田坂 広志さんよりシェア
「反省」を通じて、「経験」を「体験」にまで高める
――:この「知的プロフェッショナル 成長の技法」の連続インタビュー
第1回において、田坂教授は、
書物で学んだ「知識」と、経験で掴んだ「智恵」を区別する
ということの大切さを語り、
経験から掴む「智恵」の重要性を語られました。
では、そもそも、
その「智恵」を、経験の中から、
どのようにして掴めば良いのでしょうか?
田坂:そのためには、まず、一つの「幻想」を捨てることです。
それは、「経験を積めば、智恵を身につけることができる」という幻想です。
多くの方々が、素朴にそう思い込んでいますが、
実は、ただ「経験を積んだ」だけでは、
「智恵を身につける」ことはできません。
実際、その事例は、我々の身の周りに溢れています。
例えば、日本企業でしばしば見かけるのが、
「会議下手」のマネジャーです。
多くの部下を預かるマネジャーになってから10年以上も経ち、
「会議を主宰するという経験」を数多く積んでいるにもかかわらず、
少しも会議の運営が上手くないマネジャーです。
何の工夫も無く、ただ会議の議事を確認し、
参加メンバーに発言を求め、部下に議事をまとめさせるだけで、
自分では何もアイデアを出さない、部下のアイデアを引き出せないマネジャーは、
周りを見渡せば、決して珍しくないでしょう。
これは、俗に言う、
会議を「仕切る」だけの「シキラー」と呼ばれるマネジャーですが、
こうしたマネジャーは、数多くの会議の「経験」から、
生産的な会議、創造的な会議を運営する
「会議マネジメントの智恵」を身につけていないのです。
また、これもしばしば見かけるのが、
「パターン営業」の営業マンです。
やはり、営業マンになってから10年以上も経ち、
無数の営業の場面を「経験」しているにもかかわらず、
営業のスタイルが「定型化」されてしまっており、
顧客がどういう人物であり、どういう状況であり、
どういう心境であるかにかかわらず、
お決まりの一つのパターン、
マニュアル的なパターンでしか売り込みができないタイプの営業マンです。
これは、言葉を換えれば、相手の人物、状況、心境に応じて
臨機応変に売り込みのスタイルを切り替えることのできない営業マンですが、
こうした営業マンは、無数の営業の「経験」から、
顧客の人物を判断し、状況を理解し、心境を感じ取る
「営業プロフェッショナルの智恵」を身につけていないのです。
このように、現実の社会を見ていると、
「経験だけは豊かだが、深い職業的な智恵を身につけていないビジネスパーソン」は、
実に数多くいます。
――:たしかに、そうしたビジネスパーソンは、かなり目につきますね。
では、「経験」を積んだだけでは「智恵」を身につけることができないとすれば、
どうすればよいのでしょうか?
田坂:「経験」を「体験」に高めることです。
日々の仕事において与えられる様々な「経験」を、
単に「そうした出来事もあった」という次元にとどめることなく、
「あのとき、大切な智恵を掴むことができた」という「体験」へと高めることです。
では、「経験」を「体験」に高めるには、どうすればよいか?
「反省」をすることです。
「反省」を通じて、「経験」を「体験」にまで高めることです。
仕事において、一つの「経験」が与えられたとき、
その「経験」を振り返り、深く「反省」することによって、
言葉にならない「智恵」を掴むことです。
それによって、「経験」が「体験」にまで高まっていきます。
――:「反省」ですか?
ただ「反省」をすることによって、
「経験」から「智恵」を掴むことができるのですか?
