「じゃじゃーーーん」
「え、何?」
昼休み、相葉くんにこっちこっち!と手を引かれてやってきたのは、会社の近くの小さな公園。
ベンチに並んで座った相葉くんが、四角い包みをカバンから取り出した。
「昨日は、お世話になりました!さとちゃんち、お弁当箱無かったからタッパーだけど」
「弁当?相葉くんが?」
「うん。俺、意外と料理出来るんだよ」
キラキラした瞳に見つめられながら、包みをほどいて蓋を開ける。
「ぅわ」
「あ、よかったー!崩れてなかった!」
黄色い卵の上にケチャップでかかれた『SHO♡』の文字に、マジかって笑いがこみ上げる。
「これ、相葉くんが?」
「うん。めっちゃ愛込めてかいたから!」
「なんだよ、愛って!」
「愛は愛でしょー?」
あひゃひゃって、楽しそうな笑い声をあげながら差し出してくれたスプーンを受け取った。
「えっと……オムライス?」
「うん……あ、もしかして、好きじゃなかった?」
俺の問いかけに、その笑顔は不安そうな表情に変わる。
「朝、さとちゃんが櫻井さんのとこに迎えに来てくれた後に、スーパーに寄ってもらって急いで作ったから、簡単なのしかできなくて……」
「いや、簡単ってそんなことないだろ。俺、オムライスすげぇ好き。いただきます」
相葉くんに見つめられたままの状態で、書いてくれた文字を崩すのは少し気が引けて、端っこにスプーンを入れて口へ運んだ。
「うま!」
「ほんと?よかったー!」
心配そうな顔からまた笑顔に戻った相葉くんが、俺も食べよーって、もうひとつ四角い包みをカバンから取り出した。
「櫻井さんはさ、さとちゃんの大学の後輩なんでしょ?」
「ん?」
「なんでさとちゃんと一緒に会社やろうって思ったの?」
「なんで、かなぁ……」
食後にコーヒーとカフェオレを買って、またさっきのベンチに並んで座る。
「智くんだったから、としか言いようがないけど」
「やっぱり、そこは疑わないんだ?」
「そりゃ何年もの付き合いだし、智くんのことは信頼してるし、尊敬してるよ」
「ふぅん」
パタパタと足を動かした相葉くんが、足を投げ出すように伸ばして、その上に身体を倒して俺の顔を覗き込むように見上げる。
「……さとちゃんがなんですごい所との繋がりを持ってるのか、とか……そこは追求しないんだ?」
「?!」
「櫻井さん、ホントに嘘がつけないんだね」
驚いた俺に『目が落っこちちゃいそうだよ?』と相葉くんが笑う。
「ちょっと待って……どういうこと?」
「いいよ、大丈夫。俺、知ってるもん。俺が知ってること、さとちゃんも知ってるから大丈夫」
鼓動がどくどくと音を立てて、その音に合わせるように、ポケットでスマホが震える。
いま、相葉くんは何もしていない。
「スマホ、大丈夫?」
相葉くんの笑顔が変わる。
なんでスマホが震えたことを知っている?
メッセージの着信を知らせる短いバイブ。
その音が聞こえたっていうのか?
「相葉くん……」
「なぁに?」
可愛らしい笑顔、なのに……
「相葉くんが……?」
「なんのこと?」
俺を見つめる瞳は、光さえ吸い込んでしまいそうなほど真っ黒で、てのひらに嫌な汗がじわりと浮かんだ。