さくらももこのエッセイ「もものかんづめ」をご存じだろうか。タイトルの可愛さからは想像もつかないぶっ飛んだ面白さ。第1話が学生の頃、水虫に罹った話。他にも睡眠学習機を偏愛する話など、久しぶりに声を上げて笑ってしまった。
で、思った。「ももこさんと私は同類だ」。
ということで、「もものかんづめ」ならぬ「まゆのかんづめ」をお届けする。
7月9日(ヌエベ デ フリオ)はアルゼンチンの独立記念日。私のお誕生日はアルゼンチンの独立記念日なのである。草彅剛くんとも同じで、もう少し若いころは「つよぽんとお誕生日同じ♡」に一人で萌え萌えしていた。
昨日、カフェティンに行く前にお仕事をしていて、そのときからイヤな予感があった。電話口の相手の名前を確認する際、「〇〇クミコです」と言われた。
クミコなのかクニコなのか、電話ではとても紛らわしい。世の中、滑舌がいい人ばかりではないし、もともと聴力が弱めの私は、こういう聞き取りが苦手。
「クニのクニです!」って言われたって、どのクニなんだよ。「国」も「國」も「邦」もあるでしょうが。「で、どんなクニですか? クミですか?」って聞き返したら、「さっきからクニって言ってんじゃん!」って言って電話を切られた。
私くらいの年になると、もはやお誕生日は自分で盛り上げるしか術がないので、カフェティンのミロンガに乱入することにした。さらに、自分で自分をアゲようと歌を歌おうと考えた。最近、タンゴの歌を練習しているのだ。
ミロンガ主催のバイオリニストの美穂さまに無理を言って、歌わせてくれと無茶を言う。
やさしい美穂さんは、「はいはい~。祭りじゃ~!」とテキパキと話を進めてくれた。
タンゴ・クワルテートで歌わせて頂くため、楽譜を用意する。私は声が低いので、大抵の楽譜のキーが合わない。しかも、ちゃんと音楽理論を勉強していないので、「キーはGね♡」と言われても、さっぱりわかんない。わかるような振りしてたけど。
音符を見ながら、歌い出しの最初の音をスマホアプリのピアノで確認して、なんとか歌えそうな歌を2曲お願いした。
何度か、レッスンで歌ったことがあるし、これならまぁ大丈夫ちゃうかな。
1曲はまあまあ歌詞を覚えているけど、新曲の方の歌詞が全然覚えられない。数年前なら5日くらいあれば、なんとかなったのに。脳細胞がもう残り少なくなっているのだろう。
不細工だけれど、歌詞を見ながら歌うことになった。
いざ!カフェティンへ! ここんところ忙しくて踊りに行く暇もなく仕事をしていたので、嬉しい~♡。知った人が沢山来て、久しぶりに会う人も多くて嬉しい。わぁ、本当に嬉しい。
バンドの皆さんによろしくお願いしますとご挨拶。ミロンガ前でリハーサルもせずぶっつけ本番で臨むことに。これが、これが、ほんまにあかんかった(泣)。
生演奏の第2部。いよいよ、私が歌う番が来た。きゃあ~。
お誕生日なので、ケーキも準備してくれた。わぁ~超嬉しい♡♡♡。
ローソクを吹き消して、いよいよ!!!である。
ジャーン!演奏が始まった。あれ? ちょっと低いねんけど。
レッスンのとき、同じ楽譜を見て先生がピアノで弾いてくださったキーと違うような。
…!
結果は、どへー。
素晴らしいタンゴ・クワルテートを前に、何としたことか。
みんな、ごめん。ごめんなさい。ほんとうにごめん。
泣きたい。
でも、無慈悲なことにステージは続く。1曲にしといたらよかったなぁ。
やるしかない。気分はもう、知覧から旅だった特攻隊員である。
おかあさん、まゆまゆはいってきます。(どこいくねん!)
終わった。
照れ隠しで、飛び跳ねながらステージから立ち去る。
タンゴ仲間の皆様、クワルテートの皆さま、本当に申し訳ないことをしました。
祭りだから、許して~~~~~! 平にひらに~。
自分で言って、自分で失敗したのだから、気持を持っていくところがない。
でも、本当にやさしいから、こんな私でもダンスに誘ってくれる(泣)。
ダンスだけにしといたら、よかったのに。
そんなにダンスもうまくないけど。
なんつー誕生日だよ!
泣きたい。
それでも時間は過ぎ、ミロンガはお開きに。
こんなアホな私の誕生日におつきあいしてくださった皆さまにお礼を言って回る。
タンゴのお友だちは皆、やさしいなぁ。
中には「アホか!」って思ってる人もいたと思うけど(すみません)。
雨上がりの大阪は、水中を歩いているぐらいじっとりと蒸し暑い。
久しぶりにタンゴを踊った汗と、歌ったときの冷や汗と、なんとも言えない汗が体にまとわりついて、体中がじとじと。
それでも、久しぶりにみんなに会えて、タンゴも踊れて、すっごく嬉しかった。
そういう意味では、とても、とてもいいお誕生日…でした。
みんなのおかげ。人は一人では生きられない。
今日は、お誕生日ミロンガだから、背中がばっくり開いたタンゴドレスを久しぶりに着てみた。このドレスを着るときは、ストラップがない必殺兵器「ヌーブラ」をつける。
朝、起きてヌーブラを付けて、流石にそれだけで仕事するのも何なので、通常通りブラジャーを付けた。これなら着替えるときにラクだから。
家に帰って、ヌーブラを外したら!!アンダーバストのところが赤くなって、水ぶくれができている。…!
普段、しないことをするからこんなことに…。
泣きたい。
また、泣きたい。
お誕生日狂想曲は終わった。
教訓。リハは絶対やったほうがいい。
でも、歌の練習は続ける。懲りないヤツ。