田坂:ええ、掴むことができます。
ただし、一つ大切なことを理解しておく必要があります。
「反省」とは、抽象的・情緒的な営みではなく、
具体的・理性的な方法を伴った「高度な技法」である。
そのことを理解しておくべきでしょう。
なぜなら、多くの人は、「反省」という行為と、
「後悔」や「懺悔」という行為を、混同しているからです。
例えば、あるプロジェクトにおいて、
自分の失敗で深刻なトラブルが起こったとき、
「ああ、しまった! 二度とこうした失敗はしたくない!」と考えるのは、
「反省」ではありません。
それは、単なる「後悔」です。
また、このとき、
「今回のトラブルは、すべて私に責任があります。私の未熟さが原因です」
と語るのは、「反省」ではありません。
それは、単なる「懺悔」です。
「反省」とは、こうした抽象的・情緒的な「後悔」や「懺悔」とは全く異なり、
「経験」から「智恵」を掴むための極めて具体的・理性的な「方法」であり、
明確な「技法」なのです。
まず最初に、そのことを理解しておいて頂きたいのです。
――:なるほど、「後悔」や「懺悔」ではなく、「反省」ですか…。
その「反省」とは極めて具体的・理性的な「方法」なのですね?
田坂:そうです。
その「方法」を理解していないと、
ビジネスパーソンは「経験」を通じて成長していけません。
そして、「反省」とは極めて具体的・理性的な方法であるため、
一人の若手ビジネスパーソンが、
これから様々な経験を通じてどれほど成長していくかは、
実は、一つの経験を「反省」する姿を見ると分かるのです。
例えば、若手社員の田中君と鈴木君が担当していたプロジェクトが
二人のミスが原因で、トラブルを起こしたとします。
そこで、二人に、そのミスとトラブルについての「反省」を語ってもらう。
そのとき、二人からどういう反省のコメントが戻ってくるか。
まず、田中君に聞くと、こう語る。
「今回のトラブルは、すべて私の責任です。
私の『仕事に対する甘さ』が、すべて出てしまいました。
猛省し、顔を洗って一から出直します」
一方、鈴木君に聞くと、こう語る。
「実は、顧客企業の担当者との間で納期延長の確認を電話で行ったのですが、
そこで担当者の快諾を得たことで安心してしまい、
追ってメールで確認し、連絡内容の証拠を残すことを怠りました。
それが今回のトラブルの原因です。
今後は、顧客との連絡内容をメールか業務書簡で確認することをルール化し、
徹底します」
この田中君と鈴木君、
どちらが今後、プロフェッショナルとして成長していくかは、明らかです。
田中君の反省の弁は、大げさな言葉で深く反省の思いを語っていますが、
実は、何も反省していない。
「私の仕事に対する甘さ」という言葉で、ただ抽象的に語っているだけであり、
具体的に「何を改善するのか」に対する踏み込みが無いため、
これでは成長しようがない。
一方、鈴木君の反省の弁は、情緒に流されず、冷静に失敗の原因を分析しています。
従って、改善策も具体的であり、今回の失敗の経験を糧として、
確実に成長していくでしょう。
すなわち、一人のマネジャーとして多くの若手ビジネスパーソンを預かり、
その成長を見てきた経験から言えるのは、次の一言です。
「反省」が抽象的な人間は、成長できない。
――:なるほど、「反省は具体的に」ということですね。
では、その「反省の技法」とは、どのようなものなのでしょうか?
田坂:「反省の技法」としては、
一般のビジネスパーソンが身につけるべき「初級レベルの技法」と、
熟練のプロフェッショナルが身につけるべき「上級レベルの技法」がありますが、
折角の機会ですので、
ここでは、「上級レベルの技法」の基本について語っておきましょう。
その基本は、
日々の仕事で経験した場面での「人間の心の動き」を振り返ることです。
先ほどの会議や営業の例で言えば、
一つの会議が終わった後や、一つの営業が終わった後に、
「あの会議において、最後に田中君が何か言いたそうにしていたが、
鈴木君の強い主張で言葉を飲み込んだな…。何が言いたかったのだろうか?
意見を求めてあげるべきだっただろうか?」
「木村君は、意見を求めても、『特に、異存はありません』と言っているが、
表情からすると、本心は、
この進め方に批判的な意見を持っているのではないだろうか?
後で、どのようにフォローすべきだろうか?」
「あの営業の場面で、こちらの技術的説明は、
お客様には分かりにくかったのではないか?
もっと分かり易く説明するには、どうすればよいだろうか?」
「お客様のあの表情は、当社の見積りを見て、予想よりも高いと感じたのではないか?
