1) 診断の難しい患者さんの半数以上は小児で、また4割が神経症状が中心の病気、1割が筋肉や骨の症状が中心の病気だった。たしかに、小児の多くの神経症状は診断が難しく、また全身の筋肉痛なども正確な診断が難しいケースが多い(個人的感想)。
2) コンソーシアムに相談する前に、3割の患者さんがエクソーム解析を行っており、米国での遺伝子診断の普及度を示しているが、同時に一施設だけではゲノム配列がわかっても正確な診断を下すことが難しい場合も多くあることを示している。
3) 一人平均200万円をかけて徹底しても、遺伝子解析が終わった382例のうち132例(35%)しか診断がついていない。
4) そのうち、タイトルからわかるように、ゲノム解読により診断がついた例は74%もあり、遺伝子解析の重要性を物語っている。42%はタンパク質に翻訳される遺伝子部分のみを解読するエクソーム解析で、24%はゲノム全領域を調べる解析で診断がついている。全ゲノムを行った中の半数はエクソームだけでは診断がついていない。
5) とはいえ、専門家が集まり議論することで、ゲノム解析を待たなくても2割程度は遺伝子に頼らず診断ができる。
6) 多くは病気の原因としてすでにリストされていた遺伝子の変異による病気だったが、16例の全く新しい病気も発見された。このうち15例はこれまで知られていない遺伝子の変異による病気だった。
7)新しい遺伝子の中には、病気との関わりをショウジョウバエを用いた機能的実験で明らかにできた例もあった。
8) 診断には平均で200万円近くの費用がかかっているが、診断を求めて転院を繰り返したり、間違った治療を受けるコストから考えると、全体の医療費は下げられるという試算も提出している。
他にも新しい病気についてより詳しく述べられているが割愛する。
個人的印象だが、米国の医療界が診断をつけられない病気があるという事実に真剣に向き合っていることがよくわかった。さらにゲノム解析が希少疾患診断の最初の選択肢になっている事を改めて思い知った。おそらくどちらも、我が国の取り組みは10年遅れているのではないだろうか。だとすると、病名を求めて医療機関を点々としなければならない患者さんの苦労はまだまだ続きそうだ。
図1 細胞核内におけるゲノムの配置の模式図
一つの細胞に含まれるゲノムDNAを直線的に伸ばすと2mほどになるが、これがわずか直径10μmの細胞核内にコンパクトに収められている。遺伝子が存在しないセントロメア、ヘテロクロマチン領域は、直線的には、遠く離れていても、細胞核内では近接して存在していることが、今回明らかになった。
