私は今日、退院する。
家族のもとに帰る。
ゆうべは2時半に起きてしまったが、4時半まで二度寝ができた。
すっかり日の出が早くなった。
最後の体重測定は昨日と横ばいだった。
最後の朝はなんか少し名残惜しい。
朝からお掃除のおねえさんやナースエイドさん、担当だった研修医の先生、リハビリの先生など、会う人みんなにお世話になりました、とあいさつする。
午前は病棟をゆっくり歩いて、海の見えるベンチに腰掛けて、しばらく外を眺めていた。
この場所がすきだった。
部屋にいることに飽いてしまったとき、居たくなかったとき。
ここに来て、この場所で電話したり、ただ、ぼうっと景色を眺めたりしていた。
胸腹水で苦しくてゼイゼイいいながら、それでも誰かと話したくて泣きながら電話したり、入院仲間の患者さんとたわいない話をしたり、ときにはこっそり窓を開けて外の空気を吸ったりもした。
だけどここに来るのももう、最後。
最後の病院食は豚カツだった。
最後の上げ膳据え膳に感謝していただく。
いつも通り、美味しい病院食。
温かいし、冷たい。
毎日、美味しいご飯をありがとう。
管理栄養士さんが、病院食が私の長い入院生活の支えのひとつになるようにと、果物やヨーグルトを加えてくれたり、常温保存できる牛乳に変更してくれたり、さらにはおやつを追加してくれた。
病状が悪化していて食べられないときには面談に来てくれて、にゅうめんやおかゆに変更してくれたり、細かな量の調整をしてくれたりした。
私は、食事にどれだけ支えられたことか。
ほんとうに感謝の気持ちでいっぱい。
お昼後には荷物をまとめ、図書室に本を返却し、新たに5冊借りる。
図書室にもどれだけ救われただろう。
辛いとき、現実から目を逸らしたいとき、本の世界に没頭することで心を軽くすることができた。
図書室があって、ほんとうによかった。
図書室ボランティアさんにもたくさんの感謝を。
今日の担当看護師さんは特に親身になって話を聞いてくれていた方だったので、お手紙を書いて渡す。
あれだけ退院したがっていたのに、みんなと別れるのは寂しい。
ここまでたくさんお世話になって、こんなに元気にしてもらって。
みなさんにたくさんの感謝を。
また戻ってくることがないよう、元気に過ごさないと。
夫が予定より30分くらい早く着き、荷物をまとめて師長さんに挨拶して病棟を出た。
病棟のセキュリティカードを返却して、もうここのドアをくぐることはないと思ったら、やっぱり寂しい感じがした。