映画「ヒトラーの忘れもの」はデンマーク、ドイツ合作の2015年の映画、原題は LAND OF MINE だ。「地雷の土地」とも訳せるが、「私の土地」でもある。日本では「ヒトラーの忘れもの」(何とセンスのない邦題だろう!)として2016年12月に公開された。脚本/監督はマーチン・サントフリート(Martin Pieter Zandvliet)。
 デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で作品賞や監督賞を含む最多6部門を受賞し、さらに第28回東京国際映画祭で最優秀男優賞<ローラン・ ムラ/ルイス・ホフマン>を受賞、2017年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたそうだ。
 あらすじなどはこの映画の公式サイトを見ていただきたい。

 私が驚いたのは、デンマーク政府が人道に反する捕虜の強制労働、それも人命を軽視する地雷除去をさせたという現代の史実だ。



写真は骰子の眼サイトから引用。

 映画の最後では、
 戦後、2000名以上のドイツ軍捕虜は、デンマーク西岸の150万以上の地雷の除去を強いられた。
 半数以上が死亡し、あるいは、重傷を負った。
 彼らの多くは少年であった。
と流れる。

 公式サイト、駐日ドイツ大使館サイトを見ると、史実に基づいた映画だという。

 映画のなかで、デンマークの西岸にナチス・ドイツが220万個(ママ)の地雷を敷設したこと、そして、少年兵たちが除去を強いられるのは45,000個の地雷除去と語られる。少年兵たちに、デンマーク軍軍曹は1時間に6個を除去するよう指示し、それが終われば3カ月でドイツに帰ることができると説明する。
デンマーク全図
地図はGoogleMapから引用した。

 デンマークが国の責任の下に、捕虜に強制労働をさせ、食料を充分に与えなかった。デンマークも批准している「ハーグ陸戦条約」(1907年)(注1)に明確に違反している。これでは、日本がアジア太平洋戦争中に捕虜に対して行なった虐待や強制労働、戦後、ソビエト連邦による日本人の抑留と強制労働と同じではないか。

 デンマークは1940年4月にナチス・ドイツの侵攻を受け、ほとんど抵抗せずに占領された。1943年頃からはレジスタンスなどによる反ナチスの動きがあり、戦死者が相当出たとのことだ。また、他の占領地に比べユダヤ人虐殺の被害は少なかったといわれている。
 なぜ、2,000人もの捕虜を地雷除去の強制労働に駆り立てたのだろうか。

  注1: 「ハーグ陸戦条約」(正式名称:「陸戦の法規慣例に関する条約(明治45年1月13日条約第4号)」)の条約附属書の第2章俘虜(捕虜)には、捕虜は人道に従って取扱うこと(第4条)、捕虜を役務に使う場合はその国の軍人に適用するのと同じだけの給与を支払うこと(第6条)、捕虜の食料、寝具、被服はその国の軍隊と対等とすること(第7条)などが規定されている。
条約、条約附属書は『官報』(1912(明治45)年1月13日)の21ページ以降に全文が掲載されている。