こんにちは。自治体法務研修講師の奥田泰章です。今日も行政不服審査のお話が続きます。


自治体が交付する補助金は、稀に自治体の条例に基づくものもありますが、ほとんどが自治体の規則や要綱に基づくものです。つまり、補助金が交付される者の範囲や交付額、交付申請や交付決定などの手続が自治体の規則や要綱に定められています。


こうした自治体の規則又は要綱に基づく補助金について、交付申請をしたところ、交付できないという不交付決定を受けたとします。この場合、不交付決定の取消しを求めて審査請求で争うことはできるでしょうか。


審査請求の対象は、行政庁の違法又は不当な処分(公権力の行使に当たる行為を含みます)です。


ところが、自治体の規則や要綱に基づく補助金は、贈与契約の履行として交付されているというのが判例の考え方です。


この場合、補助金の交付申請が贈与契約の申込み、交付決定が贈与契約の承諾の意思表示に当たります。


ということは、自治体の規則や要綱に基づく補助金の交付決定は、行政庁の処分に当たらないということになります。


したがって、審査請求書を提出できないことはありませんが、提出しても却下裁決(門前払い)を受けることになるのです。


なお、国の補助金については、補助金適正化法に審査請求の特例が定められています。そのため、国の補助金交付(不交付)決定は行政処分であると解されていて、審査請求で争うことができます。



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