衣装準備のため、一番最初に台本をいただいたのは
音楽劇『金鶏 二番花』の千穐楽から10日後くらいだったと思います。


私はなんだか、胸がきゅーっと締め付けられるような思いで
ずっとちょっぴり泣きそうになりながら読んでいて

頭のなかではもう、桂さん演じる金原博士がお墓参りをして回る様子が
舞台なのに古い映画のように、
薄ぼんやりとしたノイズの入った映像で再生され、


これは面白い作品になるぞと、
ひとり静かに心震わせていました。






草創記『金鶏 一番花』
とっても好きな作品になりました。





あやめ十八番
草創記『金鶏 一番花』

2025年9月20日〜28日
東京芸術劇場 シアターイーストにて

全12公演、上演いたしました。





あやめ十八番初参加の方が多かったこともあってか
プレ稽古の時など、最初はどことなく緊張感が漂っていたお稽古場も

本稽古が始まり、どっぷりと濃密な日々を共にするなかで
活発に意見やアイディアが飛び交い、
それぞれがチームプレーで真摯に作品に向き合う、大好きな座組でした。









お稽古期間中、構成員4名で
エフエム世田谷「劇ナビ‼︎」というラジオに出演させていただき、
そこでも少しお話ししたのですが






ぜんぶを諦めない、というのが私の今回のテーマでした。






7月に上演した音楽劇『金鶏 二番花』では、

皆で頭を抱えながらアイディアを出し合って
試しては捨て、試しては捨てを幾度となく繰り返す
“演劇実験教室”のような創作の時間に、

私は自分の出番以外は、ほとんど
稽古場の片隅で衣装作業に専念しておりました。


それは間違いなく必要な選択で、
でも同時に、それでいいのか…?という思いも自分のなかであったのも事実。





だから今回は、
ぜんぶ、諦めないことにしました。









お稽古場では、できる限り私もお稽古に参加する。
もちろん衣装も変わらず全力を尽くすし、
役や作品について考える時間もしっかり作る。




自分のお芝居も、衣装も、お稽古場でも、
ぜんぶ諦めない、ぜんぶ妥協しない。






結局、お稽古中に作業をすることもあったし
稽古時間の全てに参加していた訳ではないのですが、

これは誰が発案者だったとか、ボツになったけど良いアイディアだったなとか
そういう紆余曲折をちゃんと覚えているし、

先輩方のお稽古を見て勉強させてもらったり、堀越さんからぽろりと飛び出す金言に触れたり。



やっぱりお稽古場が好きだし、
あやめ十八番のお稽古が好きなんだと思います。








その分、衣装作業は家で頑張るぞと、
前もって限界を迎えておけば、直前期にバタバタしないかも!なんて思って
はやめに極限モードになってみましたが、全然、最後までずっとバタバタでした(^_^;)





それでもぜんぶを諦めたくなかった。






他の誰でもなく、私のために。
私がそうしたいから、そうする。



いま出来る精一杯で、極限まで頑張りきるという経験を
いまの私で、改めて突き詰められたのは
私にとって絶対にプラスだったと思っています。




 

 



公式Xのお稽古日誌も、担当していました!📚✍️


夜、その日のお稽古を振り返りながら
言葉を紡ぎ、写真を選ぶというルーティンが
大変ではあったけれど、振り返ってみるとなんとも愛おしい時間だったなぁ。


稽古日誌もご覧いただきながら、開幕を楽しみに待っていてくださったお客様の存在に
とっても励まされていました!








さち、という役をいただきました。




賢三とずっと一緒にいる少女。

賢三と、賢三の人生に関わる人たちを
ずっと見ていました。





賢三としか言葉を交わすことはないけれど、
共演者のみなさんから舞台上でいただくものはとても大きくて
というか、今これを書きながら
ほかの人たちとも会話していたような感覚さえある。



いろんな人の、いろんな声や表情をよく覚えています。





(賢三以外からは見えていないはずなのに、
ごくごくたまに、目が合っちゃったりするのが
面白かったです。笑

そりゃあ、あんだけチラチラ動いてたら
目にも入るでしょう!笑笑

終わったあと「さっき目合いましたよね😎」って言いに行くの好きだったなぁ。笑)








四人の賢三たち。
私のさちを作ってくれたのは、間違いなくこのお四方です。







桂さん。桂憲一さん。



あたたかくて優しくて、とってもチャーミングで
大好きな先輩です。



二番花のときはまったく接点がなく、
一番花では少しは関わりあるかしら…?と思っていましたが、

少しどころか、とっても密な関係性でした。


そしてきっと、二番花の賢三のすぐ隣にもさちがいたんだなぁ。

 

