まず基本的なことですが、

   医師法第17条 「医師でなければ、医業をなしてはならない」   という決まりがあります。


『千葉県がんセンターで、外科手術の際に歯科医が資格のない麻酔をした』

ということですので、これは医師法違反です。歯医者さんが、外科手術の麻酔をしてはいけません。

ではなぜ、そんなことをしたのでしょうか?


その前に、歯科医の業務の範囲について、、、。

歯科医は、虫歯の治療をするだけではありません。矯正、インプラントなどもあります。それだけではなく、口腔外科という分野があり、顎口腔領域の手術を行います。顎の骨を切ったり、舌癌の手術をしたりします。また、口腔の悪性腫瘍が頚部リンパ節に転移している可能性があれば、それを切り取る手術もします。さすがに、それはやり過ぎだという批判もありますが、口腔領域の病気の治療ということで、違法にはならないようです。また、同じように歯科麻酔という分野があり、歯科医であっても、顎口腔領域の治療のためであれば、全身麻酔をしても違法ではありません。


続きはまた、、





















産経新聞のニュース 7月29日

県がんセンター無資格麻酔事件 容疑の部長と歯科医を書類送検

 千葉県がんセンターで昨年、外科手術の際に歯科医が無資格で全身麻酔を行ったとされる問題で、県警環境犯罪課などは29日、医師法違反(無資格医業)の疑いで、麻酔業務などを管理していた同センター手術管理部長の男性医師(47)=市原市=と、同センター勤務の男性歯科医(38)=千葉市緑区=を書類送検した。

 同課によると、採用後の半年間に7~85歳のがん患者計83人に全身麻酔などを行っていたとみられる。2人とも「国のガイドラインにのっとっており、違反行為には当たらない」と容疑を否認している。

 送検容疑は昨年5月28日から同10月15日までの間、がん患者の男女10人の外科手術に参加し、歯科医に認められていない全身麻酔を施したとしている。

 厚生労働省のガイドラインでは、研修届の提出などの条件を満たせば、患者側の同意を得た上で、歯科医が研修目的で全身麻酔などを行うことが可能とされている。しかし、同課によると、この歯科医は研修医としての登録をせず、患者からの同意も得ていなかったという。

 同センターの中川原章センター長は「みなさまに心配と迷惑をかけ、誠に遺憾。当センターでは、そのようなことはないと考えているが、捜査には誠意を持って協力する」とコメントしている。

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解説は明日。


2011年7月4日 読売新聞の記事

3病院受け入れ拒否73歳死亡、「たらい回し防止基準」不備

すでに患者5人 / 整形外科医不在 / 手術直後だった


 軽乗用車にはねられた富山市の女性(73)が、市内の3病院に受け入れを断られ、搬送先の高岡市内の病院で死亡した問題で、県は2日、富山市内の5総合病院の院長らを集めて緊急の連絡会議を開いた。

 「たらい回し」を防ぐため、県は今年4月から、新しい受け入れ基準の運用を開始したばかり。「基準が絵に描いた餅になっている」などと厳しい声も相次ぎ、医師不足や、基準の周知不足などの課題が浮き彫りとなった。

 受け入れを拒否したのは、輪番制でこの日夜間救急を担当していた富山市民病院と、県立中央、富山大付属の両病院。理由について「すでに救急患者を5人受け入れていた」(富山市民)、「整形外科の専門医が不在だった」(県立中央)、「医師が手術直後で、ベッドも満床だった」(富大付属)などと説明した。

 しかし、新基準では、「照会回数4回以上」か「医療機関への連絡開始から30分以上経過」した場合、富山医療圏内では、重篤患者向けの3次救急医療機関の県立中央病院が受け入れるか、搬送先を調整することになっている。

 このため、出席者から「受け入れられない場合があるから、3次のシステム(新基準)を作ったはず。それが機能しなかったのは、周知不足など病院にも責任がある」などと、県立中央病院へ批判の声が上がった。

 県立中央病院の飯田博行院長は「3次病院であっても輪番日以外に、当直以外の多くの医師を院内にとどめておくだけの人的余裕はない。今回、輪番日でないと手薄になってしまう弱点が出たのではないか」とし、「救急医療の『最後の砦(とりで)』として、早急にスタッフを招集するなど、連絡態勢を整えたい」と述べた。

 県消防課によると、女性は先月30日午後7時25分頃、富山市の県道を自転車で横断中に軽乗用車にはねられた。救急隊の現場到着時は意識があったが、富山市民病院のほか、県立中央、富山大付属の両病院も相次いで拒否。開始から約20分後の6回目の照会で、隣の高岡医療圏の厚生連高岡病院への受け入れが決まり、女性は搬送されたが、事故から約3時間後に死亡した。

===========引用ここまで========


まず、亡くなられた患者さんのご冥福をお祈りします。

また、軽乗用車の運転手さんにも同情します。命が助かっていれば業務上過失傷害のところが、過失致死になってしまいました。


自分の病院の救急が忙しい時に、超重症の外傷患者の受け入れ要請。テレビドラマのカリスマ救急医なら、スタッフの反対を押し切って、独断で患者を受け入れ、迅速に最善の処置をして危機一髪のところで無事救命。ハッピーエンドとなるところですが、実際はそううまくいきません。対応する医師が処置中、手術中などで誰もいない、院内に輸血がない、検査技師が他の患者の検査中、などなど。

無理して受け入れたばっかりに助かる命を救えなかった、それほど混んでいない他院にまわせば助かったかもしれないという可能性は充分ある。

人の命は尊いものである。だからこそ、混んでいる救急病院が、イチかバチか、あるいは「何とかなるだろう」で患者を受け入れるのは、厳に慎まなければならない。余力のある他病院に回してもらうべきなのである。

しかし問題は、頼みの他病院も混んでいる場合。現場の医師には、自分の病院と他の病院のどちらが、より忙しいのかわからない。無理して患者を受け入れた方が、救命の可能性が高いのかどうかわからないのである。

それでは、救急隊が悪いのか?もちろん、救急隊の対応には何の問題もない。救急隊にだって、どの病院がどの程度の余力があるかなんてわかるわけがない。


では、どうすれば?

救急医療というのは、実は、道路、水道、電気のようなインフラと同じである。充分に整備されていれば、必要な時に必要なだけ利用することができる。利用者が少ない間は貧弱なインフラでも気がつかない。しかし、需要は一定ではないので、利用者が増えた時に破綻する。破綻すれば、人命にかかわる。今回のようなことが起こるのは、救急医療が充分に整備されていないかである。

道路を造れば建設業界が潤う。業界からは、たっぷりと政治献金が議員たちに贈られる。政治家たちは、道路建設にたっぷり税金をばらまく。こうして、めったに車が通らないような田舎の農道まできれいに舗装される。

一方、医療にはお金が回って来ない。公立病院のほとんどは、多額の赤字をかかえている。そしてその中でも救急部門というのは、究極の赤字部門である。医師、看護師、薬剤師、検査技師、レントゲン技師を当直(夜勤)させるが、救急利用者から病院に落ちる金銭は微々たるものである。

つまり、救急医療は税金で支える以外にないのである。それをわかっている知事、議員、市町村長のいる地域では、こういった「たらい回し」事件がおこりにくく、道路、ダム、護岸工事などにばかりに税金を使う自治体では、怖くて病気にもなれない、けがもできない状態になるのである。


富山県はまともな方だと思っていたんだけどなあ。