急にナフサという言葉が流行りだして、分かったような分からないような報道が多い。
私は一応、工学系の化学研究者だったので、一般人より多少は知っていると思う。
簡単に言うと、原油は蒸留という操作を経て、沸点の違いで幾つかの画分に分けられる。
ここらへんは石油化学系のHPには書かれているので、特に説明しないが、ナフサは割と沸点の低い成分である。
ナフサでも、沸点の高いのを重質ナフサといい、脱硫やオクタン価を高める改質を行ってガソリンになる。
沸点の低い軽質ナフサは、主に化学品の原料となる。
ナフサは多くの分子の混合物であるが、これを接触分解すると色々な分解物が出来るが、それを精留して色々な成分が得られる。その中でも基幹となる化学品は、エチレンとプロピレンである。
各種容器素材となっているポリエチレン、ポリプロピレンはそれぞれを重合した高分子であるが、塩化ビニルもエチレンを原料としている。
化学品にはバイオ由来もあり、食品関係に使われるのは、天然物やその加工品が多い。
私が化学品がどう合成されているか調べるときよく使っていた便覧は、化学工業日報社が出している「○○○の化学商品」(○○○は数字)という冊子で、主だった商品は結構詳しく出ている。(結構高価な本である)
身の回りにある相当多くの化学品は、石油由来である事が分かるであろう。
こういった化学品の流れは、上流であれば、経産省の人ならばかなり把握しているはずである。
ただし、下流に行けば行くほど細分化しており、その業界の人間で無ければ詳しく把握している人はいないであろう。
例えば、医薬品なども元をたどれば石油由来の化学薬品を原料としている場合が多いが、原薬や中間体は中国などから輸入している場合もあり、役所も把握できていないのではないかと思う。
従って、ナフサ不足で商品が作れないという報道を聞いたところで、その業界のことを把握しているのは商品に関連する関係者だけで、どこが目詰まりを起こしているか全体像を見ることは、ほぼ不可能であろう。
政府が供給量は足りているといっても、最終的な需要と大本のナフサ供給量を比較しているに過ぎない。
よく考えれば、不足するとみんなが思えば、自分の在庫を増やそうとするだろう。その結果流通不足が生じる。これは誰も同じで、将来トイレットペーパーやマスクが不足すると思えば、備蓄する。結果、流通量が減る。
BtoBで、この出し渋りが生じているものと思われる。
この在庫を貯める業者も、金をはずんでくれれば出すという方向であるので、金を出せない弱小業界や会社が困るということになる(のだと思う)。
さて私は、もう10年以上前になるが、バイオエタノールからプロピレンを製造するというプロジェクトに参加していたことがある。
原料を石油からバイオ産物に変える技術開発は一つの研究分野で、バイオリファイナリー技術と言う。
このプロジェクトを始めた時も、1バレル100ドルを超えていた時期であり、かなり大きなプロジェクトであったが、石油価格が下落すると、やはり石油の方が安上がりになるので、バイオリファイナリー技術開発は下火になった。
ネットで調べると、当時参加していた化学メーカーは、バイオエタノールから化学品を作る技術は進展させているようである。
トランプ大統領になって、地球温暖化問題をあまり言わなくなったが、石油が燃えれば大気中のCO2が増えるのは当たり前である。気候変動問題は、解決しそうにもない。
ナフサからの化学品、特にプラスチックがこれほど普及したのはここ4,50年くらいではないかと思う。
ペットボトルの前はガラス瓶だったし、バケツは金属だった。透明な膜もあったが、これは天然素材を原料とするセロファンである。
今となっては、石油由来プラスチックがなかった時代など想像がつかないであろうが、確かにそういう時代があった。もう、プラスチックがない時代には帰れないだろう。バイオ由来プラスチックは、一部使われ出してはいる。
ちょっと、ナフサについて知ったかぶりをしてみた。