音楽と鑑賞と再生

音楽と鑑賞と再生

音楽にまつわる話

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引っ越しされたyositakaさんのブログ記事で、ふと気になる記述を見付け、引っ掛かって居る。
ブルーノ・ワルター/ザ・コンプリート・コロンビア・アルバム・コレクションに関しての記事だ。

今回のボックスでは、日本のソニー・ミュージックとの共同プロジェクトとして、このステレオ録音すべてをオリジナル・アナログ・マスターから新しくリミックスおよびリマスターし、これまでのLPやCDで親しんでいた腰高の響きではなく、ワルターが志向したヨーロッパ風の重心の低い、落ち着いた格調高いサウンドをおそらく初めてお聴きいただくことができるようになりました。

ちょっと聞捨てならぬ。待て待て、これまでのLPやCDは腰高なのか?
で、新しきCDは重心が低く格調が高いとな?
心拍数が上がった。
先ず、腰高とは如何なる事であろう。高域にピークがあると云う事なのか。
重心の低いとは如何なる事か。低域が強調された音なのか。
ワルターは重心の低いサウンドを志向して居たのか?
まあ、確かめたければ買え、と云う事なんであろうが、挑発的文言ではある。

そもそも、私が餓鬼の時分から慣れ親しで居るLPのワルター/コロンビアの音は、下品な程に低域がブリブリと鳴り、恰もコントラバスの直前で寝そべって居るかの如き風情である。
ベートーヴェンの第5なんぞは、このブリブリが効いて忘れ得ぬ印象を刻み付けられたものである。
ハイドンやモーツァルトも、このブリブリが他では味わえぬ格別な存在感を醸し出して居たのである。
時はCDの時代に移り、ワルター/コロンビアも結構な枚数買い替えねばならぬ羽目に陥ったが、此の時の失望は言葉にもならない。
高域がキンキンして、音は薄く、とても落ち着いて聴いては居られぬのだ。
であるから、私は忽ちCD否定論者になった。

しかし、何度も当ブログで述べて来たが、此れはCDの所為では無い。CD製作者のセンスの無さの所為である。
次にCD再生装置製作者のセンスの無さの所為である。
そして、当ブログ最後の訴えとなったが、
レコードにせよCDにせよ、音盤再生者の怠惰の所為である。


前記事の流れで、丁度手元にワルター/コロンビアのブラ4が有ったので、最後のブログ記事としてワルター/コロンビアのブラームス/交響曲第4番をネタとする事にした。
そして此れは敬愛するgustavさんが絶大なる郷愁を以って好まれて居る演奏である。
此の演奏は比較的穏やかに開始されるが、曲が進むに連れ、例のブリブリが顔を出し、其れに従ってワルターの指揮も力が込められて行く。
ワルターにはこう云う所がある。特にモーツァルトの後期交響曲では、此の些か剛毅な指揮振りが絶大な効果をもたらして居た。時に好みの曲の場合、突如剛毅な頑固爺に変身する。BPOとのK550では、此の頑固爺と、でら上手いオケが噛み合い、乾坤一擲の名演を成して居た訳だ。
しかし、個人的志向であるが、ブラ4の演奏としては、ちーとばかり力み過ぎて居るように思う。オケの音色の所為もあるが、若干疲れる。
2楽章は流石に上手い。聴かせ上手である。しみじみと情感豊かに心の込もった音楽が流れ、引き込まれる。
3楽章は独特のワルター節で、郷愁もあろうが、他の誰でも無い「ワルターを聴いた」と云う満足感に浸る。
4楽章はオケの力量不足を感ずる部分だ。例のブリブリは出て居るのだが、管の薄い音色が如何ともし難い。表情を付けて居るのは判るが音楽の流れが淀みがちで重い。フルートも一本調子で味わいに欠ける。全体的にブツ切り感が有り、興に乗らないのである。
此の盤を聴くなら2楽章がお薦めである。此れは文句無く上手い。

音盤はCBS SONY SX -74盤 のLPと、比較の為にSONY CLASSICALのCD(MASTER SOUND DSD)盤



先ずはLP。SX -74盤をDENON DL -103SAで再生した。
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ステレオ初期の再生には丸針が安定して居る。落ち着いた安定感の有る音質で、ティンパニの打撃は群を抜いて居る。弦は幾分丸みを帯び刺激は少ない。ブリブリ感も適度に丸められて居るので強調はされ無い。金管は距離感を持って遠くから聴こえる。
左右方向よりは奥行方向に深い。此れを聴く限り腰高には感じ無い。





続いてDECCA針、LONDONのマルーン
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以前、記事内で、CBS録音にはDECCA針がマッチする、と書いた。何故か理屈は判らぬが、パッと立体感が生じ、音場が広がり、楽器音が生々しく聴こえるのである。
であるから当然、今回の試みにもDECCA針を登場させる。
ダイレクト針なのでノイズは拾う。そして意外や、左右方向は103より狭く感ずる。バイオリンの音質も硬質だ。しかし、低弦は思いの外深く伸び、低域の分解能は高い。
金管の距離感も上手く出て艶が有る。木管は適度に丸く美しい響きだ。ティンパニは距離感が有るものの、強さは減じて居ない。
全体として、ワルターの荒々しさが感じられる再生音だ。曲に依っては効果的であろうが、ブラームスとしては些か筋肉質だ。




次は私が最も古くから愛用して居るgraceのF9。此れに木管の美しいルビーカンチレバーのUS14ルビーをセット。
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何だかんだと言ってもクラシックの再生には、響きの美しいF9が最も聴き易い。広帯域で刺激は少ないが、確りと芯が有る。
針を下ろすと、懐かしき音楽が流れ出した。滑らかな感触で刺激は少ないものの、ブラームスのしっとり感は上手く出て居るだろう。
左右奥行共に充分な広がりが有り、決して腰高でも無ければ格調も低く無い。私には此れが最も自然に感じる。




最後は1曲通しで、SONY盤CD
再生にはvictorのXL -Z900を使用
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Z900はCDプレーヤーとしては図体がデカく、然もトップローディングなので置き場所に難渋するが、再生音は超一級品である。最もレコードに近い自然な再生音が得られる。此の低域の再現性に惚れたのである。低域が強調されて居るのでは無い。ウンと深く沈み込んで居て深いのである。此の手の低域はEMTのスタジオ用プレーヤー以外では聴いた事が無い。
92年当時、殆ど全てのプレーヤーを試聴し此れに決定した。5年程前に再生不能になり、中古の同じ物を買い直したので此れが2台目。ほぼ此れで満足して居る。
何時ぞや、作者の藤原さんに、改良型のZ999の方が良いですよ、と勧められた事があったが、私はZ900のデザインが気に入って居るので、依然としてZ900を愛用して居る。

ワルターのブラ4。意外やレコードより低域が厚い。バイオリンも自然に聴こえ、CD初期の様な薄っぺらい耳に付く感じは無い。ティンパニの打ち込みは見事。金管の距離感はあるがやや大人し目。クライマックスのバイオリンはやや金属質に感じられるが、此れを以って腰高とは言うまい。レコードのような余韻の美しさは無いが、格調云々と敢えて音声高く言う程の事でも無かろう。




さて、新たなCDとは如何なる仕上げに成って居るのであろうか。
上記のDSD盤を凌駕して居るのであろうか。
yositakaさんの報告に期待したい所である。


愈々最後になって仕舞った。
書くべきネタは未だ未だ多いのだが、最早体力も時間も無い。
ここ迄である。
偏執的な当ブログに、此れ迄お付合い戴いた奇特な皆の衆には、厚く御礼をば申し上げます。

此れにて、おさらば。