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公的年金の財政検証結果が公表された。少子高齢化で給付水準はどこまで下がるのか、年金の機能が維持できるのかを確認し、制度の見直しを考える材料だ。課題を直視し、議論を深めたい。
検証は5年に1度で、新しい人口推計や経済見通しを踏まえ、複数のケースを想定して給付水準を試算した。
政府が目標にする「成長型経済移行・継続ケース」では、会社員の夫と専業主婦の「モデル世帯」で給付水準が今より6%程度下がる。成長率や労働参加が伸び悩む「過去30年投影ケース」では、2割程度低下する。いずれも前回の検証の類似ケースより減少幅が小さくなった。
5年前より出生率の見通しは悪化したが、働く高齢者や女性、在日外国人が増え、積立金の運用も好調だったため、見通しが改善した。
ただ、前回同様、基礎年金の給付水準は大きく減る。政府目標ケースで1割、過去30年投影ケースでは3割も下がる。低年金の人への影響が大きく、放置できない。
政府は従来、(1)厚生年金に加入しやすくする(2)厚生年金のお金の一部で国民年金(基礎年金)を底上げする(3)基礎年金の保険料を払う期間を20~64歳の45年に延ばして給付を増やす――などの策を検討してきた。こうした改革は避けて通れないはずだ。
にもかかわらず、厚労省は全体の見通しの改善を理由に、45年延長案の見送りを早々に表明した。国会で「新たな負担増」と追及され、与党内に慎重論が広がったことへの配慮とみられるが、そんな姿勢で改革が進められるのか、大いに疑問だ。
60歳以降も働く人は増え、45年延長案は国会の付帯決議でも検討課題とされていた。制度改正を検討する審議会でしっかり議論すべきだ。
厚生年金の適用拡大も急務だ。今回、個人単位の推計が初めて公表されたが、女性で若い世代になるほど、給付が改善する。共働きの増加などを反映した結果だが、厚生年金加入の効果の大きさの一端を示すデータだろう。
そもそも基礎年金の財政がここまで悪化した原因は、デフレ下での給付調整ができなかったことにある。ルールが一部手直しされたが、これで十分なのか。他にも、働く高齢者の年金減額の見直しなど、検討すべき課題は多い。
足元では、検証が前提にした人口推計以上の速度で少子化が進んでいる。働く女性や高齢者がこれまで同様に増え続けるかどうかも不透明だ。楽観を排し、不断の改革を続けなければならない。








