(自分の推しとかこの雰囲気この子っぽいなって思い浮かべながら読んでください🙌🏻)
投稿し忘れてました完全に笑
もうホワイトデーだよって!!
高校に入学したてで校内で迷子になっていたわたしに声をかけてくれたのが先輩だった。紳士的で優しくて、ひとつ上だと思えない程大人で。でも堅苦しくなくてとても丁寧に道案内をしてくれたりさりげなく名前を聞いてきたり、去り際に下の名前で呼んでくれたりするところに慣れを感じて感心するしうっかり好きになっちゃいそうになった。今思えば慣れを感じる言動にモヤモヤしてしまうほどには好きだったのだと思う。
もちろん、その言動が自分だけのものだなんて都合のいいことがあるはずもなく、先輩は男女関係なくとにかくモテる人だった。好かれない理由がないを具現化したような人、そりゃあみんな好きになるよな、なんて他人事だと思いたいけれど自分の気持ちの強さに呆れ返るほど気づいた時には先輩のことが大好きだった。自分の気持ちを伝える勇気なんて持ち合わせていないのでそっと影から見つめるだけの一、先輩ファンだった。
バレンタインシーズンが到来すると女の子たちは浮き足立つし、そのほとんどが先輩目当てなのでやっぱり凄いな、と思いながらも苦手ながら気合を入れて作ってしまったチョコを慌てて隠した。まぁ、渡せる機会もないしなぁ、お兄ちゃんにでもあげるか、なんて考えながら一人寂しく帰っていると数メートル先に毎日目で追ってしまう背中が見えて先輩だと気付くには時間がかかるはずがなかった。自分の下校ルートが先輩と同じかもしれないと突然舞い降りた偶然に歩くスピードが早くなるし、鞄の中のチョコの扱いも途端に丁寧になった。近づいてみると先輩は両手にとんでもない量のチョコが入った紙袋を持って歩いていて、なけなしの勇気もすぐに萎んでしまって怖気付いたとき、突然先輩は近くのゴミ箱に近寄ってなんともないようにたくさんの女の子が気持ちを込めてつくったであろうチョコを棄てた。あまりの衝撃に世界が斜めに傾いた。違う人かもしれないと思いたいけれど、やっぱりわたしの大好きな先輩で。立ち尽くすわたしに気づいたのかいきなり振り返った先輩と目が合う。鋭い目付きといつもより低い声、まるで優しさの欠けらも無い表情と共に
「今の見たよね?」
と問われてしまったわたしは、
「誰にも言いません」
そう小さく答えた。私のあまりの怯えように、先輩も怯んだのか「ごめん、そんなに怖がらないで」なんて言っているけれど、恐怖と共に悔しさとか憎らしさまで湧いてきた。気付くと先輩は消えていて、なんであんな人好きだったんだろう、と自分にも腹が立ってきて何も知らないお兄ちゃんにその日は思い切り八つ当たりした。夜はやっぱり眠れなかったし、馬鹿みたいにあれは先輩じゃなかったんじゃないか、なんて考えてしまうのだった。
翌日、みんなが先輩に黄色い歓声を上げているのを横目になんとも言えない感情になった。もちろん誰にでも言えないことの一つや二つあるだろうし、もし先輩のそんな姿をバラしてしまったとしても、きっと誰も信じない所か、相手にもされないだろうな、なんて思いながらやっぱり先輩を目で追う癖はやめられなかった。この日から、自分の仮面が剥がされるのを恐れた先輩が偵察のように逐一クラスに顔を出し始めるからあらぬ噂まで立てられる始末、
「誰にも言いませんよ」
「信用出来ない」
「もし言ったら島流しにでもしてください」
「いつの時代だよ」
と面白そうに笑う姿はやっぱりかっいいのになぁ、とこっそり忍び込んだ立ち入り禁止の屋上で先輩の隣、そんなことを思った。どんな酷い目に合わされるのだろうとビクビクしていた私の予想を裏切り、先輩は何もしてこないし、ますますかっこよく見えてきてしまうから、多分わたしはおかしくなってしまったんだと思う。
「女の子が嫌いなんですか?」
「女の子は好きだよ」
「じゃあどうしてあんなこと?」
先輩は言い逃れ出来ないと察したのか
「甘いものが苦手で」
と呟いた。
「それだけ?、たったそれだけの理由で?」
言い終わってしまってからまるで責めるように言ってしまったことに慌てて謝ろうとするとわたしの言葉を察するように
「ごめん、本当に苦手なんだ」
そう言うと、以前付き合っていた彼女が束縛の激しい子だったこと、何かある事に甘すぎるお菓子を持って来ては食べることを強要されていたこと、もともと甘いものが得意じゃない先輩がやんわり断るとヒステリックになって手の付けようもなかったことをどこか遠くを見るように話してくれた。
「そんなことが…なら断ればいいのに」
「断ったら面倒なことになりそうじゃん」
「…たしかに」
それでもホワイトデーにはきちんとひとりひとりにお返しするんだから律儀なのか、タチが悪いのか分からない。
それからハロウィンやらクリスマスやらお菓子が絡むイベントは面倒だからとかいう理由を付けられて何故か先輩の都合のいい彼女(仮)に任命された。彼女がいると気兼ねなく断れると断言されてしまったし、それで先輩の負担が少しでも減るなら…って納得いってないけど了解してしまう。
そんな関係が一年続いている。まるで彼女のように優しく接してくれるし本当に勘違いしてしまいそうになるほど優しい笑顔を向けてくる先輩になんとも言えない気持ちになったり、でも本当の気持ちを言ってこの関係が崩れるのは…なんて考えたり。でも今日できっと終わり。
先輩が三年生になって最後のバレンタインデーの帰り道、極端に減ったチョコを横目に
「もうわたしの役目も終わりですね」
あっけらかんと聞こえるように、寂しい気持ちを隠すように言ってしまった自分の意気地無さに泣きたくなった。
隣で聞こえる先輩の靴の音がいきなり止む。
「役目が終わりってなんで?」
なんてとても不思議そうに聞いてくる先輩に拍子抜けした。
「え?だって(仮)だし」
「は?まだ気にしてんの?」
「先輩が言ったんじゃないですか、(仮)だからなって」
先輩の目が泳いでるのなんて初めて見た。照れくさそうに近づいてきて急に抱き締めてあんまり意地悪しないでよって言う先輩はやっぱりずるい。不覚にもドキドキしちゃうしやっぱり敵わないなぁと背中に手を回したら耳元で
「好き」
って、わたしがずっと言いたかった言葉、言われたかった言葉。からだが離れてまた目が合って、それから、同じ高さの目線になった先輩が
「俺の彼女になって」
って言ってくるので泣きながら抱きつきました。