それまでは大きな神社の境内社であるお稲荷にしか参拝していなかったが、
どこもフレンドリーで、他のお稲荷に行っても怒ったりはしないというのが分かってきた。
ふと、自分の住んでいる場所の氏神様にまだお詣りした事がない事を思い出し、 行ってみる事にした。
田んぼと農道しかない場所に垣根に囲まれた薄暗い氏神神社があった。
車から降りると、激しく喧嘩するカラス2羽がわたしの頭をかすめて飛び回ってきた。
神社の真横の墓地が少し暗くて気になった。
宮司の家が境内にあるので、毎日管理をしている様だが、
社が古く、修理する費用が無いのだろうと思った。
主神はくくり姫である。
「お詣り遅れて申し訳ありませんでした。これからも地域を災害から御守り下さい。」
と祈った。
すぐ横にさらに小さくボロボロのお稲荷様のお社があった。
いつも通りにお詣りをしたが、
だんだん気持ちが暗くなってきた。
友達が自分の悪口を言いふらして、睨み付けてきた時のような辛く悲しい気持ちになった。
「このお稲荷は私に怒っているのではないか?」
家に帰っても、暗い気持ちが晴れず、氏神のお稲荷の事が頭から離れなくなった。
次の日、 私は机の足に激しく爪先をぶつけて血豆が出来た。こんな事は何年ぶりだろう。
どうしても、氏神稲荷の仕業の気がしてならない。
これはお稲荷からの負の感情をなんとか払拭しなければならない。
私は日蓮宗の仏壇に座りお題目をあげながら、氏神のお稲荷に意識を繋げてみた。