ふわりと触れた唇を挟むようにしてキスを返す。
何度も何度も触れる唇。
あの日、柔らかそうだなって思った唇は想像以上に柔らかくて優しくて……
「……んっ……」
こぼれた自分の甘い声にびっくりして、慌てて櫻井さんから離れた。
「……ごめん。がっつきすぎた」
「お……俺の方こそ……舞い上がりすぎちゃって……」
「はは。お前、ほんとに可愛いな!いや、俺ちょっと今日、理性保てるか不安だわ」
「……そんなの、なくてもいいのに」
俺だって、櫻井さんに触れたい。
櫻井さんに触れて欲しい。
今まで踏みまくってたブレーキが、踏みすぎてバカになってるみたい。
もう一度、キスしようとして顔を近づけたら櫻井さんが俺の肩を押さえた。
「ちょ、ちょっと待って……えっと、ちょっと落ち着こうか?」
さっきまで余裕な雰囲気を醸し出してた櫻井さんが、急に落ち着きをなくしちゃうのが可愛くてキュンとしちゃう。
こんなのダメだって、ずっと押し殺そうとしてきた気持ちだったけど……櫻井さんもおんなじ気持ちだって分かっちゃったらもう、そんなの止めろっていう方が無理な話じゃん。
「あの、ほんとに……いろいろ片付いたら言おうと思ってたんだよ。ちゃんとこう、段階踏んでさ……
雅紀に言われるまで待ってようかとも思ってたんだけど……お前、さっき急に逃げようとするから『好きだ』って言う前にキスしちゃったわけなんだけど」
「え?ちょっと待って……俺に言われるまで待つって?」
思いがけない櫻井さんの言葉に、今度は俺があたふたしちゃう。
「お前が俺のこと好きなの、わかってたし」
「えぇ?!」
「自分に向けられる好意に気が付かないほど鈍感じゃねぇよ。それが自分も好きな奴からなら、尚更だろ?」
「嘘でしょ?!恥ずかしすぎるし、それ!
ってゆーか、バレちゃいけないってすんごい悩んでた時間がバカみたいじゃん!なんでさっさと言ってくれないんですか?!」
近くにあったクッションで櫻井さんをぼふっと叩く。
「ごめんって!だからさ、それ、分かってたから俺もちゃんとしねぇとなって思って……
さくらと話し合って、いろいろちゃんと片付けて、ひとりになって、引越しもして、リスタートかけてそれから……ってさ」
「……え?引越し???」
櫻井さんの言葉に、櫻井さんをぼふぼふ殴ってた手を止めて周りをぐるりと見渡した。
必要最低限っていうよりも、ほとんどモノが見当たらない部屋。
よく見れば、ラグもソファもテーブルも真新しい。
「……引越し……したんですか?」
だいぶ前に一度、櫻井さんを家まで車で送って行ったことはあったけど……さっきは自分のことでいっぱいいっぱいで、どの駅で降りたとか、どう歩いてきたかとか、そんな記憶が全くない。
言われてみれば、前に櫻井さんを送ったのは全然違う場所だった気がする。
「そ、引っ越したんだよ。お前、さっき、全然気がついてなかったろ。前と全然違うところだからな?マジで。で、雅紀が初のお客様ね?
ここに越してきて3週間経つけど、全然片付かねぇんだよな」
……あぁ、もう……
なんなんだろ、この人は。
「……じゃあ、明日は片付け、手伝います。それで……ご飯も作ってあげる」
本人は絶対無意識なのに、俺が気にしてること全部、取り除いてくれちゃってるのが、さすが櫻井さんっていうか……
俺のこと、わかってくれてるじゃんって思っちゃうのは自惚れなんかじゃないよね?
「ふふ、うん。そうしてくれるとすげぇ嬉しい。実はそれを期待してキッチン広めな部屋にしたんだよね」
櫻井さんの指が、するりと俺の頬を撫でてから、唇に触れる。
それだけでもう、俺の心臓はまたバクバクと大きな音を立て始めた。
こんな時ですが、いや、こんな時だからこそ???久々のお話をアップしてみたり(・∀・)