注:この作品はアニメを元にした二次創作です。
第47話「ミンチンの懺悔」
セーラが両親の墓参りとダイヤモンド鉱山の正式な所有権委譲の為に後継人のクリスフォードと親友ベッキーと共にインドへ渡って四カ月が経とうとしていた。 セーラはインドでの用事は全て済ませ、豪華客船で帰宅の途についていた。
その日の夕刻、ベッキーが慌ててセーラとクリスフォードの一等客室へ飛び込んできた。 その時、客室にはクリスフォードとラムダスは船内の大広間の方に出ていて不在だった。
ベッキー「お嬢様~! 大変でございます~!!」
セーラ「ベッキー、どうしたの? そんなに慌てて・・・」
ベッキー「それが先ほどなんですが、殿方達が会話しているのに出くわして、わたし、わたし大変なことを小耳に挟んでしまったんです! はぁはぁ・・・」
セーラ「ベッキー、落ち着いて! 大変なことって?」
ベッキー「はい、 は~・・・それがですね、お嬢様! 何でも予定より3日も早く明日には船が港に着くみたいなんです!!」
セーラ「ふふ、ベッキー・・・そのことなら私も先ほどラムダスさんから聞いていたわ! 何でもいつもより潮の流れが速かったみたい」
ベッキー「え!? なんだぁ~、お嬢様は知っていたのございますか! 焦って損したでございます!」
セーラ「いえ、私にいち早く教えてくれようとしてくれたことは感謝してるわ!」
ベッキー「そんな大層なことでは無いです! お嬢様、明日にはイギリスに帰れるんですね。 懐かしいでございますね~! そういえば、ピーターさんとか、どうされているのでしょうか? 病気とかされていなければ良いのですが・・・」
セーラ「ピーター? ベッキー、心配しなくても大丈夫よ! ピーターは強いもの! きっと、市場で元気に働いているわ!」
ベッキー「そ、そうでございますよね・・・」
ベッキーはそう答えると、下を向いて頬を赤らめた。
セーラ「あら? ベッキーたら・・・」
セーラはベッキーの態度に何かを感じていたようだった。
ベッキー「あっ!? それどころじゃないんでした! お嬢様の支度を早く済まさなければ!!」
ベッキーは慌てて客室の中に入ってセーラの支度を始めようとした。
セーラ「ベッキー、そんなに慌てなくても大丈夫よ! 荷物は叔父さまの分も含めてもうまとめてあるし、やることは殆ど無いのよ!」
ベッキー「え~!? お嬢様ったら、いつもわたしの仕事を全部取っちゃうんだもの・・・」
セーラ「ベッキーは、メイドじゃなくて私の大切なお友達っていつも言ってるでしょ。 ベッキーは部屋で休んでていいのよ」
ベッキー「それではわたしが困るのでございます! これではどちらがメイドかお嬢様か、分からないでございます!!」
セーラ「ふふ、そうね! じゃあ、これからディナーまでの時間は、私と算数のお勉強をしましょうか!」
ベッキー「え~、それは勘弁してくださいまし! わたし、数字の計算をしていると、直ぐに目がぐるぐる回ってしまって・・・」
セーラ「そーお、じゃあ、アンデルセンのお話しを聴かせてあげるわ! これなら大丈夫でしょう?」
ベッキー「うわぁ! それならわたしも大好きでございます! で、今日はどういうお話しでしょうか?」
セーラ「そうね・・・そうだ! 今日のお話しは、私が大好きな「人魚姫」にしましょう!」
ベッキー「人魚のお姫様でございますか? なんか面白そうな題でございますね」
セーラ「ベッキー、このお話しは面白いだけじゃないのよ・・・」
ベッキー「どういうことでしょうか?」
セーラ「聴けば分かるわ・・・」
20分後・・・
セーラのお話しを聴き終わったベッキーは部屋の中で号泣していた。
ベッキー「うぐっ、ひっく・・・人魚姫があまりにもかわいそうです!! わたし、王子様を許せないでございます!!」
セーラ「そうね、でも仕方か無かったのよ! 愛する王子様を殺めるしか自分が生き残る術が無かったんですもの・・・ベッキー、私ね、学院でメイドをしていたとき、何度も理不尽な目にあったでしょ・・・でも人魚姫の辛さに比べれば、こんなの何でもないって思って耐えたられたの・・・」
ベッキー「そうでございましたか・・・でもお嬢様、今はあの時と比べれば、天国にいるみたいでございますね!」
セーラ「まぁ、ベッキーたら! でもこれからは天国では無いかも知れないわ・・・」
ベッキー「ええ!? どういうことでございますか、お嬢様!」
セーラ「冗談よ! 気にしないで!」
この時セーラは冗談で済ませたが、心の内では近い将来に何か大変な事が起きるような気を感じ取っていた。それが何なのかはイギリスに戻った直後に分かるのだった。
続く。