NHKドキュメンタリー@nhk_docudocu【30日午前・再】「LAST DANCE バレリーナ #吉田都 引退までの闘いの日々」は、30日(土)午前10時から再放送予定です。感動のラストステージまでの300日間の闘いに密着。[BS1]番組レビューを募集中。吉田都さん… https://t.co/lvSXa45Zev
2019年11月29日 11:00
前編と後編、ずっと感動しっぱなしでした。
たまたま高2息子も見ていたけど、彼もじっと見てました。
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僕はバレエのことはわかりません。
吉田都さんのことは「プロフェショナルの流儀」などでしか知り得ませんでしたので、はっきり言って初見に近い人間です。
にも関わらず、誰がみても凄いと。そう感じさせる方でした。サッカー部高校生息子をも唸らせるのだから。
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番組のスタートは吉田都さんの病院に急ぐ姿から始まります。
「走っちゃいけないんですけど。。」と。
日本の普通の街並を私服を着て歩く彼女は、とても世界的なバレリーナには見えない。
どうみても我々の近くにいるような普通のおばさん(失礼)なのである。
医師の診断は疲労骨折。
とても踊れる状態にないと。
次の公演は無理ではないか。
そう宣告された吉田都さん。
「どうしましょう。。。」
あたふたしているのである。
吉田都さんのことを知らず、たまたま番組を見た人がいたら、誰だろう、この人って誰?と思うだろう。
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しかし、しばらく静養して練習再開。
公演は予定通り行うと。
「大丈夫でしょうかねーー。心配です」と。
練習場所に通う様子も、失礼ながら、どこにでもいるようなおばさんが、バレエ教室に向かうような庶民的な雰囲気なのである。
ただ練習場にいくと周囲の反応が、吉田都さんの大物ぶりを表す。
にも関わらず、吉田都さんご自身の周囲の人たちへの対応、反応はとても優しく穏やか。
そして可愛らしくチャーミング。
皆が彼女のことを応援したいと思ってしまうような素敵な女性なのである。
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しかし、公演直前まで、練習を中断するほどに激痛が走る足の状態。
しかも新しい演目にチャレンジしているのである。
ご本人も「怖いーーー。本番まで間に合うのかしらーーー」と言うのである。
そんななかで取材記者が質問する。
「医者に止められているのに何故、公演をするのですか?やめるという判断もあったかと思いますが」と。
それに対して、
吉田都さんは微笑みながら、
「んーーーー。そうですねーー。やっぱりーーーーー。チャレンジしたいんですよね。」と。
キッパリというより、穏やかに言うのである。
どこから生まれてくるのだろうか、この生命力というか、バイタリティーは。
超一流の人は努力も超一流いうことか。
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世界の舞台で活躍してきた吉田都さんだが、苦悩に満ちた日々であったということも番組では紹介されていた。劣等感も感じていたと。
しかし技術を極めることで、苦悩や劣等感を克服し、アジア人なのにロイヤルバレエ団の主役をはり続けていたのだから、凄い人なんだーと感じ入った。
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バレエのことが全く分からない僕でも、吉田都さんの凄みを感じさせるシーンがあった。
幼少時代の恩師の方と練習している場面。
パドプレというステップをしている吉田都さんの踊りに、その恩師の方が感嘆の言葉を述べられていた。
「絶望、悲しみ、相手への思い。
全てをこのステップの中で表現しているのです」
吉田都さんのテクニックが尋常ではないと恩師も驚嘆の声をあげていたのである。
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さて、芸術家は、表現衝動(Why)を動機に、表現したい世界観(What)を、卓越した技術で表現する(How)
鑑賞する我々は、できる限りの感受性を利かせ、芸術家の表現(How)を、理解し(鑑賞側のHow)、芸術家の表現したい世界観(What)に少しでも近づこうとする。
そしてたとえ勘違い、読解ミスでも、感動を覚えるのである。芸術家の崇高にして普遍的な世界観の一端に感じ入るのである。
そういう意味では、芸術家と鑑賞側は、それぞれのHowで繋がっていると言える。
逆の見方をすれば鑑賞側にHowが備わっていなければ(読解力、理解力がなければ)、芸術家の世界観には近づけない。
一方、読解力、理解力の幅と深さを高めれば、様々な芸術家の世界観(What)をより深く理解できる。
それが芸術鑑賞の喜びであろう。
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そういう意味で、僕にはバレエへの読解力は全くない。
しかし恩師の方が言語化してくれた言葉をガイドに、吉田都さんの崇高なる世界観に触れた気がした。
「絶望、悲しみ、相手への思い。
全てをこのステップの中で表現しているのです」
芸術の真髄に触れた気がした。
12月21日に再放送するそうです。
永久保存版だなー。