仕様を変えての再見積りを、早急にお送りしておくべきだろうか?」
といった形で、日々の仕事で経験した場面を、
心の中で「追体験」しながら、
「そこで、本当は何が起こっていたのか?」
「そこにいた一人ひとりは、何を感じ、何を考えていたのか?」
「その状況で、自分はどのようなことを語るべきだったのか」
「その状況で、自分はどのように処するべきだったのか?」
「これから、どのようなアクションを取ればよいのか?」
などの視点で、深く考えることです。
もとより、会議や営業の「反省」というと、
「会議の資料が足りなかったので、
次回からは、出席人数を確認してから準備しよう」や
「営業で、お客様をお待たせしてしまったので、
今後は時間厳守を徹底しよう」といった、
ビジネスパーソンの「初級レベルの反省」もありますが、
プロフェッショナルの「上級レベルの反省」とは、
上記に述べたように、「人間の心の動き」を振り返ることが基本です。
――:なぜ、「人間の心の動き」を振り返ることが基本なのでしょうか?
田坂:すべてのビジネスは、
経営においては「社員」、マネジメントにおいては「部下」、
営業においては「顧客」、外注においては「業者」、
職場においては「同僚」を相手にした営みであり、
いずれにおいても、「人間」を相手にし、「人間の心」を相手にした営みだからです。
それゆえ、ビジネス・プロフェッショナルの最高の「智恵」とは、
究極、「人間の心の動き」を感じ取る智恵であり、
「人間の心」に働きかける智恵のことなのです。
従って、プロフェッショナルとして高度な「智恵」を身につけたいのであれば、
仕事の「経験」を振り返るとき、
その場面での社員、部下、顧客、業者、同僚などの
「心の動き」を振り返ることが基本になります。
それが、プロフェッショナルをめざす人間が
必ず身につけるべき「反省の技法」です。
――:その「反省」は、具体的には、どのように行えばよいのでしょうか?
田坂:「反省会」を行うことです。
しかし、「反省会」といっても、色々なスタイルがあるので、
ここでは、「反省会」についての三つの技法を述べておきましょう。
第一は、「直後の反省会」です。
これは、例えば、課長、係長、担当の三人で法人営業に行ったとき、
その直後の帰り道に、電車やタクシーの中で、
先ほどの営業の場面を三人で「追体験」しながら、
次のような会話を交わす方法です。
「こちらの技術説明のとき、先方の部長が首をかしげていたのは、
説明に納得していなかったからだろうか?」
「あの課長の係長に対する話し方を見ていると、このプロジェクトについては、
実質的には、あの係長が意思決定をするのではないだろうか?」
この方法の利点は、営業という行為を行った「直後」に反省会を行うため、
記憶が鮮明であり、「追体験」が行いやすいことです。
また、このように「複数の人間」で反省会を行うと、
「自分は気がつかなかったことを、他のメンバーが気づいている」
ということがしばしば起こり、
反省の視点や解釈の視点の学び合いが起こるからです。
そして、そもそも、次々と仕事に追われる忙しい状況においては、
「明日もう一度、三人で集まって反省会を行おう」と思っても、
実際には時間が取れないことが大半です。
従って、営業訪問を行ったり、社内会議を行ったときには、
必ず、この「直後の反省会」を行うことを勧めます。
――:なるほど。「鮮明な記憶」と「複数の視点」がポイントですね。
田坂:この「直後の反省会」を行うことを習慣にすると、
営業や会議において顧客や会議メンバーの「心の動き」を感じ取る力が、
格段に高まりますので、ぜひ、実践してみてください。
前回述べた「即実践リーディング」です。
――:では、第二の技法は?
