※オペレーター──二宮和也


「しっかし、俺も飽きないねぇ」
  ふと時計を見て独り言を漏らした。自室に戻ってから、かれこれ小一時間程か。ずっとゲームに没頭してた。まっ、体感的にはアッと言う間だけどね。

「まっ、まだまだこれからですよ」

  俺は、マジックテープで壁に固定されてる布団の中で、姿勢を変えた。

  その時、ノックの音がして、扉が開いた。

「ニノ、ちょっといい?」
「ん~?…ちょっと待ってぇ」
  俺はゲームから目を離さずに返事した。

「入るよ」
「…うん」

  すうっと近寄って来る気配がして、後ろから、布団ごと抱き竦められた。

「何してんの?」
  耳元で低く囁く声。
「J…やめてよ。もうちょっとだから…」

  今いいトコなんだよ。このダンジョンのラスボス。もうちょっとでクリアなんだから。


  暫く、2人とも動かなかった。ゲームのBGMだけが静かな部屋に流れている。





「…やった…」

  ファンファーレの様な音楽が奏でられ、全てのキャラクターのレベルが上がったとメッセージが流れた。それをぼんやり眺める。


  データをセーブして、ゲーム機を枕元の収納スペースへ片す。

「ごめん。お待たせ」

Jに向き直る。でも、それでもJは俺から離れようとしない。

  物凄く近い。

「あの…J?これじゃ…話しずらいん…だけど…」
  俺は布団ごと押さえ込まれてる様なもんだから、首だけしか自由が利かない状況。

「うん…でも…」
「でも?」
  長い睫毛に縁取られた瞳が、潤んでる様に見える。

「話さないで、他のこと、したい」

  俺は首を竦め、上目遣いでJを見た。
  何だ?この表情。丸で女の子でも口説いてるみたいに色気ムンムンな。

  俺が答えないでいると、Jは俺の耳に口を寄せ、冗談にしても質の良くないことを言った。
「バッ…!!何言ってんの?!何か変な物でも食べた?!」

  あ~!!もう、顔が熱い!俺がこんな狼狽えるなんて、メッタにないよ!
  それでもJは、顔色1つ変えずに俺のこと見つめ続けてる。

「こんなこと頼めるの、ニノしか…ね?いいでしょ…?」

  小さく呟いて、段々と近づいてくるJの顔。伏せ目がちなのは、俺の唇を捉えているからか。

  鼻先と鼻先が最接近して、ピリピリする…!