双3極管 12AU7 をパラ接続したパワーアンプ。
12AU7 は電圧増幅用の球であるが、プレート損失がユニットあたり 2.75W あり、パラ接続で 5.5W なのでパワー段に使用できる。
実は、手持ちの PT(パワートランス)が、TANGO のプリアンプ用の ST-30S で、260V 全波整流で 30mA の仕様。
AC 30mA を全波整流で DC 30mA 取れるとして、これをパワーアンプに使うには、片チャンネルに 15mA しか流せないので、使用出来る球が限られてくる。
この条件に合いそうなのが、12AU7 のパラである。
全段に何を使うか? 使用する PT のヒーター巻き線電流が 1A しか無く、12AU7 のIh(ヒーター電流)が 0.3A×2 で 0.6A。残るは 0.4A で、12AX7 を1本で左右を賄えば良いが、パワー段が3極管ではゲインが不足しそう。そこで、5極管を探すが、6AU6 などを2本使うと電流がオーバーしてしまう。
色々探して結局は Ih が 175mA の 6AK5 を2本を使う事にした(Ih=0.3A+0.3A+0.175A+0.175A=0.95A)
先ず、+B 電圧がどの程度となるか、早速シミュレーションしてみる。
ST-30S の rs(巻き線抵抗)は、296Ω と 308Ω。260V をダイオードで全波整流し、200Ω の抵抗と 150μF の電解コンデンサ2個で構成。
整流後の DC 電圧は 316.9V、リプル電圧は 51mVpp となった。
<図-1 電源>
次に、パワー段の検討。
例によってロードラインを引いてみる。
プレート電流値を2倍にした 12AU7 のプレート特性にロードラインを引く。
色々検討したが、負荷インピーダンスは 10kΩ 位が良さそう。
手元に小型の OPT(出力トランス)が有るが、1次インピーダンスは 5kΩ。
仕方なく、4Ω の端子に 8Ω 負荷として、1次を 10kΩ 相当として使用することにした。
(OPT仕様:1次側 5kΩ、インダクタンス:12.5H、 直流抵抗:476Ω、2次側 4Ω/8Ω、許容出力:3W、最大電流:35mA)
<図-2 ロードライン>
負荷インピーダンス 10kΩ、300V の印加で、1.3W ほどの出力が得られそう。
プレート電流は 15mA、グリッド電圧は -12.5V でカソード抵抗は 833Ω となり、手持ちの 330Ω と 470Ω の抵抗を直列にし、800Ω として使用する。
次に初段。
パワー段を含め回路シミュレーションし、回路定数を決めるが、肝心の 6AK5 のモデルが無い。
似たような特性の球を探せばよいが、面倒なので適当に 6AU6 のモデルを使う。
<図-3 初段~パワー段 シミュレーション>
(特に周波数特性は実際とかなり違います→パラメータが正確で無いため)
一応回路が決まりいよいよ作成。
シャーシは別のものに使用していたアルミのシャーシを流用。
部品が付いていた穴が開いているので、トランスで塞ぐようレイアウト。
結局、シャーシの長手方向に沿うように、6AK5→12AU7→OPT→PT の配置とした。
PTとOPTが隣り合わせになってしまい、結合によってハム音の発生が懸念されるが仕方ない。
なお、今回入力部の配線にシールド線を使用していない。
全段に接続するプリアンプなどの出力インピーダンスが低ければ、ノイズの混入やセパレーションの悪化を心配する必要は全くない。
<図-4 外観と内部配線>
動作と性能。
シンプルな回路なので、特に問題無く出来上がった。
出力は予想どおり1.5W(THD=10%)ほど。
周波数特性は小型の OPT 使用にも関わらず低域が 10Hz 以下まで伸びている。
高域は 30kHz~40kHz あたりに少し盛り上がりが有る。位相補正で綺麗になるが、そこはそのまま。
今回、ひずみと周波数特性はカーブで取得。
低域 100Hz の小パワー時のひずみが悪いが、理由は不明。
ハムの影響や OPT の問題か?。また、左右のひずみに差異があるが、12AU7 や 6AK5 を交換すると変わってくる。球のバラつきがかなり有るようだ。
<図-5 最終回路>
<図-6 特性>
<図-7 ひずみと周波数特性>
ひずみ特性は PC を使い、WaveGene と WaveSpectra のソフトを使用している。
今回、30mA の PT に対し、パワー段に 33mA くらい、初段に 3mA ほどと、若干仕様をオーバーしている。
この PT には、17V 1.2A の巻き線(プリアンプ用なのでヒーター DC 点火用の巻き線かも)があり、ここはパイロットランプ用に 30mA 程度使用しているだけで、容量的には余裕が有るので問題ないと思われる。
実機を数時間使用してみても発熱は殆どなかった。
-以上-










