今回のワインは、トスカーナ州キャンティ・クラシコ地区の名門「San Giusto a Rentennano(サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ)」が手掛ける「Chianti Classico Riserva Le Baroncole 2020」です。

 

 

キャンティ・クラシコの中でも、伝統と品質の両面で高く評価されている生産者であり、クラシックスタイルのサンジョヴェーゼを語る上で欠かせない存在です。

ワイナリーの歴史は中世まで遡り、もともとは修道院として使われていた建物が起源とされています。

現在はマルティーニ・ディ・チゴラ家によって運営されており、テロワールを最大限に表現することを重視したワイン造りを続けています。

標高の高い畑、石灰質と粘土を含む土壌、昼夜の寒暖差といった条件が、緻密で引き締まった酸と、長期熟成に耐える骨格を持つサンジョヴェーゼを育てています。

「Le Baroncole」はリゼルヴァとして長めの熟成を経てリリースされるキュヴェで、凝縮感とエレガンスを兼ね備えたスタイルが特徴です。

 

 

グラスに注ぐと深みのあるルビーレッド。香りはブラックチェリー、ドライチェリー、スミレ、そこにタバコ、革、スパイス、わずかに湿った土のニュアンスが重なります。口に含むと、引き締まった酸ときめ細かいタンニンが骨格を形作り、果実味と熟成感が美しく調和しています。余韻は長く、上品に続いていきます。

 

まずはビールからスタートし、おつまみとして「揚げ茄子の香味だれ和え」「アボカドとトマトの和風和え」「鶏ささみときゅうりの和え物」。揚げ茄子は香味だれの酸味とコクがあり、食欲を心地よく刺激してくれます。アボカドとトマトはまろやかさと爽やかさのバランスが良く、鶏ささみはさっぱりとしながらも旨味がしっかりしており、ビールとの流れとしてとても心地よいスタートでした。

 

 

そして主役のすき焼きとワインの組み合わせです。

甘辛い割り下で煮込まれた牛肉、焼き豆腐、しらたき、長ねぎ、春菊。

これらの複雑な旨味に対して、ワインの酸が非常に効果的に働きました。

 

 

サンジョヴェーゼ特有の伸びやかな酸が、割り下の甘みを引き締め、口の中を整えてくれます。

特に牛肉との相性は印象的で、肉の旨味と脂の甘みをワインのタンニンが穏やかに受け止め、果実味が全体を包み込みます。

甘辛い味付けと赤ワインは難しい組み合わせになりがちですが、このワインは酸と構造がしっかりしているため、料理に負けることなく、むしろ味わいを整理してくれる存在でした。

春菊のほろ苦さや長ねぎの甘みも、ワインのスパイス感とよく調和し、和食とトスカーナワインの意外な相性の良さを改めて感じさせてくれました。

 

 

San Giusto a Rentennano Chianti Classico Riserva Le Baroncole 2020 は、クラシックなサンジョヴェーゼの魅力を丁寧に体現した一本でした。派手さよりも、静かな力強さと気品を感じさせ、料理と向き合ったときに真価を発揮するワインです。

すき焼きという日本の家庭料理と合わせることで、ワインの懐の深さと、食卓を豊かにする力を改めて実感できました。ゆっくりと時間をかけて味わいたくなる、そんな一本でした。