小説について
それでは本編をどうぞ♪
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夢を見た。
白い部屋の夢だ。
綺麗な青空が窓から見える。
青空を背に、白い服を着た女の人がベッドに座っていた。
その人は小さかった僕に優しく微笑みかけてくれた。
***
パチッと目が覚める。
懐かしい夢を見た気がするなぁと思いつつ、瞬はベッドから起き上がった。
間宮 瞬(まみや しゅん)。大学一年生。
進学を機に一人暮らしを始めている。
慣れない生活やアルバイト、勉強に追われるうちに、季節は汗ばむ陽気をはらんでいた。
瞬は寝起きの頭で本日の予定を思い出す。
(・・・え~っと、今日はバイトもないし、衣替えとか部屋のことも先週やったから・・・、よし、何も無いな。)
じゃあ今日は何しようか、と朝食を食べながら考える。
(そういえばこの町のことよく知らないよな・・・)
瞬にとって今住んでいる土地は初めての場所ではなかった。
幼い頃に住んでいたのだが、十年以上経っていたためかあまりよく覚えていなかったのだ。
(引越し前に確認はしたけど、病院とか見とくか。)
そう決めると瞬は残りの朝食を食べ、出掛ける準備を始めるのだった。
瞬が今住んでいる町は海から少し離れた場所にある。
そこそこ交通の便がよく大学以外の大きな施設は少ないが、町の東側には寄り添うように連なった小高い二つの山がある自然にも恵まれた町だった。
あまり他と変わらない町だが、山の上にある神社はこの町の中で一番古い場所だった。
二つの山の高い方の山の上にある神社は、上に上がる階段の両脇に桃の木が植えられており、階段の造りが雛壇に似ていることから雛神社と呼ばれていた。
低い方の山の上は小さな広場になっていて、ここからだと少し離れた海も見渡すことができた。
瞬は一通り町を見てから、山の上の広場にあるベンチに腰かけていた。
「う~っん・・・、ここはこんな感じだったかなぁ~。気持ちいいけど。」
伸びをしながらさっきまで見てきたことを思い出す。
引越し前にもらった資料や地図で気になったところを歩いてみたが、知っているような知らないような何とも言えない感覚だけが残っていた。
海からなのか、誰もいない広場に涼しい風が吹く。
雲一つない晴天の中、歩いて火照った体がゆっくり冷やされていくのがとても気持ちよかった。
(今は・・・、お昼過ぎか。明日も休みだし、帰ってもう一回寝るか。風も出てきたし。)
雛神社への入り口は低い山とは反対側にあり、広場からは神社は見えず緑に覆われた坂しか見えなかった。
その草木が風で激しく揺れ、カサカサと大きな音をたて始める。
瞬は風邪をひくかもしれないなと立ち上がる。
その時だった。
ピタッと風が止み、瞬の周りに濃い影ができた。
「?」
束の間、状況を把握することができずに動けないでいると、その影はゆっくりと移動する。
この時初めて影だとわかり、瞬はゆっくりと顔を上げた。
(魚?・・・、いや、最近あれをどこかで・・・・鯉のぼり・・・・、鯉か!)
そこには瞬の背丈よりも大きな鯉が、水の中のように空を泳いでいた。
つづく。
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お読みいただきありがとうございました♪
