高校の時から理系人生だったが、昨年に定年になった。

理系でも様々な人生があるが、ちょっと振り返ってみたい。

 

なお、理系でも医者はかなり特殊で、その職業を選んだ時点で概ね後の人生が決まってくるので、例外としておく。

 

理学系と工学系があるが、大半はどこかに勤める。勤務先は民間会社の場合、大学や国立の研究所の場合、公務員の場合が多いが、商社のような文系の会社にも就職している者もいる。

 

私の大学の同級生には、商社に就職した者や広告会社に入った者もいるが、定年よりずっと前に辞めたり亡くなったりしている。

仕事がつらいという話は聞いたことはなかったが、ある程度無理をしないといけないことも多かったのではないかと思う。

理系は概ねコミュニケーション力が弱いが、文系の職業は人間関係が中心なので、ストレスも強く感じるのだろう。

 

製造業の企業に入った同級生が最も多いが、研究する者、現場で働く者の両方いる。研究に配属されても、実際に研究をするのはせいぜい40歳くらいまでで、そのあとは管理関係の仕事となるのが大部分である。

私の経験上、企業で研究・開発に携わるのは、従業員の2,3%位でないかと思う。

なので、よっぽどの研究リーダーでないと、研究はせいぜい十数年で卒業となる。

 

結局、研究を40歳以降も続けられるのは、大学の先生か国立研究機関の職員になった者くらいである。割合でいうと、卒業生の1割くらいだろう。この割合は大学によって異なるが、1割というのは旧帝大クラスか、有名私大(早慶くらい)かと思う。

 

私は国立の研究職についたが、研究者としては二流だった。

自分の代名詞と言える研究が確立されれば一流と言えるが、そこに到達できるのは、1,2割くらいだろうと言うのが実感である。

 

45歳以上では、ほぼマネジメントを行い、研究らしい研究はしなかった。

マネジメントは、研究をするのではなく、他人がやっている研究をアピールすることであり(予算獲得を目指して)、また他の研究者、機関との共同研究を進めるための交渉も行う。

 

なので、研究者にとって楽しい仕事ではない。汗をかいて研究費を獲得しても、偉いのは研究をする人で、予算を獲得してくれてありがとう、などと感謝されたことはない。

 

ただし、二流の研究者でも研究を続けられる人がいる。

それには二つ条件が必要である。一つは、周りの意見に耳を貸さない頑固さで、もう一つは研究費を稼いでくる能力である。

 

そんな研究はやめろという外野の声を無視し自分の研究をすることは、昇格などのルートから外れることであり、結構難しい。そして、小さな科研費(年間100万円程度)をコツコツ当てて、研究を続ける。こういう人は研究所の仕事に貢献していないと文句を言われたりするが、強制的に異動させられることはない。

 

とは言っても、研究機関によって違うことは多いのだが。

 

 

以下、理系の人で研究者になりたいというという人向け。

 

まず、博士号の取得が必要である。

その後、公募に申し込む。大学の他、文科省系(理研、物材研など)、経産省系(産総研)、農水省系(農研機構など)、厚生労働省系、環境省系などある。

 

ポスドクをすることもあるが、上記の機関では随時募集している。なおポスドクをしても、その機関の就職に有利になることは少ない。

 

海外ポスドクという手もある。優秀な研究者ならば、そこでのパーマネントのポストを得られるかも知れない。

ただし、中国やインドの留学生などはポスト取りに旺盛であり、彼らと競争しないといけないので、研究能力の他、交渉能力なども必要である。

 

好きな研究とはいえ、職業にすると、好きな様に進められないのが現実である。ノーベル賞級の研究をするのは、研究者の0.1%以下だろう。

いかに夢と現実を折り合わせるかが重要となってくるが、突破するのも挫折するのも人生だと思う。

振り返ると、二流研究者の研究人生とははそんなものである。