ユニクロの柳井会長が、京大の山中先生、本庶先生に100億円の私財を寄付すると言うことでニュースになっています。

 ユニクロはブラック企業で、労働の過酷さを喧伝されていたのは知っているので、従業員の血と汗で築いた膨大な資産のうち、ごくわずかを社会のために使うのもしょく罪の意味でいいだろうとは思います。と、皮肉に言っても、膨大な資産でもびた一文も社会のために使いたくないという人も多いので、立派な行為であることに変わりはないと思います。

 それぞれの先生方に50億円づつということですが、このような寄付金は用途に余り縛りがなく使い勝手のいい資金であるため、先生方には有り難い申し出です。公的資金は国民の税金が元になっているので、使用制限がかなり厳しくなっています。用途外に使えないのはもちろん、購入手続きも煩雑です。例えば機器の場合、1500万円(だったと思う)以上の機器の購入は国際入札になり、最低でも納品には半年かかります。年度単位の予算であるため、その年度は購入だけで終わりということも少なくなく、次年度どんどん使ってデータを出すぞと思っても、急に予算削減を言い渡され、人件費もままならないというのもよくある話です。

 寄付金の場合も大学の会計のルールに従いますが、購入手続きの労力は公的資金ほどではありません。

 

 また、本庶先生関係では、共同研究を行っていた小野薬品工業に226億円の支払いを求めて裁判に訴えた、との報道もありました。これについては、そのうち触れてみたいと思いますが、一般に研究者は裁判のような煩わしいことに時間を使いたくないものです。本庶先生が相当小野薬品に怒っているというのが根本にあるように思います。

 一般論ですが、日本の会社は大学の先生をタダで使おうとするところが多いのも事実で、色々話を聞きに来て、よくて菓子折ひとつ、という場合も多いです。私も、ある特許事務所から、ある海外の企業から出ている特許を潰すために、以前発表した国際学会の要旨がほしいと言うことで、そのコピーを送ったことがあります。そのときは海外留学中で、日本にいる知り合いに要旨集を見つけてもらって送付を依頼したのですが、特許事務所からは届いたとか、ありがとうの一言もありませんでした。

 

 なお、同じ日に、京大の霊長類研究所で不正経理5億円というのがあって、研究とお金の問題は複雑なものです。