田坂:第二は、「ネットの反省会」です。
これは、イベントやプロジェクトなどが終了したとき、
その参加メンバー全員で集まって行う「反省会」です。
特に、イベントなどにおいては、
そのイベントへの参加者や聴衆の立場に立って、
「本当に満足してもらえたか」「何か不便なこと、不満なことは無かったか?」
「何か、次回に向けて改善すべきことは無かったか」といったことを、
それぞれの業務の担当者ごとに、反省メッセージを述べてもらうという方法です。
また、プロジェクトにおいては、
プロジェクトメンバー間のコミュニケーションの不足やすれ違いなどの問題を、
やはり、それぞれの担当者が、互いに反省メッセージを語り合うという方法です。
この方法が重要な理由は、
プロジェクトが上手くいかない場合は、
ほとんどの場合、メンバー間のコミュニケーション不足やすれ違いが原因だからです。
ただし、こうしたイベントやプロジェクトのメンバー間での反省会は、
全員が一同に集まって行うと、十人のメンバーなら一人五分話しただけで
一時間の会議が必要となるため、非効率的です。
従って、こうした反省会は、
社内でのメーリングリストなどを使って全員の反省メッセージを共有する
「ネット反省会」にすることが望ましいでしょう。
ただし、この「ネット反省会」の利点は、時間の効率性だけではありません。
いくつもの利点があります。
まず、「ネット反省会」は、
メンバーそれぞれが反省メッセージをメールの文章にして共有するため、
論理的で分かり易いメッセージになります。
これに対して、会議のときの「反省の弁」は、
しばしば、論理的に整理されていない情緒的なメッセージなる傾向があるため、
反省を通じて「智恵」を掴むには必ずしも適した方法ではありません。
また、「ネット反省会」では、
メンバーそれぞれが、個別に独立して反省メッセージを書くため、
会議においてしばしば起こる、
自分の前に発言した人間の「反省の弁」に引きずられたり、
その場の「雰囲気」に流されることがありません。
さらに、この「ネット反省会」において共有されたメンバーのメールは、
ある意味で、そのイベントやプロジェクトの智恵に関する
「ナレッジ・ベース」になっているため、
直接担当していない業務についても、学び合いができる方法であり、
さらには、そのイベントやプロジェクトに参加しなかったメンバーも、
学びができる方法でもあります。
ただし、こうした「ネット反省会」を行うときに避けるべきは、
反省メッセージが、「誰かのミスを批判・非難するメッセージ」になったり、
「自分の立場を守るための弁解メッセージ」になってしまうことです。
――:そうした状況は、しばしば起こりそうな気もするのですが、
それを避けるためには、どうすればよいのでしょうか?
田坂:「ネット反省会」が、
こうした状況になってしまうことを避けるために大切なことは、
その反省会を主宰するイベント・リーダーやプロジェクト・マネジャーが、
「この反省会は、誰かの問題点をあげつらったり、
失敗の犯人を探すためにやっているのではない。
イベントやプロジェクトの問題や失敗から全員が深く学び、
全員がプロフェッショナルとして成長していくためにやっているのだ」
という自覚を強く持つことです。
もし、リーダーやマネジャーが、その自覚を強く持っているならば、
メンバーも自然にそのことを理解し、
「ネット反省会」は全員にとっての貴重な成長の場になっていくでしょう。
――:なるほど、「ネット反省会」を
メンバー全員の「成長の場」として位置付けることが重要なのですね。
田坂:そうです。
すなわち、プロフェッショナルは、
「一人ひとりの個人」としても成長していけるのですが、
こうした方法を採ることによって、学び合いを通じて、
「プロフェッショナル集団」としても成長していけるのです。
――:では、第三の技法とは?
