前回からの続き
私が、こういう礼儀に関心が向くのは、他人から色々な便宜を受けても、感謝のかの字もない人たちに多く接してきたからです。
私は、長く化学研究を生業にしてきましたが、研究とは知識と情報が売り物です。こういった無形の物には金を出さない、というのが常識と思われていました。
一つ例をあげましょう。
私がヨーロッパに留学していたとき、関東の特許事務所から連絡が来て、ある技術について研究発表していないかどうか、していたらその要旨を欲しいとのことでした。
どうも、ヨーロッパのどこかの会社から出された特許出願を潰すため、ヨーロッパの特許事務所が先行研究を調べていたらしい。それが、日本の特許事務所経由で資料要求の連絡が来たという次第でした。
私は日本にいなかったので、研究室の学生に頼んで、国際学会の要旨のコピーを特許事務所に送って貰いました。
その後、特許事務所からは、着いたとの連絡も何もありませんでした。
これは、私には何の得にもならないサービスであったので、一言お礼が欲しかったのを覚えています。要求だけは熱心にするが、自分の仕事が済んでしまえば、他人がしてくれたことを、さも当然のように考える人たちが社会にはいるようです。
私は国の研究機関に所属していたので、研究動向の話を聞きに来る人たちは割と多くいました。
会社でも、情報収集を仕事にしてる人も多いのです。
会社によって様々で、情報と対応時間はタダではないと考える会社もあります。
情報収集のタイプには、以下の3タイプがあると考えています。
①手土産を持ってくるタイプ
②向こうも情報を持ってくる、ギブアンドテイク型
③情報だけを聞き出そうとするタイプ
メーカの開発部門の人が来るときは、①のタイプも多くいます。後々の関係も考え、地元の名産を持ってこられる方がいて、貰う方も好印象になります。
一方、総研会社や調査会社には②のタイプが多く、会社の研究者にもこのタイプが多いです。国の研究者だから上というわけでなく、基礎分野、応用分野の研究という棲み分けで、同等と考え情報交換をします。
そして、商社、マスコミはほぼ③に分類されます。
私のところにマスコミの取材が来たことはないのですが、他の人の実話を聞くと、電話を掛けてきて、情報を聞き出して、場合によっては、それが国の見解のように報道されることもあるようです(国の機関なので)。なので、何か科学的な問題が発生した場合には、お上(経産省)から不用意にマスコミに回答しないようにとのお達しが出ることがあります。
一般に、学会などの発表会で発表した内容は、了解なしに報道するのがマスコミにとって普通です。記者に依りますが、間違った解釈で記事にされることもあるようです。
マスコミのように情報を売り物にしている会社は、情報収集は仕事で、そして集めることが偉いと思っていて、情報源をただ利用するだけの対象と思っている人が多い印象です。
ノーベル賞の時期になると、受賞者の研究内容を報道することが多くなります。
あれは、その分野の先生に解説をお願いしていることがほとんどです。日本のマスコミの科学関係は、非常に貧弱です。それで、先生方に電話取材します。
もちろんタダです。また、取材の後、こういう記事が出ましたとかお礼を言われることはほぼありません。記事の責任は、発言者の○○先生にあるような書き方をされます。間違った解釈をしても、先生が言ったような書きぶりになるのが普通です。
先生方は、科学への関心を一般人に持って貰いたいと思い、サービスしているわけです。
マスコミはそれで儲けているのだから、情報源への感謝の気持ちを持ってもいいのではないかと思います。
飛躍しますが、マスコミの非常識が、ジャニーズ喜多川の性加害を容認し、膨大な被害者を生み出したと言えるでしょう。今もって、反省は示していないようです。
芸能界今日も反省の色無し、です。
(ダン池田の本からです、ちょっと古いかな)