僕がファルセットでしか唄えない大好きな曲を

君は鼻唄で寄り添う風に唄ってくれた。


あの唄は今になって遡ってみると

もう15年も前に発売されたアルバムの収録曲で

アルバムの最初から4曲目で流れるこの曲を、

よく君と唄った。


君と2時間かけて走ったドライブの道中で

休憩がてら君と歩いた海岸沿いの道の駅で

君と食べた熱々の肉まんだとか、

手を繋いで歩いた柔らかい砂浜や

生温かい潮の香りだとか、


繰り返し流れる曲が耳に抜ける度に

僕等を飾るショート動画のBGMの様に

しっくり嵌るんだ。


僕は目を閉じて

そんな鮮明の様な、

はたまた曖昧な様な、

色褪せない映画の様な2人を

羨みながら今、聴いているよ。


少し苦しげにこの曲を唄っていたあの人も

この曲を産んだ翌年、

流れ星みたいに突如として

遠い遠い星になってしまったけれど


僕もあの子もいつかは星となるんだろう。


僕は今でも夏になると

この曲を、

この唄を

唄いたくなるんだ。


何処かであの子も寄り添う様に

あの頃の様に唄っているんじゃないだろうか、と。


そんな甘い妄想を曲に乗せて。

夏の終わりが近づくと

聴きたくなるんだ。




【  完⠀】