母に、私の安い腕時計の電池を抜かれていた。
受験を次の日に控える妹のためだったとはいえ、私に一言も無く判断されたのは、自分を粗略に扱われたようで、とても嫌だった。
私は泣いた。
それまでにいろいろなことが重なっていたためもあるだろうけど、この年になってこんなにも、と思った。
そういえば小学生の頃は、泣くことを抑えられなくて、脳の命令のままに頬を濡らしていた。
そして、なぜ泣くの、と聞かれるのが苦手だった。
その問いに答えたとき、馬鹿げていると笑われるのが怖かった。
心配されて、その都度弁明することが面倒だった。
それに、自分を成長させたくなかった。
原因を理解することで、人は対処法を学んでしまう。
まだ幼かった自分は、学ぶことで自分が成長してしまうのを恐れた。
そして成長してしまえば、両親は、大人な私のことをかまわなくなるのだ。
そう思っていたので、自分の気持ちを出すことが不得意の、器用な高校生になってしまった。
こうやって文章にならできるのに......人前ではこんなことを話せない。
そう思うと、どうやら、私はまだまだ子どもらしい。