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わたしが生きているご報告です。

私が初めてラーメン二郎の存在を知ったのは、夜中にやっていた何かのテレビ番組だ。
「ジロリアン」と呼ばれる猛者たちが店前で列をなし、インタビュアーがその猛者たちにマイクを向け、それぞれがジロリアンとしての心構えを語っていた。ような気がする。もうあまり覚えていないが、とにかくジロリアンという存在が私には衝撃的だった。
それ以降もよくテレビや雑誌でラーメン二郎を見かけた。人気店なのだと知った。友人とラーメンの話になると食べたこともないのに「ラーメン二郎はまじやばいから」と言うようになった。浅はかな知識ではあったがトッピング呪文、天地返し、そして二郎インスパイア系という言葉も覚えた。
ラーメンは好きだ。しかしながら私が生まれた地方はラーメンといえば中華そばだった。透き通った醤油スープ、細ちぢれめん、ねぎ、なると、シナチク、薄いチャーシュー、のり。食べ終えたあとの、スープの表面に浮いたうっすらとした油を箸で繋いで遊ぶのが楽しかった。味噌、塩、とんこつってやつは、私にとって「味」だった。味噌ラーメンではなく、ラーメンの味噌味。このニュアンスの違いをおわかりいただけるだろうか。とにかくそういうことだ。インスタントラーメンのカテゴリとしての馴染みしかなかった。
「背脂」というものを知ったのは地元を離れた20歳の頃だったし、中太麺の美味しさを知ったのも、スープの表面に浮かぶ脂を箸で繋がなくなったのもその頃だ。
もう何を伝えたいのかわからなくなってきたので話を元に戻すが、とにかく、私が持っていた二郎のイメージは
「チャラついたやつは帰れ」
「10分で完食して出てけ」
「素人は来るな」
ということである。食券機の前で10秒も迷おうものなら後ろの人に刺されると思っていた。勝手なイメージであるが故にものすごくハードルが高い。二郎の店の前を通る機会は何度もあったが、あの敷居の向こうは、別世界なのだと、店の前を素通りしていた。

唐突に、景気付けをしたい、と思う夜があった。楽しく酒を飲み、ためになる話をたくさん聞き、よしこれからがんばろう!と意気込んでいた帰り道。ふと、そう思った。「何がいいだろうか」。酒を飲むと炭水化物とか塩分がとりたくなる。だから〆のラーメンは最高なのだ。今、景気を付けるなら、ラーメンだ。胃袋がそう言っていた。
「二郎……二郎だ」
今しかないと思った。もうラーメン二郎だった、私の頭にはそれしかなかった。今食べなかったらきっともう一生二郎を食べることは無いだろうとさえ思った。冷静に考えれば全くそんなことはないが、その時の私は最高に酔っ払っていた。
私がお店にたどり着いたのは21時過ぎ頃だったろうか、テーブル席は満席でカウンターが数席空いていた。噂の行列はできていなかったが、店のおもてから食券機が見当たらなかった。まずい、入口を超えた先に食券機があるというのか。店外にあればまだ、メニューの全てを確認できただろうに。尻込みしそうな気持ちをぐっと堪え、私は勢いに任せその敷居を跨いだ。
いらっしゃい、と声がかかる。いらっしゃいませだったのかもしれないし、ようこそだったかもしれないが、緊張のあまり覚えていない。食券機に1000円冊を流し込み、「ラーメン」のボタンを押した。一番左上のラーメンメニューだったからだ。それさえ押せば間違いないと思っていた。しかしそこで思い出したのだ、トッピング呪文を用意してきていないことに。しまった、と思った。店員さんに食券を渡すのをためらった。しかし店員さんはすでにカウンターの向こう側で私の食券を待ち構えている。出さなければもたもたするなこのメスブタが!と怒号が飛んでくるに違いない。恐る恐る食券を渡すと、店員さんはこういうのだ。
「トッピングどうされますか?」
震えた。ここで呪文を唱えなければ、私の命はない。しかしそんな呪文私は最初から覚えていない。危機的状況に手足の先から冷えていくのを感じたが、私は勇気を出してこう答えた。
「初めて来たので、オススメでお願いします」
初めてだということを前面に押し出すことによって初心者だと露呈し手加減してもらおうという、どうにも臆病者としか思われない回答だったがしかし、あの時の私にはこの回答がベストだった。どうだ、と心の中でしたり顔をしてやったつもりだったが、
「いや、ニンニクのあるかないかくらいは」
選べ、と店員さんに言われてはっとした。そのくらいは自分の意思を通せと。失態だった。自分を持たないものに食べさせるラーメンは無いのだ。入れてください、と私は誤魔化し笑いをしながら答えた。
ラーメンを待っている間にテーブル席の学生らしき男性二人組が帰って行った。見事に店内は男性ばかりだった。てきぱきとした手つきでテーブルを片付け終えた店員さんと不意に目があう。
「テーブル席、空きましたけど、移動しますか?」
なんということだ、予想だにしていなかった。まさか、気遣いを受けるとは。私が座っていたカウンター席は出入り口のすぐそばで、春の夜にしては冷たい風が吹き込んでくるような席だった。そして両隣は一つ席をあけてだが男性客だった。私が女性の初心者であるからだろう、一般店でもなかなか見られない優しさを、店員さんは私に向けてくれたのだ。
「あ、大丈夫、結構です」
私はそんな優しさを無碍にした。素直に優しさを素直に受け止められない女だ。気遣いは無用、そう言う事で私は店と対等であろうとしたのだ。店員さんはひとつ微笑むと、作業に戻った。

それからそう時間もたたずに、ラーメンが私の目の前に置かれた。
「これが…あのラーメン二郎のラーメンか・・・」
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オススメで、なんて言ってしまったばかりに、これがどういう状態のラーメンなのか私には知るすべもなかった。しかしきっと通常の野菜の量、通常の麺の硬さ、通常のアブラ、そこにニンニクを入れて貰ったものなのだろう。もしかしたら野菜は少なくしてくれているのかもしれない。しかしながらなかなか良い眺めだった。唾液と胃液が止まらなくなるような良い香りがした。

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なんということだろう、写メが撮れたのだ。なんの障害も無く、すんなりと。ラーメンファンからしたら目の前のラーメンを冒涜するマナー違反なのだろうし、写メなんぞ撮っている暇があったらさっさと麺をすすれ!伸びる!そしてすぐに帰れ!そういって店の奥からラーメンどんぶりが飛んでくると思っていたのに、まったくそんなことはなかった。私が思い描いていたラーメン二郎とは、全くの別空間だったのだ。私は、意気揚々と右手に箸、左手に蓮華を構えた。
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~ここから感想パートの予定でしたが、おいしいおいしいって言いながら普通に完食してごちそうさまでしたと言って余裕の退店をキメたので、省略します~

なんかすごいハードル高いと思っていた行動をしてみたら、意外とそんなことはなかった、っていうお話しでそしてラーメン二郎おいしかったっていうお話しでした。

すっごいおいしかった!です!!!!!(小並感)
今度行くときは呪文覚えてから行きます。ても舞台終わってからかな!へへ!
テンションだけでここまで書いたのでどうぞ笑って下さい(笑)

東京都内のお気に入りのラーメン店がある方、是非教えて下さい
読んでくださってありがとうございました!



co.birth!
小林明日香