 



桂さんと一緒に、壮大な旅をしているようでした。
過去を振り返ったり、過去に行ったり。

桂さんって本当にすんごくて、
ずっと近くでそのお芝居に触れられたこと、
いまだに振り返っては、噛み締めています。



↑大好きな写真。

たぶん私が、台詞間違えました!と懺悔しているところ。笑








いまむー。今村美歩さん。

やっと出会えた!の気持ちでいましたが、
いまむーもそう言ってくれて、すごく嬉しかった。
ずーっと観ていた大好きな女優さん。


私のことを「さっちゃん」と呼んでくれるのが、
なんとも愛おしくて好きでした。



私のなかで、ハレー彗星のモデルにしていた動画があって、
(ハレー彗星ではない別の彗星なのですが、私にとってのハレー彗星)

稽古中、いまむーにも送ったのです。
同じ景色を見られたら素敵だなと思って。



その翌日のお稽古での、ハレー彗星のあのシーン。



私たちはいま、確実に同じものを見ているという実感があって、
こんな感覚初めてで、あの日の景色と感動は忘れられないし
そういう奇跡みたいな瞬間がたくさんありました。









しょうごさん。宮原奨伍さん。


いちばん、一緒にいた気がします。



台詞を合わせたり、一緒にお稽古をしているときに
ふっと想いを語ってくださることがよくあって、

それは賢三やこの作品についてのこともあれば、
もっと大きくお芝居のこと、人生のこと、
日常のちょっとしたことのときも。

奨伍さんの人間性の核に触れるようなその時間が大好きでした。



奨伍さんのお芝居って、宝箱みたいだなあと思っていて


次はどんな表情が見られるんだろう、どんな感情へ連れて行ってくれるんだろうと
さちと一緒に私自身も、ずっとわくわくしていました。

舞台袖からもずっと楽しそうにお芝居を見ていて、
そのキラキラしたお顔がとても印象に残っています。








ふっきーさん。藤原祐規さん。

あやめでは日替わりゲストを含めると4度目、
沈丁花を入れて5度目の共演となりました。

相手役だったり、
少年期をやったり、
日替わりゲストでは接客をして(私の入座披露の日でした…!)、
そして今回、バディに。



上:2019年『しだれ咲き サマーストーム』

下:2023年『六英花 朽葉』



何かとご縁があったけれど、
そのなかでも今回が一番密な関係性で、ずっと一緒にいたわけですが。


通し稽古の度にアップデートされていくお芝居や、アイディアを提案してくださって一緒に作ってくださる姿勢、
そしてとにかく、とにかく稽古をしていらっしゃる姿。

近しいからこそ見えたものがたくさんあって、
さらに尊敬の念を新たにしました。



お芝居の話をたくさんしました。
たくさん、してくださいました。

私はずっと、一生この人の背中を追いかけたいと思っている先輩です。








それから、お母さま。
くーこさん。藤吉久美子さん。


いつもはあみちゃんと呼んでくださるなかで、
ふとした瞬間にあみって呼んでくださることがあって、それがすんっごく嬉しくて。


まさに母のような包容力の、天使のような方でした。
針仕事もたくさん手伝ってくださって…!


本番前には、何度も台詞合わせに付き合ってくださり
本番中は、カーテンコールの曲が流れると、舞台裏で一緒に踊るのが日課でした。

いまむーと三人で。笑
楽しかったなぁ








二番花のメンバーが、観にきてくれる度に
「鶏の鳴き声、上手くなったね!」って言ってくれたんです。笑


何を隠そう、わたし、超下手でした!!!🐓🌀


下手なりにも、雄鶏の方がまだマシだったのですが、
「誰よりも早く起きて、みんなを起こして回る」鶏だから、ということで
最初に舞台上に登場して、最初に雌鳥で鳴くことになり…。


もう、家でずーーーーっと練習してました。笑
コケコケも、コケコッコー!も。
(あずみん こと、土屋杏文さんが鶏のプロで
コツを聴いたりしました。)




いつでもミスはしたくないけれど、
絶対にミスできないところってあるじゃないですか。

それが、コケコッコーと鳴くあのシーンで
感情に引っ張られすぎちゃうと下手になっちゃうのに、
溢れんばかりの感情が満ち満ちていて、そこのコントロールがすごぉく難しかったです。



一度だけ、力の限り叫んだらクラッときちゃった時があって、
まずい、倒れる……と思ったときに、
お母様の声がして、お母様の姿を見たらなんとか踏ん張れて。



コントロール出来てないじゃない、というのはさておき
忘れられない、忘れたくない感覚でした。







↓増えていく人たち









さちの衣装、めちゃくちゃ可愛くないですか!!?!?

