本年の芥川賞受賞作「荒地の家族」著者 1982年生まれ佐藤厚志さん

 

2011年の災厄 阿武隈川沿い亘理(わたり)の物語 

災厄以後何が続いているか?

坂井祐治40歳は造園業一人親方 すべての仕事がなくなり がれきを集める仕事とかお金になることは何でもやった 復興が始まると新築庭の仕事がぽつぽつ 妻の春海がインフルエンザで亡くなる 幼なじみ河原木に紹介され再婚したが新妻は流産そして離別 12歳になった一人息子啓太を育てる

なにくれとなく啓太を思いやる近隣の人たち 暗闇でドブにはまった祐治の軽トラックを名前もいわず助けてくれた麦わら帽の男

 

何が変わったか?

巨大な阿武隈川防潮堤が海と陸をきっぱり分けた 電信柱がこの世とあの世の境目 ここに住宅や商店街があったんだ

海と対峙すると苦しい

死んだ者が手に手をとりあって自分を見ているようだ

何度も立ち止まって死んだ者を思う

 

幼なじみ明夫の最後の心づかいは届いた山形のさくらんぼだった そこのところへきてふいに涙が落ちた

生きていることは苦しい 災厄10年を経てなおそのつらさを書き続ける佐藤厚志さん 苦しくとも生き続けることについて、を改めて受けとる読書となった