今回の私の任務は…
20階にある資料室に入り込んで
ある資料を取り出すこと。
制限時間は12:15~12:45の30分間。
このビルはセキュリティも万全で
いくらニノでもその30分間しか確保できなかった。
この時間にしたのは昼休憩で少しでも多くの社員が、外に出る時間だから
らしい。
ビルの中にはいると早速、警備員さんのお出迎え。
"堂々としてれば大丈夫だから。"
聞こえてくるニノの声。
わかってるよ。潜入なんて何回目だと思ってるの。こんなおっきいビルは初めてだけどさ。
ニノの作った社員証をピ。と機械にかざす。
…通れた。
ビルの中の構造は昨日の夜たたきこんだ。
この会社の基本的な情報も。
"社員数が多いから顔を知らない人がいるのは不思議じゃない"
昨日のニノの言葉を反芻する。
とはいえ
さすがに密室にここの人といるのは緊張する。
でも階段…は使いたくないし
誰かが乗り込んできたらなんとなく
降りればいい。
到着したエレベーターから降りる人を待って
乗り込んだ。
「エレベーター乗ったよ。」
「はーい。」
「資料室なんて…セキュリティ、こんなとこじゃたまったもんじゃないんじゃない?」
タバコの煙を吐く気配。
「俺を誰だと思ってんの?」
結局、途中で一度小太りの男の人が
乗り込んできただけで
会話も交わさずに済んだ。
時刻は12:20。
資料室の前にある認証パネルにタッチすると
見事にドアのロックが解除された。
ニノってすごい……。
「中入れたよ。」
「だろ?惚れ直した?んふふ。」
「うん、すごい。
すごいけど気持ち悪い」
くくく、って笑う声。
「ありがと」
「で、なに持ってけばいいんだっけ。」
指定された書類をカバンに詰め込んで
部屋をでる。
後ろでカチャリ。と鍵が閉まる音がした。
は~!終わった~!!
なんだ意外とちょろかったじゃん。
キャリアウーマンに憧れた頃もあったな
こういうところで働く人生ってどんなだったろう
なんて無理か。
エレベーターに乗り込んでホッ。とため息
をついたとき。
閉まりかけたドアを開いて一人の男性が
乗り込んできた。
あれ?さっきの人じゃん。
何事もなく終わりますように!
「初めて見る顔だね」
ぎょ!
一階までまだ大分あるし…。
"顔を知らないのも不思議じゃない"
でもやっぱ緊張するよーーー泣
「はい企画部のシミズキョウコといいます」
その人はふん、と笑って続けた。
「これからお昼?」
「あ…はい。ちょっと近くのコンビニに。」
「んー、時間あるからさ、ちょっと食べに行かない?」
・・・
は!?
「あ、いや今持ち合わせがなくて…」
「そんなの~奢るから笑」
だよね!そう来ると思った!
「あ、いや~その…」
普通こんな露骨に渋られたら
引き下がるでしょ!
12,11,10…エレベーターの上の表示を見つめる。
あぁもうどうしよう!
9の数字が光ったとき、同時にチン…と音がした。
助かった!
けど
今度は誰!?
ドアの向こうにいたのは...
潤くんだった。
潤くん~!
潤くんはその人に軽く会釈をして、
「近藤さん、入澤様…と名乗る方が
カフェテリアでお待ちでした」
というと、
小太りの人、改め近藤さんは
素早く次止まる階のボタンを押し
そそくさと出ていった。
「助かった‼ありがとう。
さっきの近藤さん?…って知り合い?」
「違うよ。」
「でもなんか…」
「俺が男だからだろ。女にしか興味ないやつなの。」
…なんで……………
そんなことまで知ってんのこの人。