるのだが、本気で決意できるほど、酒はイージーな存在ではなかった。
あれから断酒して7年。SNSの時代に大きく変わった。もし今も飲み続けていたら、間違いなくSNSに「余計なこと」を書き込んでいただろう。
大風呂敷を広げてできもしない夢を語るのか、あるいは、本人だけが面白いと思っている寒すぎるジョークをぶっ放すのか。想像に難くない。僕なら絶対に投稿しているし、そのたびに何度も、何度も、繰り返し後悔していたはずだ。
手に取るようにその光景が浮かぶからこそ、心から思う。
酒をやめてよかった
