日本経済新聞(2021年10月8日)の「経済教室」に「コロナ後の都市・住宅政策(下) 公的家賃補助の整備急げ」(平山洋介・神戸大学教授)が掲載された。
 

 つねづね考えていたことを平山氏がまとめてくれている。
公的家賃補助の整備急げ_20211008日本経済新聞

 氏の問題意識は、「パンデミック(世界的大流行)下の住まいの危機を突発の特異な現象とみなすのではなく、平常時の住宅政策のあり方の反映としてとらえる視点だ。政府は1990年代半ばから住宅関連の公的支援を大幅に削減し、住宅と住宅ローンの大半を市場に委ねた。パンデミックは居住不安の直接の原因だが、住宅領域のほぼ全部を市場化しようとする政策が住宅保障の基盤を弱め、危機の条件が用意された。」とまとめられている。
 以下に要旨をお分かりいただくのに氏の論考から引用する。

<住宅ローンの現状>
 「住宅ローン返済義務を持つ勤労者世帯について返済支払いなどの住居費の可処分所得比(平均値)をみると、89年の12.8%から09年には18.9%まで上がり、19年でも16.8%と依然として高い。」

<低所得者向け住宅政策が脆弱なこと>
 「多くの先進諸国の低所得者向け住宅政策は、公的賃貸住宅と公的家賃補助の供給を両輪とする。だが日本の住宅政策は特異で、公的賃貸住宅が極めて少なく、公的家賃補助の制度はいまだにない。」
 「公営住宅の建設はほぼ停止し、ストックでみても05年から減り始め、18年には全住宅の3.6%を占めるにすぎない。」

<民間家賃>
 「98年から18年にかけて家賃5万円未満の低家賃住宅が54.7%から44.0%に減った。民営借家では89年から19年にかけて、住居費の可処分所得比(勤労者世帯・平均値)が16.8%から20.0%に上がった。」

<住居確保給付金>
 「家賃支払いを支える住居確保給付金の利用が増えている。この制度は住宅政策ではなく労働政策の一環を構成するもので、離職者の求職を支援するのが目的だ。世界金融危機への対策として、求職者向け住宅手当が09年にもうけられた。これに続き、15年施行の生活困窮者自立支援法により、住居確保給付金が制度化した。」
 「パンデミックにより家賃支払いの困難者が増えたことから、同制度の対象に離職者だけではなく、離職には至らない減収者が含められた。換言すれば、同制度による家賃支援は雇用対策だけではなく、住宅対策の側面を与えられた。」
 「住居確保給付金の申請は19年度には4270件しかなかったが、パンデミックと対象要件緩和により急増し、20年4月から21年7月までの累計で約17万9千件に達した。」

 氏の主張に全面的に賛成する。

 さらに付け加えると、人生の過程に応じた良質の公営住宅の供給が必要だと考える。一人世帯向け、配偶者と住む人向け、家族で住む人向け、老後向け、など人生の過程に応じて住み替えが容易な公営住宅が必要だ。

 2021年10月18日日本経済新聞電子版に「上半期の新築マンション、発売戸数44.7%増 価格も上昇」と題する記事が掲載された。
 首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンションでは、「21年4~9月の平均価格は6702万円と10.1%上昇し、同期間の過去最高を更新した。平均価格が1億円を超える「億ション」物件の販売が好調だった東京23区は17%上昇の8686万円だった。価格が上がった中でも、消費者の購入割合を示す契約率は首都圏で70.6%と好調の目安である70%を上回った」とある。
 私が住んでいるのは東京の区部で、近隣に建売住宅が発売された。延べ床面積130平方メートルで約7,700万円である。どのような人が購入できるのだろうか?。

 良質な公営住宅を望む。