ふんわりとした布量の多いスカート、だいっすきで
それを扱いながらお芝居するのがすっごく好きでした。




二番花しかり、
衣装からもらうものはすごくあって
そして私は衣装を美しく扱いたい、みたいな意識が強いのかもと気付きました。
衣装も役の一部、と言いますか。


どう見せるか、どう見えているか、
を考えるのが好きなんだろうな。


ヘアメイクもとってもお気に入り!
えっへん!!!🎀









今作の衣装も、二番花から引き続き
熊谷有芳さんが担当してくださいました。



私も助手として共に奮闘しておりましたが、


まず私、熊谷さんのことすっごく好きなんです。
お姉さんを感じる瞬間も、
同志!共に闘う仲間!戦友!を感じるときもあって、
すごく好きなひと。

熊谷さんに、あやめの衣装を手掛けていただけて、本当によかった。
一緒に頑張らせてもらえて、よかった。




二番花の際、最初に連絡をとったときに
熊谷さんが「情熱だけはあるタイプなので」とご自身のことをおっしゃっていて、
言うまでもなく技術や経験、知識もお持ちなんだけど


その言葉が私、忘れられないのです。



本当に、ものすごい情熱を注ぎ続けてくださいました。
一番近くで、誰よりもその苦労と知っているからこそ
私は熊谷さんの「情熱」に大きな拍手を贈りたいですし、

熊谷さんとだから、私、
ここまで頑張れたと思っています。


 

 




■賢三の半生、
■歌舞伎の家のお話(和装)、
■戦地での出来事(軍服)
が描かれた今作。


3作品分ともいえる衣装量で、
しかも軍服に関しては、総勢12人、ほぼ全て手作りなのです…!!



私たち、本当に本当によく頑張りましたね。笑


一緒にお写真とれなかったので、

二番花だけど、好きな写真をもう一度。




 


今回の衣装もいっぱい、いろんな人が助けてくださいました。


島田大翼さんにはもう、はじめから頼ると決めていたのですが
あらゆる面で思いっきり頼りまくってしまったし、
(ラムネ瓶を売っている怪しい露天商の衣装に至っては
参考画像と布をお渡しして、完全にお任せしてしまいました!
参考画像そのままの怪しさでお稽古場に現れて、稽古場全員、大爆笑でした!!笑)



和装の着こなしや、早替えに関しては
花組芝居のお兄さん達があらゆる面でアドバイスしてくださり、
今回ご出演されていない丸さん(丸川敬之さん)、おけいさん(井上啓子さん)にもたくさんご協力いただきました。


↑和装の早替え加工は、今作では制作助手で入ってくれていたやっち(内田靖子さん)に全てを委ねてしまいました。

制作作業と並行しながら、衣装でやる事ある?って聞いてくださるのです…!泣

ちなみに本番中、舞台裏の早替えサポートは、
洋さま(北沢洋さん)と、あみん(松井愛民ちゃん)が大活躍してくださいました!




そして女性キャストの皆さまが本当に、
本当に信じられないくらい献身的に全面協力してくださって

それに対して、
あみが頑張ってるからだよ、って言ってくださり
なぁんて優しいんだろうってずっとうるうるしていました。



 

 ↑「ちょっこし」どころじゃなかった!!!😭



皆さまに支えられ、助けられて、
なんとか完成したのでした。









今作での我が超大作!早替えゲートル!!!



巻かずに装着するゲートルを、設計図から手作りしました。
↓私にしか分からない計算図。笑




この世に存在しないものをゼロから生み出すべく、
試行錯誤しながら、失敗しながら、
理論上はできるはずだけど、どうなるか分からない。。。

みたいな製作期間でした。



なんだか賢三みたいかも…!と、全て終わったいま、ふと思いました。
当時はもう、分からないなりに進めるしかなくて
ただただいっぱいいっぱいだったけど。






ついに!!!
ロックミシンを買ったのです!!!!(右側)


あんまりにも大きな買い物だけど、
効率とクオリオティを求めるならばもう、これしかない!と

半分勢いに任せて、えいや!とポチりました。笑




6月末に引っ越しをしたのですが、
新居はもうずっと、アトリエのような風貌で、

L字デスクのメインの方にミシンを二つ並べて、
横側のデスクを作業台にして、
すぐ後ろにはアイロンとアイロン台を置き、

小室哲哉さんみたいになりながら作業をしていました。笑





でも本当に、ロックミシンがないと出来なかった。
買って良かったです!


