超えてはいけない一線。
見えない境界線。
踏み込んではいけない領域。
日常と非日常。

手を伸ばせば触れられるほど近くにいるのに
見えないバリアがピンと張っていて
とても伸ばせる雰囲気でもなく
ピリッとした緊張感が体中に走った。

スモークの向こう側を覗きこむことはできない。
だけど向こうからは見えているのだろうか・・・。
それでも見えない先をじっと見つめる。
手が震えるほど
体が硬直するほど
緊張が体を支配する。

嗚咽と腹痛を繰り返しながら
スモークの向こう側に想いを寄せる。

手を伸ばせば触れらるほど近くにいても
周りに流れる日常の景色が私の手を止めた。
スモークの向こう側は触れてはいけない非日常。
想いが強い分、恋い焦がれている分、そこに触れてはいけない気がした。

震える手を震える手で押さえた。
一気に緊張と嗚咽と腹痛が体からスーッと抜けると
立っているのもままならないほど全身の力も抜けていった。
いろんな思いが頭と心の中で渦巻く。

スモークの向こう側は
開けてもらったときだけの楽しみにしておこう。
開かないときはただただ見つめるだけでいい。
見つめられる幸せを大切な宝物として胸にしまおう。

踏み込めないから想いが募る。
見えない境界線が理性を保たせてくれる。
超えてはいけない一線を守ってこそ積み上げられる信頼感もある。
そこを忘れないでいるからこそ、
めいっぱい非日常を堪能できる自分がいる。

スモークの向こう側
そこには夢と愛と男前が今日も誰かの心を翻弄している・・・。