「翔チャン…お願い…」

 なおも迫ってくる相葉くんに、不審が湧く。


  これは本当に相葉くんなのか?
  違う!こんなの相葉くんじゃない!



  酸素と二酸化炭素の誤差。
  昨日の智くんの事故。
  そして、この相葉くん…。

  違和感の点と点が一本に繋がった…!


  俺は相葉くん…いや、目の前の得体の知れない者の腕をがしっと掴んだ。

「お前、誰だ?」
  上目遣いに凄みを利かせ、低く迫る。

「やだな、翔チャン、何言ってんの?俺だよ。俺。ホラッ」
  って、120%の笑顔。


  でも違う。
「目が笑ってない。相葉くんはそんな笑い方しない」

  俺の言葉に、ニセ者は表情を変えた。

「この船の人は僕が本人じゃないって気付くんだね。どうしてだろ?本人のDNAで変身してるのにね。何が違うの?」

  不誠実な、やさぐれた表情と言葉。
  相葉くんの形を借りて、これは許すことはできない!

  立ち上がり、胸倉を掴んだ。

「DNAだって?!どうゆうことだ?!お前、相葉くんに何かしたのか!」
「何もしないよ。只、ちょっと指を舐めて、軽く噛んだだけさ」

  いやらしくニセ者が笑う。

  もともと苛々してたんだ。そんなトコに来たお前が悪い!

  俺は拳を振り上げた。

「あれ?僕を殴るの?!じゃぁ、これでも殴れる?」

  そう言ったニセ者の顔が、瞬き程の間に俺になった。

「え?!」
  驚いて怯んだ隙に手を払われた。

「実はね。最初に変身したの、君だったんだよ」
  ニセ者が片頬を歪めて笑った。

「なんで?!いつの間に…」

「遊戯室に毛髪が落ちてた。それが君のだったんだね。でも、毛髪からだと時間かかっちゃって…。だから、あとはもっと簡単にDNAを採取できる “モノ” で変身したけど…」

  ニセ者が溜息をついた。
「この船には、子どもを産める個体がいないんだもんなぁ…」


「お前の目的は…何だ?」




「翔ちゃん!大丈夫?!…あっ?!」
  不意に扉が開いて、相葉くんの声がした。そして、次々とみんなの驚く声がした。

「うそっ!」
「マジか…」
「翔さんが2人?!え…ええ~?!」