せっかくだから、プライベートでも
どんどん使いこなしていきたいなぁと思います!





↑地下足袋を早替え仕様にしているところ!



熊谷さんのアイディアと設計図をもとに、
最後まで試行錯誤した狐のもけもけ衣装も思い出深いし、

やっぱり、熊谷さんの衣装プランがとっても素敵だからこそ
その実現のために駆け抜けた日々は
その大変さを優に超えてくるくらい、愛おしい日々でした。






↑熊谷さんの力作!!軍服!!!



千穐楽を終えてから、
すぐに舞台『チ。』の現場に入っていたので、
毎晩少しずつ、ゆっくりと片付け作業をしていたのですが

ゆっくりと、時間をかけて作品とお別れしていくみたいで
なんとも愛おしい時間だったなぁ。


↑略帽の布は後からつけているのですが、

私がどうしてもこだわりたくて、シルエットを二番花からアップデートさせたのでした!














先日、車折神社へご挨拶に伺いました。
パンフレットにも書いた、私のパワースポット。

東海道新幹線に乗って。


 

 



2年前にはじめて伺い、玉垣を奉納してから
まもなく満願を迎えるので、
10月中に行きたいなとは思っていたのですが、

急にくる「今だ!」によって、
前日の20時頃に新幹線と宿を取りました。笑






一泊して、
午前中、朝イチバンに伺ったのですが
なんだかすごく、感慨深い気持ちになりました。

 


あやめ十八番への入座が決まって、その少しあとにはじめて訪れ、まもなく2年。
2年間、とってもいろんなことがありました。




2年前のわたしには、
想像できなかった今がある。





入座披露で、どんな俳優になりたいかを訊かれ
「想像できないところへ行きたい」というお話をしましたが


ちゃんと、想像できないところにいる。気がしている。










さぁ、ここから2年。




いま、どうやら私は、新しくなろうとしていて
いろんな人に、いろんなお話を聞いて

真綿のようにどんどんと吸収しているところです。




25歳、もう若くなくなってきたなと思ってしまうのですが、でも、それでもまだ
スポンジみたいに新しいことを入れていけるんだ!と改めて思ったし、

どんどん、どんどんいれていきたい。




臆せずに、突撃していきたいし
新しく得たものを、ちゃんと自分のものにしていきたい。






わくわくしているんです。

多分きっと、変わる。
変わろうとしているし、実際もうすでに少しずつ、変わってきてる。





これまでの、というかここ2年間の集大成が
金鶏なのだとしたら、


次の2年間、
どこまでいけるだろうか。
どんな頑張り方ができるだろうか。


すごーーーくワクワクしています!





平等に24時間しかない、この限られた時間で
何が出来るのか。




大切に、丁寧に生きていきたいなぁと思います。










もしもあなたのいるとこが
自分の掌も見えぬほど
深い深い暗闇なら
そこはきっと夜明け前
夜明け前ほど暗くなる


二番花の、♪半分半分 という曲の歌詞です。



一番花でもこの曲のメロディーがいくつかの場面で使われていて、
私がいちばん心に残っているのは、

賢三と戸柄先生のシーン。



研究の成果がなかなかあがらないなかで、
それでも自分の信じる道を進んでいくのだと語る賢三の言葉の裏でこの曲が流れていて、

徐々に明るくなっていく照明に照らされた賢三の背中を見つめるのがとても好きでした。







いま、私は目の前がちょっぴり暗くって、
すこし遠くの灯りを見つけて、そこまで歩いていきたいけれど
今いる場所と、その灯りとの間はまだ暗い。
どこに道があるのか、はたまた作れるのか、手探りの真っ只中。


そんな自分に焦ったり、不安になったりもするけれど





でも、そうか。
いまはきっと夜明け前なんだ。




 

 



信じて、突き進みます。

だってさちは、金鶏は、暁を告げるのだから。













長い長い文章を
最後まで読んでくださってありがとうございます。

ブログは、私にとって「いま」を残しておく記録で
自分のなかだけに秘めておきたい言葉や、ここにはまだ書けないことも勿論あるけれど、
それでもなるべく全てを書いて、発信したいと思っています。

舞台を観に来ていただくだけじゃなく、
届けられるものは、届けたい。
惜しみなく出していきたい。



役者は、板の上がすべて。
それもそうだし、でも、板の上に立つ私を観に来ていただけるのは決して当たり前のことじゃないから。
板の上に立つ私をまた観ていただけるように、
「いま」を、私自身を、伝えていきたいです。


ぜひまた劇場でお会いしましょう。
読んでくださってありがとうございました。