田坂:第三は、「深夜の反省会」です。
これは、いま述べた二つの技法とは異なり、
深夜、独りで行う反省会です。
具体的には、一日の仕事が終わった後、
「反省日誌」をつけることです。
私自身、かつて民間企業で営業に携わっていた時代には、
毎日夜、この「反省日誌」をつけることを習慣にしていました。
夜、独りで大学ノートを広げ、その日一日の仕事を振り返りながら、
「なぜ、こうしたトラブルが起こったのか?」
「自分の仕事のスタイルのどこに問題があったのか?」
「自分の心の姿勢の何が問題だったのか?」
「今後の成長のために、仕事のスタイルの何を改善し、
心の姿勢のどこを改めなければならないのか?」
といったことを書き連ねていきました。
こう述べると、高校生か大学生のような営みと思われるかもしれませんが、
実は、この独りで行う「深夜の反省会」は、
精神の成長にとって極めて重要な意味を持っています。
その最大の意味は、「自分が見えるようになる」ということです。
この「自分が見えるようになる」ということは、極めて重要です。
なぜなら、成長しないビジネスパーソンに共通の問題は、
「自分が見えていない」ことだからです。
言葉を換えれば、成長しないビジネスパーソンは、
「自分のエゴ」が納得し、満足するような視点でしか
世界を見ない傾向があるからです。
例えば、営業先で提案した企画が顧客から受け入れられないとき、
「顧客に理解力が無いから、この企画の優れた点が分からないのだ」
と解釈したり、
自分が主宰する会議で良い意見が出ないと、
「うちのメンバーは、アイデアの出ない発想の貧困な連中ばかりだ」
と嘆いたりします。
その結果、
「自分の説明の仕方が不親切だから、顧客が理解できなかったのではないか?」や
「自分の会議の進め方が高圧的なので、
メンバーがアイデアを言いにくくなっているのではないか?」
といった視点での反省ができなくなってしまうのです。
しかし、一日の仕事を終え、山積みの業務や突発的なトラブルで掻き乱された心も、
少し冷静さを取り戻した深夜、独り大学ノートを相手に行う「深夜の反省会」では、
不思議なほど「自分が見えるように」なります。
特に、営業におけるトラブルがあったり、社内会議で激しい議論になったときなどは、
誰といえども感情が揺れ動いており、
「直後の反省会」では、冷静な振り返りができません。
こうしたときは、「深夜の反省会」で「静かに自分を見つめる」ことが、
最善の方法でもあります。
そのことによって、自分の仕事のスタイルの問題に気がつき、
自分の心の姿勢の問題が見えてくるでしょう。
――:その場合、なぜ、「大学ノートに書く」ということが重要なのでしょうか?
田坂:もちろん、情報化された時代ですので、
大学ノートではなく、パソコンの文章として書いてもよいのですが、
「書く」ということが重要なのです。
不思議なことに、人間とは、自分の胸の内の心境を表現しようとして
「書く=文章に表現する」ということを行うと、
必ず、もう一人の自分が表れてきて、
その書かれた文章に対して「意見」を呟き始めるのです。
先ほどの例で言えば、
「顧客には、この企画を理解する能力が無い」と書いた瞬間に、
もう一人の自分が
「いや、自分の説明の仕方が不親切だったのではないか」と呟くのです。
そして、この状態こそが、
「自分との対話」という言葉の本当の意味なのです。
この「自分との対話」という技法は、
実は、プロフェッショナルとして成長していくために、極めて重要な技法です。
なぜなら、第1回において述べたように、
プロフェッショナルの「智恵」とは、
単にスキルやセンス、テクニックやノウハウといった
「技術」を身につけただけで掴めるものではなく、
マインドやハート、スピリットやパーソナリティと呼ばれる
「心得」を併せて身につけたとき掴めるものだからです。
この「心得」とは、
心構え、心の姿勢、心の置き所などとも呼ばれるものです。
そして、この「心得」を身につけていくためには、
この「自分との対話」の技法を修得することが不可欠なのです。
――:それが、独りで行う「深夜の反省会」が大切な理由ですね。
田坂:そうです。
この「深夜の反省会」による「自分との対話」の技法は、
「セルフ・セラピー」(自己心理療法)の技法や、
さらには「エゴ・マネジメント」の技法へと深まっていくのですが、
そのことを論じるのは、また、別の機会に譲りたいと思います。
さて、このように、「自分との対話」によって、
プロフェッショナルは成長していくことができますが、
やはり、優れた先達や師匠との出会いによって成長していくことも、事実です。
次回、第3回は、そのことを述べたいと思います。
テーマは、
「師匠」を見つけて私淑し、同じ部屋の空気を吸う
です。
また、2014年5月15日に上梓した新著、
『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』では、
今回お話した「反省の技法」を
「過去に起こった出来事の経緯を仔細に追体験し、そこから改善策を学ぶ力」
として位置付け、『反省力』という知性として語っています。
田坂 広志