母なる惑星(ほし)、地球の遥か遠く、漆黒の宇宙空間を航行中の宇宙船J-Storm号のメインコントロールルームに、この船の全クルーが集まっていた。

  クルーは5人。
  エンジニアの大野智。その助手、松本潤。ドクターの相葉雅紀。オペレーターの二宮和也。そして、最後の1人、航海士の櫻井翔。
  この5人の筈だった。


  コントロールパネルの前と、そのすぐ傍に立つ2人の櫻井が睨み合っていた。

  他の4人は戸口に立って、一様に驚いた表情を浮かべている。

「どっちかがニセ者なんだよね。…でも、どっちだ…?」
  二宮が、鋭く観察しながら言葉を発し、腕組みをした。

  2人の櫻井が熱い眼差しをして、4人の仲間を見つめる。どちらも自分を主張しようとしない。あくまで、仲間の絆を信じている眼だ。


「はい!はい!はい!はい!!」
  突然、相葉が手を上げ、一歩前へ出た。


  2、3秒全員が見合わせた後、右側の櫻井が、
「あ…どうぞ。相葉さん」
  と、発言を促すジェスチャーをした。

「あのさ、前にやったじゃん」
「何をですか?」
「リーダーの匂い当てるやつ」
「あの、本に手を置いて、どの色の本をリーダーが触ったかってやつね?」
「うん、そう!あの時、全部当てられたの、翔ちゃんだけだったよね?!」
「あ…そう。覚えてる。俺、翔くんに愛されてんだなぁ…って、嬉しかったもん」
「ねっ!ねっ!それ、やってみよう?!ニセ者は分かんないんじゃないかな?」
「じゃ、俺、用意するよ」

  松本がフットワーク軽く出て行った。

  程なく戻って来た彼は、手袋を嵌めた手に6冊の本を持っていた。


  相葉が、2人の櫻井を壁際へ連れていく。

「こう見て、左側の翔ちゃんは、翔ちゃんAね。で、右側の翔ちゃんは翔ちゃんBね」
「う…うん」

  2人が同時に頷いた。


  二宮がコントロールパネルにタッチすると、部屋の中央にテーブルがせり上がってきた。その上に松本が本を並べる。

「じゃ、2冊置くよ。どちらかをリーダーが触るから、匂いを嗅いで当ててね」
「はい。2人とも向こう向いて。念のため、目、瞑ってね」


  櫻井、A、Bが、相葉の言葉に従う。

「じゃ、リーダー。やっちゃって下さい」
「ん」

  大野は、後ろを向いて立つ、2人の櫻井の背中を見つめながら、左側の本に掌を押し付けた。その後、本を持ち上げて、摩ったり、何度も持ちかえたりして、満遍なく “匂い” を付けた。