猛烈な暑さに我慢して我慢して我慢してきたけれど、いよいよ我慢にも嫌気がさして、強がっていたなんの意味のないプライドを捨て久しぶりにアイスを手に取った。無意識に手に取ったアイスは誰もが知っている定番中の定番なソーダ味のアイスだった。
コンビニを出てモワッとした空気が身体に触れると同時にすぐさま袋からアイス取り出し、枯渇した身体を救うべく、口いっぱいに放り込んだ。食べた瞬間に思い出した。冷たいものは頭がキンキンに痛くなることを。そう思った時にはもう時すでに遅かった。真夏の暑さに身体は溶け、ソーダ味のアイスは頭中を駆け巡った。体温が厚さと冷たさで中和されたのを感じると、ふと「ドーナツは丸い形をしているからカロリー0」という芸人さんのボケと重ねてしまっていた。そんなくだらないことを考えながらアイスを食べているとある事に気づいた。「当たり棒、、、」。無駄なプライドを捨てて久しぶりに買ったアイスが当たり棒なのを見て、つい鼻で笑ってしまった。
歩きながら食べていたアイスは200メートル歩いた辺りで底をついた。僕はそこで数秒間立ち止まり考えた。
この猛烈な暑さの中、今さっき歩いていたばかりの道を戻り、女の子のコンビニの店員さんに「さっきアイス買いに来てた人また来た。」と心の中で思われながら、当たり棒をその店員さんに恥じらいなんて何一つないかのように、まるで子供のように感情を作り、感情を押し込めながらもう1本頂きに行くか、アイスをこの木の棒と交換できるという欲望を抑え、偽りの自分を作らず、無駄な体力を使わずに平和的にそのまま帰るかの2択だった。その答えを出すのに時間はかからなかった。結果は3対7で後者の勝利。立派な大人とは言えないが、一応大人の類に所属している僕としては、子供のように目をキラキラさせながらアイスを交換して貰おうなんて、自分を客観的に見たら情けなく感じた。しかし、、、「大人になっても子供の頃の感性を大事にしてる」と豪語していた僕は、ただカッコつけたいだけなのかと自分の本心を自分で見透かしてしまう展開にまで発展してしまっていた。だが今はそんなこと暑さでどうでもいいと自分の都合の良い事にしか目を向けない最低な男へと変貌させていた。そして憑依したと言っても良い身体でさっき捨てたばかりのプライドを拾い上げ、立派な大人はそんなことせず、日々の日常に余裕をもって歩んでいると肯定し、その場から簡単に1歩前に足を踏み込み去っていった。

それから1週間経った今でも家の玄関の靴箱の上には無造作ながらも目の見える場所にアイスの当たり棒が置いてあるままだった。