はじめまして。関西で社会保険労務士事務所を開業しております。
このブログでは、経営者の方や、人事労務実務家の方にとって役立つ情報を
ご提供していきたいと思います。
第1回は、昨年11月に行ったセミナーの資料の一部を開示いたします。
テーマはブログのタイトルにもありますが、
「マタハラ・パワハラ予防のための企業対応」です。
では、ご覧ください。
1.マタハラとは
妊娠・出産や育児休業を取得したことを理由として、不利益な取扱いをすること
2.マタハラ禁止の根拠
【男女雇用機会均等法第9条】
①事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
②事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
③事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求し、又は休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
【育児介護休業法第10条】
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3.マタハラ裁判
<広島中央健保生活共同組合事件>
使用者側の行った2つの措置
・措置1 妊娠中の軽易業務転換を機に管理職(副主任)解任
・措置2 育休からの復帰後、副主任への任命なし
→裁判ではともに違法とされた
○これを受け厚生労働省は通達を発令し、統一ルールとして運用をしていくこととなる。
○通達中、違法とならない2つの例外に注目
4.通達を踏まえた企業対応
→本人の同意をとる(ただし、同意があったかどうかのハードルは高い)。同意をもらう際の説明を丁寧に行う必要がある。
<最低限必要な説明事項>
・役職変更等、当該従業員に不利益が発生する措置を講ずることが企業として本当に不可欠なのか、説得力を持って説明できるのかをまず検証しておく必要がある。(先の裁判の事例では、副主任を外すことにつき、その必要性があったのかの説得力が弱い)
・そのうえで、たとえば妊娠等を理由に軽易業務に転換する際、役職から外す等不利益が発生する場合には、将来の育児休業復帰後の処遇(元の役職に戻れるのか戻れないのか等)についても説明したうえで同意を取得する必要がある。
・具体的な説明手法としては「将来元の役職に戻れない可能性もあります」と伝え、認識してもらうことが必要です。
・具体的な不利益の内容、逆に有利な影響の程度も、双方説明する必要があります。
5.パワハラについて
<三井住友海上火災保険上司事件>(上司のみが被告)
メールによる叱責内容が問題となった事例
(メールはそのニュアンスが介在しないだけに直接的な伝わり方をする危険性が内在している)
○事件概要
大きな赤い文字で「意欲がない、やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います。当SC(サービスセンター)にとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績を挙げていますよ。」とのメールを送信し、同時に同じ職場の従業員数十名に対しても送信したことの違法性が問題となりました。
○結果
叱責内容が業務に関連していることは1審、2審ともにみとめました(目的は是認できる)。しかし、メールの表現方法として、「一時的叱責の範囲で業務指導の範囲を逸脱していない」とした1審に対し、2審では「表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠く」とし、上司に5万円の賠償を認めました。
○裁判を踏まえた企業対応
裁判所により判断が分かれたケースで、明確な基準をたてにくいケースですが、少なくとも2審で問題視されたことは避けるべきです。
①退職勧告や会社にとって不要な人間であるなどと解釈されるおそれのある表現は避け、言葉を慎重に選ぶ必要があります。
②同時に同じ職場の従業員数十名に対して送信したことについても、言われる者の気持ちを考えて必要最小限の者にだけ送ることが必要です。
③赤い大きな文字といった、必要でもない過剰表現は避けるべきです。