クリスの荷物は、たった二つの鞄だけだった。
叔母さんから譲り受けた、ところどころ色の禿かかった古くて小さなスーツケース。
それらの中には、衣類が少しと、今まで使っていたテキストの類い。それだけ。
ここに来る前に、いらないと考えたものはすべて捨ててきたのだ。
「君が来るって決まってから、荷物が届くかなってずうっと待ってたんだけど・・・
他に何かないのかい?」
「本当にこれだけなの」
とっくに冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干すと、一瞬背中がゾクゾクした。
『ホントに何もないのね。女の子じゃないわよ!あんた、ここに何年いたと
思ってるの?』
叔母は呆れたように溜息を洩らしていた。両手を腰にあてがいながら、彼女は
深く息をついたのだった。
ベッド。タオルを巻いた枕。色の褪せた、オレンジ色のカーテン。壁に備え付けの姿見。
学校に行く時用のリュック。小さなタンス。履き古したコンバースのスニーカー。
自分の部屋にあった物は、これらがすべてだった。
――あぁ、もうひとつ。スヌーピーの目覚まし時計。クリスマスにもらったものだ。
一生をそこで過ごすわけじゃない。いつかは出て行かなくてはならない日がくる。
そう信じてたから、余計なものは何一つ置かなかった。
たまに貰っていた小遣いもほとんど手を付けることなく封筒に入れてタンスの中で
貯めていた。(叔母さんのバースディと、クリスマスにはプレゼントを買うため、
その時だけは封を開けたけれど)
…これからは、目の前にいる新しい<父>と――兄か弟?にプレゼントを買って渡すの
だろうか。そして、彼らも私に――
「ね、クリス。必要なものは何でも買ってあげる。現地調達、てやつだな。あまりにも
殺風景な部屋ってのも・・・寂しい気がするんだが」
そう言って彼は「明日、買い物に行こう」と切り出し、とりあえずまかせるよう、
クリスにウインクして見せた。
叔母さんから譲り受けた、ところどころ色の禿かかった古くて小さなスーツケース。
それらの中には、衣類が少しと、今まで使っていたテキストの類い。それだけ。
ここに来る前に、いらないと考えたものはすべて捨ててきたのだ。
「君が来るって決まってから、荷物が届くかなってずうっと待ってたんだけど・・・
他に何かないのかい?」
「本当にこれだけなの」
とっくに冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干すと、一瞬背中がゾクゾクした。
『ホントに何もないのね。女の子じゃないわよ!あんた、ここに何年いたと
思ってるの?』
叔母は呆れたように溜息を洩らしていた。両手を腰にあてがいながら、彼女は
深く息をついたのだった。
ベッド。タオルを巻いた枕。色の褪せた、オレンジ色のカーテン。壁に備え付けの姿見。
学校に行く時用のリュック。小さなタンス。履き古したコンバースのスニーカー。
自分の部屋にあった物は、これらがすべてだった。
――あぁ、もうひとつ。スヌーピーの目覚まし時計。クリスマスにもらったものだ。
一生をそこで過ごすわけじゃない。いつかは出て行かなくてはならない日がくる。
そう信じてたから、余計なものは何一つ置かなかった。
たまに貰っていた小遣いもほとんど手を付けることなく封筒に入れてタンスの中で
貯めていた。(叔母さんのバースディと、クリスマスにはプレゼントを買うため、
その時だけは封を開けたけれど)
…これからは、目の前にいる新しい<父>と――兄か弟?にプレゼントを買って渡すの
だろうか。そして、彼らも私に――
「ね、クリス。必要なものは何でも買ってあげる。現地調達、てやつだな。あまりにも
殺風景な部屋ってのも・・・寂しい気がするんだが」
そう言って彼は「明日、買い物に行こう」と切り出し、とりあえずまかせるよう、
クリスにウインクして見せた。
