「しょーちゃん、今年もデートとか良かったの?」
「する相手いねぇし。ってか、お前が『しょーちゃんには俺がいるからいいじゃん!』って言ったんだろ、責任もてよ」
「もー!またその話?そんな何年も前の話、ずっと覚えてなくていいってば!」
中学1年生の時だったか、しょーちゃんが初めてできたカノジョにふられて落ち込んでた時に確かにそう言ったんだけど.......
その時はしょーちゃんと一緒にいるのがただただ楽しくて、それ以外の気持ちがあるなんて、俺も全然気がついてなかったのに。
「お前のせいだからな、全部」
「もぉー」
そのカノジョにふられた理由って言うのもまた俺のせいなんだって、しょーちゃんはずっと言ってて。
「『相葉くんの話ばっかり』って言われてさ、『私より相葉くんが好きなんでしょ?』って言われたんだからな?」
「それ、俺のせいじゃないでしょ?」
「お前のせいだって」
そんな風に文句を言いながら、この時期には俺ん家の手伝いに毎年来てくれるしょーちゃん。
街中がキラキラして、ワクワクする季節に俺のとこに来てくれるしょーちゃん。
「ほら、早くやろうぜ」
「うん、じゃあ、ケーキ持ってくるね」
ケーキ屋の息子なのに、クリスマスイブが誕生日なんてね。
毎年、誕生日は誕生日どころじゃなくて、家族総出で店の手伝いをしてるんだけど、その手伝いの合間の休憩時間にいつもしょーちゃんとふたりで誕生日のお祝いをするのが恒例行事だったりするんだけども。
それが俺にとってどんなに大切なことか、なんて、しょーちゃんはきっと知らないよね?
家の冷蔵庫から、昨日作っておいたチーズケーキを取り出して深呼吸をした。
春からは大学生になるしょーちゃんと、製菓の専門学校に行く俺。
今までは学校が違っても、なんだかんだと週3くらいで会えてるけど、きっと春からはこんな風に会える日も少なくなるんだろうな、なんて考えたらそれだけでちょっとブルーになっちゃうけど。
しょーちゃんへの気持ちに気がついたのは、高校に入ってから。
俺とは違う制服を着てるしょーちゃんがかっこよくて、違う制服の女の子に告白されるのを何回も横で見てて、その度に胸がちくんって痛んで、しょーちゃんから断ったって聞く度に女の子たちには申し訳ないけどちょっと嬉しくて。
「あれ.......?」
俺が持つケーキを見て、しょーちゃんが首を傾げた。
「今年は俺がバスクチーズケーキを作ってみました!」
どや!ってケーキを差し出したら、しょーちゃんの丸い目がますますまぁるくなって、眉毛がへにゃって下がって嬉しそうに笑う。
.......その顔、最高に好き!
「マジで!すげぇ美味そう!あーでも、そしたらこれ置く場所ねぇな.......」
今度は困った顔でしょーちゃんが笑う。
その顔も、すごく好き。
「置く場所?」
しょーちゃんが小さく頷いてから小さなタッパーをテーブルの上に置いた。
「昨日、おばさんに教えてもらって書いたんだ」
チョコプレートの上に書かれた『Happy birthday MASAKI』のちょっと歪んだ文字。
「.......え、これ.......しょーちゃんが書いてくれたの?」
「頑張ったろ?俺」
「うん!すっごく嬉しい!食べるのもったいないなー。あ、そうだ、写真撮ろ!しょーちゃんも一緒に撮ろ?」
自撮りなんてしたことないから、全然上手く撮れなくてしょーちゃんと笑いあって、くっつきあって。
不器用なしょーちゃんがどんな顔して俺のためにこのプレートを書いてくれたんだろって考えたらもう、嬉しすぎて、ほんとにほんとにしょーちゃんの事が好きだなって思って.......
「泣いてんの?」
「笑いすぎちゃっただけだもん」
ごしごしと目を擦ったらしょーちゃんの手が俺の手を掴んだ。
「雅紀」
しょーちゃんの優しい声。
その声も、すごくすごく、好きなんだ。
「ほんとに責任取れよ、お前」
「.......なんの.......?」
俺の質問には答えずに、しょーちゃんがそっと俺の唇にキスをした。
おしまい