こんにちは。自治体法務研修講師の奥田泰章です。今日も行政不服審査のお話が続きます。


本案審理が終了すると、審査庁が長以外の執行機関の場合は、審査庁が本案裁決書つまり棄却裁決書又は認容裁決書を書き始めます。と言っても、実際に書くのは審査庁の職員ですが。


これに対し、審査庁が長の場合は、審査庁の職員である審理員が本案審理を行うので、審理員が、審査請求を認容すべき又は棄却すべきという結論とその理由について審理員意見書を書いて審査庁に提出することとされています。


ただし、審査庁は審理員意見に拘束されません。長の部下の意見にすぎませんから。


だから、審理員意見書に「この審査請求は棄却すべき」と書いてあっても認容できるし、「この審査請求は認容して処分庁の行政処分を取り消すべき」と書いてあっても棄却できる。


もちろん、審理員意見を否定するには合理的理由が必要ですが。


さらに、審査庁が審査請求を棄却しようとするときは、棄却裁決書案を書いて第三者機関である行政不服審査会に諮問し、その答申を受けなければなりません。審査会には大抵法律家がいます。


ただし、審査庁は答申にも拘束されません。長の下部組織の意見にすぎませんから。


だから、答申書に「審理員意見は間違いだ。この審査請求は認容して原処分を取り消すべき」と書いてあっても棄却できる。でも、「この審査請求は棄却すべき」と書いてあれば、さすがに認容しようとはしないでしょうけど。


もちろん、答申を否定するには合理的理由が必要ですが。


審査庁が審査請求を認容して処分庁の行政処分を取り消そうとするときは、行政不服審査会への諮問は不要です。審査請求人の希望どおりになるのですから。


こうして、審査庁である長は、ようやく本案裁決書を書くことになります。と言っても、実際に書くのは審査庁の職員ですが。



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